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5.

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「あのさ、あの時休んでた理由って……「仲の良かった従兄が死んだから」 遠慮しつつ訊いた結果、加賀見が答えを被せる形になった。
「従兄?」「そう。三つ年上の」それなら桜を複雑な目で見ていてもおかしくはない。「それはその……」
 納得はしたけど、返す言葉が出てこなかった。中途半端にして帰るわけにもいかないし、どうしようかと思っていると加賀見がソメイヨシノのことを教えてくれたのは彼だと言った。続けて「頭良くて性格も良くて、そんな人が死にたくなる世界って酷いと思わない?」 と、俺を見ないままに訊いてきた。
 目の前にはないものを静かに責めるその問いは重過ぎるものだった。
 周りで他クラスの生徒たちが騒がしくしていたけど、俺と加賀見のいる窓際だけ切り取られたように音がなくてそれが怖い。俺は何も考えられないまま「分からない」と答え、逃げ半分に質問を返した。
「何でそれを俺に聞くの?」「話の流れで」「それにしては重いけど」 彼女の問いはただの同級生にするものではないと思った。
「似てるから。背格好が何となく。それと性格も少しだけ」「えっと……従兄と? 俺は頭も性格も良くないけど」 良いならモテているはずだ。「雰囲気的に」「雰囲気か」
 オウム返しな呟きが口から自然と出てきた。これは褒められているのだろうかと小さく悩み始めたその横で加賀見が「じゃあね」と言った。一人、階段へと向かう。
「あ、ああ」 俺は戸惑いしか返せなかった。彼女の背をただ見送る。帰りたいけど途中で追いつくのは気まずいので、しばらくは三階にいることにした。

 











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「あのさ、あの時休んでた理由って……「仲の良かった従兄が死んだから」 遠慮しつつ訊いた結果、加賀見が答えを被せる形になった。
「従兄?」「そう。三つ年上の」それなら桜を複雑な目で見ていてもおかしくはない。「それはその……」
 納得はしたけど、返す言葉が出てこなかった。中途半端にして帰るわけにもいかないし、どうしようかと思っていると加賀見がソメイヨシノのことを教えてくれたのは彼だと言った。続けて「頭良くて性格も良くて、そんな人が死にたくなる世界って酷いと思わない?」 と、俺を見ないままに訊いてきた。
 目の前にはないものを静かに責めるその問いは重過ぎるものだった。
 周りで他クラスの生徒たちが騒がしくしていたけど、俺と加賀見のいる窓際だけ切り取られたように音がなくてそれが怖い。俺は何も考えられないまま「分からない」と答え、逃げ半分に質問を返した。
「何でそれを俺に聞くの?」「話の流れで」「それにしては重いけど」 彼女の問いはただの同級生にするものではないと思った。
「似てるから。背格好が何となく。それと性格も少しだけ」「えっと……従兄と? 俺は頭も性格も良くないけど」 良いならモテているはずだ。「雰囲気的に」「雰囲気か」
 オウム返しな呟きが口から自然と出てきた。これは褒められているのだろうかと小さく悩み始めたその横で加賀見が「じゃあね」と言った。一人、階段へと向かう。
「あ、ああ」 俺は戸惑いしか返せなかった。彼女の背をただ見送る。帰りたいけど途中で追いつくのは気まずいので、しばらくは三階にいることにした。