ソメイヨシノに限っての話ではあるけど、桜が接ぎ木で増える人工的なものだと考えるとエゴのある美しさに見えるという。
「そう考えてしまう自分も嫌だから」
だから好きではないという。
「桜が接ぎ木で、とかいま知ったよ」
答えに困った俺はわざとずれた一言を返した。「大体の人は知らないと思う」
「調べたのか?」
教えて貰ったの。別にそういう話は好きじゃないんだけど」
「本当に?」
この「好きじゃない」は桜そのもののことを言った時と違って嘘に聞こえた。
「ここで嘘言ってどうするの」
「……」
返す言葉が出て来ない。
もう話を終わりにするべきかと考え始めたところで後ろから賑やかな声が聞こえてきた。
花見に行こうと話していたクラスメイト達が俺と加賀見のすぐ横を通り過ぎていく。
その様子を加賀見は何故か羨望に近い目で見ていた。
「本当に行かなくて良かったのか?」
「……行きたいなら最初からそう言ってる」
訊くと、淡々とした一言が返ってきた。少しばかり冷たいそれが、強がりに聞こえた。
一年生の頃の加賀見はもっと素直な性格をしていたはずだ。
これには何か訳があるのかもしれない。人は時間と共に変わっていくものだけど、と考えるうちに二年の時に聞いたことを思い出した。