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第四部 7話 娘と孫

ー/ー



 夜も更けて、客もいなくなった頃。
 聞き慣れた声が酒場に響いた。

「あ、やっぱりここにいた!」
「あれ? アリスだー?」

 大きな声に振り返ると、アリスが立っていた。
 ナタリーが酔っ払った声で指をさす。

「今帰ったのか?」
「そうだよ。エリーナが色々やらかしたからね。
 魔術の分野は大忙しなのよ」

 俺の言葉にアリスが溜息を吐いた。
 なるほど。あれはやらかしたと言えるだろう。
 ……治癒魔法だけでも大事だ。

「? この二人は?」
 アリスがフレアとジークを示す。
 
 二人とも料理を頬張っていた。
 待てフレア、お前は働け? 客がいなくても仕事はあるだろう?

 酔っぱらっているナタリーに代わって、俺が状況を説明した。
 一通り聞き終えると、アリスが笑った。

「私はアリス・カナ・バケット。ナタリーの同居人だよ。
 今日は遅いからそのまま泊まっていいよ」

「……アリス・カナ・『バケット』?」
「!」

 アリスが名乗った瞬間。
 二人が居住まいを正した。

「……失礼ですが、英雄『ブラウン・バケット』の?」
「? うん、娘だよ」

 その返事にフレアは口元を綻ばせた。
 小さな声で「ああ、じいちゃんの言う通りだ」と呟いた。

「私はフレア。フレア・サリンジャーと言います」
「サリンジャーって……」

 フレアの言葉にアリスが目の色を変えた。
 俺ですら聞き覚えがある家名だった。

「はい。英雄『アラン・サリンジャー』の孫です」
「……そうか、連合の英雄。
 このタイミングで連合から来るなんて、何かあるとは思ったけど」

 ナタリーも酔いが醒めた様子で呟く。
 そうだ。エリーナ・コルトと一緒に聞いたのだ。

「古い縁を頼ってここまで来ました。
 王国の英雄『ブラウン・バケット』に会わせてください」
 そう言って、フレアとジークはアリスに頭を下げた。

 連合の英雄『剣聖』アラン・サリンジャー。
 客には見えないように隠された、腰の長剣が小さく輝いた気がした。



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 夜も更けて、客もいなくなった頃。
 聞き慣れた声が酒場に響いた。
「あ、やっぱりここにいた!」
「あれ? アリスだー?」
 大きな声に振り返ると、アリスが立っていた。
 ナタリーが酔っ払った声で指をさす。
「今帰ったのか?」
「そうだよ。エリーナが色々やらかしたからね。
 魔術の分野は大忙しなのよ」
 俺の言葉にアリスが溜息を吐いた。
 なるほど。あれはやらかしたと言えるだろう。
 ……治癒魔法だけでも大事だ。
「? この二人は?」
 アリスがフレアとジークを示す。
 二人とも料理を頬張っていた。
 待てフレア、お前は働け? 客がいなくても仕事はあるだろう?
 酔っぱらっているナタリーに代わって、俺が状況を説明した。
 一通り聞き終えると、アリスが笑った。
「私はアリス・カナ・バケット。ナタリーの同居人だよ。
 今日は遅いからそのまま泊まっていいよ」
「……アリス・カナ・『バケット』?」
「!」
 アリスが名乗った瞬間。
 二人が居住まいを正した。
「……失礼ですが、英雄『ブラウン・バケット』の?」
「? うん、娘だよ」
 その返事にフレアは口元を綻ばせた。
 小さな声で「ああ、じいちゃんの言う通りだ」と呟いた。
「私はフレア。フレア・サリンジャーと言います」
「サリンジャーって……」
 フレアの言葉にアリスが目の色を変えた。
 俺ですら聞き覚えがある家名だった。
「はい。英雄『アラン・サリンジャー』の孫です」
「……そうか、連合の英雄。
 このタイミングで連合から来るなんて、何かあるとは思ったけど」
 ナタリーも酔いが醒めた様子で呟く。
 そうだ。エリーナ・コルトと一緒に聞いたのだ。
「古い縁を頼ってここまで来ました。
 王国の英雄『ブラウン・バケット』に会わせてください」
 そう言って、フレアとジークはアリスに頭を下げた。
 連合の英雄『剣聖』アラン・サリンジャー。
 客には見えないように隠された、腰の長剣が小さく輝いた気がした。