加賀見が学校を一週間ほど欠席した理由が「恋人が死んでしまったショックから」だったという噂話。
『人の噂も七十五日』ということわざ通り、すっかり忘れていた。
その噂がどこまで本当なのかは置いておき、親しい人を亡くしたのなら性格が変わってもおかしくはない。 実際のところを本人に確認する勇気はないからこれも想像だけで終わり、などと考えていると彼女が「聞いてる?」と小さく苦情を投げかけてきた。
「聞いてる」「本当に? 別なこと考えてる顔だったけど」「……去年の噂のことをちょっと」 俺は鋭い一言に負けて正直に答えた。
加賀見が欠席している間に流れた噂だったとはいえ話題にされた本人が全く知らないということはないだろう。説明まではしないで言葉を待っていると、少し呆れたような反応が返ってきた。「ああ、私の欠席理由に尾ひれがついたやつね」
冷静でいてどこか小憎らしい一言だったけど嫌な感じはしなかった。肯定を返すと彼女は続けて質問をしてきた。「何でいまそれを?」「一年の頃と今で印象が違ってる理由を考えてたらそこに行き着いた」「まあ変わったのかもね」 彼女は半分他人事のように答えた。あっさりとした中に何か苦いものを感じる。 この話はもう終わりにしたほうが良いのかもしれないけど、疑問を持ったままでは帰宅する気になれない。加賀見もその場を動かなかったので話を続けた。