花見会場に到着した俺と和己さんは「遅いぞ」と言われつつもレジャーシートの中央に通された。和己さんはそのまま中央に行き、俺もそれに続いた。
関係者の中では俺が最年少。大人の集まりという意味では落ち着いてはいるものの、アルコールが入っている分だけ陽気さが普段の二割増しほどになっている。
自分たちのグループだけではなく花見に訪れている全員が陽気に見える。この近くにいる人だけではなく通り全体の雰囲気が明るい。
それが今の自分にとっては眩しい。俺は皆と少しだけ話した後、レジャーシートの隅に移動した。
彼らは「あんまり元気ないな」と言いつつも、放っておいてくれて俺がその優しさに甘えた形だ。
サンドイッチを食べながら何となく川の向かい側を見ると、一人で桜の木を見ている人がいた。俺と同年齢ぐらいの女子で明度の低い雰囲気を醸し出している。
よく見ると私服の加賀見だった。他人の空似である可能性もあるけど、おそらく本人だ。
ここはクラスメイトたちが行こうとしていた場所とは違うものの、地域で一番と言われている花見スポットなのでクラスメイトを見かけてもおかしくはない。
彼女はもういない従兄のことを想っているのか、それとも他の何かを思っているのか、分からないけどとにかく寂しそうに見えた。 多分これは気のせいではない。
声をかけるにはハードルが高く、物理的な距離もあるので見なかったことにしたいけどそれはそれでまたモヤモヤとしてしまいそうだ。
全くリフレッシュにならないし、ここはもう思い切って加賀見と話をすることにした。
「ちょっと外します」
それぞれに話している皆に分かるように声をかけて靴を履く。
「どうした?」
「向こうに同級生を見かけたんで」
訊いてきた工藤さんにはっきりと答えた。
「おう、行ってこい」
「はい」
全員に見送られて何か恥ずかしいけど、それよりも加賀見が樹の下から離れてしまうことのほうが気がかりだった。