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風の王、月の雫(1)

ー/ー



 風はゆく。
 街から街へ。
 山から里へ。
 海から海へ。
 そして、草原を悠然とわたっていく。

 風は、語る。吟遊詩人の唇を借りて。
 「風の王」と呼ばれた草原の王者と、「月の雫」と呼ばれた儚き者の物語を。
 


 あれは、街道沿いの小さな町でのこと。
 ラトは、所在なさげに立ち尽くしている少年に目を留めた。
 背中まで伸ばした、金とも銀ともつかぬ髪の色。
 俯き加減ではあるが、それでもはっと目を引くほどの美しい顔。
 そして、上等な衣に身を包んだ華奢な身体。
 
 (この辺りでは珍しい風体だな――旅の者か)

 やがて、ラトはその少年に向けられた、良からぬ視線に気づく。
 薄ら笑いを浮かべながら顎をさすっているその男は、この辺りでは有名な人買いだった。
 (あの男)
 ラトは眉を顰めた。

 ――考えるよりも先に、足が動いていた。

 ラトは知り合いのふりをして、その少年に近づいた。
 ラトに気付いた人買いは、ちっ、と舌打ちを残して立ち去って行った。

 「どうした?迷ったのか?」
 穏やかに声を掛けると、少年はラトを見上げた。
 
 その美しい顔に配された、左右の瞳の色が違う。
 右目は泉の如き透明な青。左目は琥珀の如き褐色。
 (これは……)
 ラトは微かに目を細めた。
 
 「実は、外に出たの、初めてで。何処をどう行ったらいいのか……」
 少年は、素直に打ち明けてきた。
 「え?」
 「僕はずっと、母様と閉じ込められていたんだ。お前みたいな気味の悪い子は外に出せないって」
 少年は小さな声で言葉を繋ぐ。
 「それで、この前、母様が死んで……もう僕を庇ってくれる人がいなくなって……だから、僕は」
 「思い切って、飛び出してきたってわけか?」
 「……」
 少年は、ふと俯いた。
 「あなたは、どうして怖がらないの?みんな僕の目を邪眼だって言う。このおかしな髪の色も気味悪いって言う。それで、誰も口さえ利いてくれないのに」
 消え入りそうな小さな声だ。
 ラトは小さく息をつくと、再び穏やかに声を掛けた。
 「小僧。名は?」
 「――アラン」
 「あのな、アラン。まず、お前のその目が邪眼というのは、嘘だ。確かに左右の目の色が違うのは珍しいが、ただそれだけのことだ」
 「えっ……?」
 少年は驚きに目を見開いて、再びラトを見上げた。
 「それに、その髪の色も白い肌も、この街道を西にずっと行った先の国では、珍しくも何ともない。むしろ普通だ」
 「……」
 淡々と「事実」を語るラトの顔を、アランはただ眩しく見つめていた。

 「あのう、あなたは、どんな人なの?」
 おずおずと尋ねるアラン。
 「俺はラト。風に吹かれるまま気の向くまま旅をしている者だ」
 「ずっと、旅を?」
 「そうだ。これから草原を抜けて北へ行くつもりだ」
 ラトの言葉に、アランはごくりと唾を飲んだ。
 そして。
 「ラト。僕も連れて行って!」
 ありったけの勇気をもって、そう願った。

 ラトは驚いた。
 初対面の少年に、よもやそのようなことを願われるとは思っていなかったのだ。
 
 逡巡する彼に、一すじの風が語り掛ける。
 『偉大なる王の血を引く者よ。その者に慈悲を』

 風は神の使い。風の声は神の声。
 ラトは迷うことなく、その導きに身を委ねることにした。

 「構わないよ、アラン。共に行こう」
 ラトは大きな右手をアランに差し出し、アランはその手でラトの手を握った。

 
 ラトはかつてこの草原を支配していた一族の末裔だ。
 その一族は版図から消えて久しく、ラトはその血を受け継ぐ者として先祖伝来のしきたりに従って生きている。
 彼らの神を信じ、風を神の使いとし、禁忌を守り、折々の祈りを欠かさない。
 彼は、そんな日々を淡々と過ごしている。

 ラトはそれをアランに強いることはしなかったが、ただ一つだけ厳命したことがある。
 「自分の剣には決して触れてはいけない」と。
 ラトの剣は王族のみに許された聖なるもの。
 その禁を破れば、神が怒りを以って罰するとの伝承があるからだ。

 
 ラトは何も知らないアランに様々なことを教えた。
 生きていく上で必要なことは言うまでもなく。
 太陽や星の位置から方角を知る方法。
 この風が強く吹いたら嵐が来る。
 太陽に虹がかかったら雨が降る。
 草の匂いに水気が濃くなったら水場が近い。
 
 アランはその度に神秘的な瞳を輝かせた。
 ずっと閉じ込められていた彼にとって、ラトが語る言葉はまだ見ぬ世界への扉だった。
 初めは表情が乏しかった少年は、いつしかよく笑うようになっていた。

