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第四部 4話 苦労鳥

ー/ー



「? 来た道を戻るの? 迷子?」
「そんなわけあるか!
 見たことない場所に出たから引き返してるわけじゃねーよ」

 俺の隣に並んでフレアが訊く。
 食事が終わると、俺たちは三番街の方へと戻ろうとしていた。

「お前らの宿を確保するために戻るんだ」
「やったー! 持つべきものは金づるだね!」

 フレアは諸手を上げて喜んでいる。
 その姿は無邪気としか言いようがないのだが。

「その言い草は何とかならないのか……?
 いや、もういいや。でも別に宿を取ってやるつもりはないぞ」
「え、そうなの?」

 フレアが手を上げたままで固まった。
 喜んで良いのか迷っているというところだろう。

「知り合いが宿を取っていて、一緒に泊まれそうだから紹介するよ」
「ああ、なるほどね。屋根があるだけで十分だ」

 俺が付け加えると、フレアはうんうんと頷く。
 まあ、紹介はするが泊めてくれるかどうかは交渉次第だろう。



 二番街と三番街の間。
 比較的大きな宿の扉を俺はノックした。

「おーい、起きてるか?」
「……留守じゃないですか?」

 しばらく繰り返すが返事はない。
 ティアナは心配そうに言うが、この時間はどうせ寝ているだけだ。

「……ぴ」

 やがて、渋々といった様子の鳴き声がした。
 がちゃり、と鍵が開いた。入れということだろう。

 散らかった部屋ではナタリーが眠っていた。ここはナタリーとアリスの部屋だ。
 すぐに使い魔のピノが飛んで、俺の肩に止まる。

「ぴ、ぴ、ぴっ……ぴぃぃ……ぴぃぴぃ、ぴ?」
 続けて器用なジェスチャーと一緒に鳴いた。

 恨みがましくピノはナタリーを翼で何度も示す。
 嘴を尖らせて、いかにも不満げだった。

 続けて右翼で頭を押さえるような仕草をする。
 さらに左翼は腰に当てて、首を左右に振りながら俯いた。

 さらにやれやれというように肩を竦めて見せる。
 最後は「だろ?」と語り掛けるように俺を見た。

 どう見ても『ナタリーがぐうたらでどうしようもない』と言っていた。
 器用というか、職人芸に近いのかもしれない。

「私、初めて鳥の気持ちが分かったかも知れない」
「……随分としっかりした鳥ですね」

 フレアとジークが目を丸くした。無理もない。
 昼過ぎまで眠りこける主人の代わりに来客の対応までしているのだ。



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「? 来た道を戻るの? 迷子?」
「そんなわけあるか!
 見たことない場所に出たから引き返してるわけじゃねーよ」
 俺の隣に並んでフレアが訊く。
 食事が終わると、俺たちは三番街の方へと戻ろうとしていた。
「お前らの宿を確保するために戻るんだ」
「やったー! 持つべきものは金づるだね!」
 フレアは諸手を上げて喜んでいる。
 その姿は無邪気としか言いようがないのだが。
「その言い草は何とかならないのか……?
 いや、もういいや。でも別に宿を取ってやるつもりはないぞ」
「え、そうなの?」
 フレアが手を上げたままで固まった。
 喜んで良いのか迷っているというところだろう。
「知り合いが宿を取っていて、一緒に泊まれそうだから紹介するよ」
「ああ、なるほどね。屋根があるだけで十分だ」
 俺が付け加えると、フレアはうんうんと頷く。
 まあ、紹介はするが泊めてくれるかどうかは交渉次第だろう。
 二番街と三番街の間。
 比較的大きな宿の扉を俺はノックした。
「おーい、起きてるか?」
「……留守じゃないですか?」
 しばらく繰り返すが返事はない。
 ティアナは心配そうに言うが、この時間はどうせ寝ているだけだ。
「……ぴ」
 やがて、渋々といった様子の鳴き声がした。
 がちゃり、と鍵が開いた。入れということだろう。
 散らかった部屋ではナタリーが眠っていた。ここはナタリーとアリスの部屋だ。
 すぐに使い魔のピノが飛んで、俺の肩に止まる。
「ぴ、ぴ、ぴっ……ぴぃぃ……ぴぃぴぃ、ぴ?」
 続けて器用なジェスチャーと一緒に鳴いた。
 恨みがましくピノはナタリーを翼で何度も示す。
 嘴を尖らせて、いかにも不満げだった。
 続けて右翼で頭を押さえるような仕草をする。
 さらに左翼は腰に当てて、首を左右に振りながら俯いた。
 さらにやれやれというように肩を竦めて見せる。
 最後は「だろ?」と語り掛けるように俺を見た。
 どう見ても『ナタリーがぐうたらでどうしようもない』と言っていた。
 器用というか、職人芸に近いのかもしれない。
「私、初めて鳥の気持ちが分かったかも知れない」
「……随分としっかりした鳥ですね」
 フレアとジークが目を丸くした。無理もない。
 昼過ぎまで眠りこける主人の代わりに来客の対応までしているのだ。