人にぶつからないように気をつけながら足早に数メートル先に見えている橋に向かい、渡った後も止まらず一直線に加賀見がいたところを目指す。
あと数メートルというところで、変わらず樹の下にいる彼女の姿がはっきりと分かった。
どうにか間に合ったことにほっとして足を緩めた。
桜を見ている様子は昨日とは違ってどこか柔らかさがあった。違和感が薄れている。
あまり見ているのも罰が悪い。何を言うかは考えずに声をかけた。
「加賀見?」
「え?」驚いたその顔は昨日と全く同じだった。「何でここに?」
「えっと……俺はサッカーチームの花見に従兄と。前から誘われてて」 断れなかったということを話す。昨日の今日で従兄のことを言うのはどうかと一瞬思ったけど、そもそも加賀見から従兄の話を聞きたいと思ってここまで来たのだからそれでいいと開き直った。
そのはずが苦い顔をする彼女を見るうちに自信が無くなってきた。「加賀見は何でここに?」
「何となく」
やっぱり桜が嫌いなわけではなかったらしい。逆に好きと言っているようなものだったけど、そこまでは指摘できなかった。「そうか」とだけ返した。
とはいえ、話を終わらせるのは早い。
「せっかくだし座ってちょっと話さないか?」
空いているベンチを示すと加賀見は「良いけど」と渋々ながら乗ってきた。