考えることを避けていたのにこれでは困る。俺は内心でため息をつき、晴れた空に目を向けた。
「やっぱり何か抱えてるだろ。良かったら言ってみろ」
普段はしないことをしていたせいか、和己さんが横から覗き込むように声をかけてきた。
「……こっちが悩むことじゃないんだろうけどさ、同級生のことでちょっと」
黙っていてもモヤモヤが続くだけだと思い、昨日のことを掻い摘んで話した。
「春の桜は良くも悪くも目立つよな」
「うん」
花の咲く短期間だけは存在感があり過ぎるというのが和己さんの感想だった。
「で、お前はやっぱり優しいんだな。意外な一面的な感じで」
「え? いや、強烈なこと言われたから気にしてるだけ」
「心配してないなら日が変わっても引きずるってことはないだろ」
「……どうだろう」
「まあどっちにしても、きょうはリフレッシュだ」
「そうだね」
俺が頷き返したところで和己さんのスマートフォンが鳴った。
チームメイトの工藤さんから、待ち合わせ場所に着いたという電話連絡だった。俺たち以外の参加者五人はもう揃っているらしい。通話を終えた和己さんは苦笑していた。
「ちょっとゆっくりし過ぎたみたいだ」
「そう? 時間通りだと思うけど」
腕時計を見ると集合時間の5分前だった。
「これ、試合だったらまずいやつ」
「だったらな。試合じゃないけど、みんな張り切ってるみたいだ」
和己さんは「ちょっと急ごうか」と足を速めた。
「待って」
「あーごめん。そっちは荷物があるんだったな」
声をかけるとすぐに止まった。
「それは大丈夫。でも普通に行かない?」
「何で?」
「ゆっくりしたいから」
行く気はあるものの、今だけは自分のペースを守りたかった。
我儘だけど憂鬱が残ったまま集団の中に入っていくことは難しい。
俺がそう話すと、和己さんは「分かった」と緩やかに答えた。
ごめん、良いよ、と言い合って話に区切りをつけた。しばらくは黙って歩く。
加賀見のことを考えるとまた変に気落ちしてしまうのでやめておきたいのだけど、気付けばそちらに気が向いてしまう。
こんな感じでいてはリフレッシュにならない。ため息をつきたくなってきたけど、後ろ向きになっても何も良いことがないことだけは明らかなので、出かけた空気を飲み込んでもう一度斜め上を見た。