 
 当座の物資を仕入れに立ち寄った小さな市場。
 アランは彫金師が営む露店の前で立ち止まった。
 職人の手によって緻密に彫られる彫金の美しさに心を奪われたのだ。
 「なんだ、欲しいのか?」
 ラトの声に、アランは驚いた顔をする。
 物をねだるなど、したことがないのだ。
 そんなアランの頭に、ラトの大きな手が乗った。
 「遠慮しているのか?気に入ったのがあったら、買ってやるぞ」
 くしゃくしゃと頭を撫で回されて、アランは少し頬を赤らめた。
 
 ――欲しいものがあったら、言ってもいいんだ。

 悩んだ挙句、アランは銀細工のペンダントを選んだ。
 細工は細かいが、安物だ。
 ラトは口元を少し綻ばせると、黙って金を払い、商品を受け取った。
 「ほら」
 アランに手渡すと、その白い顔がぱあっ、と華やいだ。
 「ありがとう、ラト。大事にするね」
 アランは本当に嬉しそうだった。

 
 やがて時が過ぎ、アランがラトの手伝いをこなせるようになった頃。
 草原を渡る風は、突然荒れ狂う。

 二人はいつものように簡単な朝食を済ませた。
 アランはラトの食器を片付けようと、いつものように手を伸ばした。
 
 ほんの少しだけ、注意が足りなかったのか。
 その手が、思いがけず食器を行き過ぎた。
 
 そして、何か異質なものに触れた。
 固くて、冷たくて、重厚な手触り。

 ――剣の、柄頭だ。
 
 「……!」
 アランは息を呑んだ。
 恐る恐るラトの顔を見る。
 「お前……!」
 ラトは低い呻き声を発した。

 わざとではなかったにせよ。
 アランは「禁忌」に触れてしまったのだ。

 「ラ、ラト、ご、ごめんなさい」
 アランは色を失って謝罪した。
 ラトは小さく首を振ると、剣を片手に、ふい、と出て行った。

 
 ラトは、作法に従って清らかな泉の水で剣と我が身を清め、神に対してアランを取りなした。

 『神よ、偉大なる神よ。
 あの者は何も知らないのです。
 どうか、怒りをお鎮め下さい。
 あの者を罰することのなきよう、伏してお願い申し上げます。
 これより2回目の夜が明けるまでの間、私の言葉をあなたに預けましょう。
 神よ、神よ。我が言葉を以って贖いとさせて下さい』

 
 「ラト!」
 戻ってきたラトに、アランは蒼ざめた顔で取り縋った。
 「ラト、ごめんなさい、ごめんなさい。僕は触るつもりは……これからもっと気を付けるから、お願い、赦して」
 目に涙を浮かべて必死に謝罪するアラン。
 ラトは彼を一瞥しただけで、無言のままそっとその手を引き剥がした。
 「ラト……」
 茫然とその名を呼ぶアランに、ラトは背を向けた。

 ラトは、一言も言葉を発しなかった。
 ただ、気まずさだけが二人の間に重く横たわる。
 アランは謝罪の言葉さえ失って、ラトから距離を置いて小さくなっていた。
 ラトは無言のまま淡々と日課をこなし、やがて夜が更けた。

 翌日になっても、状況は変わらなかった。
 ラトは相変わらず口を利かず、アランは出された食事に手を付けられなかった。
 
 やがて、アランは確信する。
 ラトは、口を利く気になれないほど怒っているのだと。
 彼のたったひとつの言いつけさえ守れなかった自分を蔑み、失望しているのだと。

 翌朝。
 アランが目覚めると、ラトの姿はなかった。
 「……」
 アランは冷え切った焚火の跡をぼんやりと眺めていた。
 燃え尽きてぼろぼろになった墨屑は、まるで今の自分のように思えてきた。
 やがて、彼の右目の深き青から、涙が静かに零れ落ちた。
 
 ――僕は、ここにいてはいけない。

 アランは、そう思い込んでしまった。


 その頃。
 ラトは泉で身を清め、深い祈りを捧げていた。
 神に預けた言葉を返してもらう儀式だ。
 
 草原を渡る風は優しくラトの頬を撫でる。
 どうやら、神は機嫌を直してくれたようだ。

 「アラン。神が許してくれた。もう大丈夫だ」
 戻ったラトは、晴れ晴れとした顔で声を掛けた。

 「アラン――?」

 普段なら駆け寄ってくる少年の姿は、どこにもない。

 「アラン?アラン!」
 必死で周囲を探すラト。

 「アラン!どこだ!アラン!」
 ラトの声が、虚しく草原をこだまする。

 風は、沈黙した。
 神は、禁忌を犯した者を赦さなかったのか――。



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 風はゆく。
 街から街へ。
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 そして、草原を悠然とわたっていく。
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 あれは、街道沿いの小さな町でのこと。
 ラトは、所在なさげに立ち尽くしている少年に目を留めた。
 背中まで伸ばした、金とも銀ともつかぬ髪の色。
 俯き加減ではあるが、それでもはっと目を引くほどの美しい顔。
 そして、上等な衣に身を包んだ華奢な身体。
 (この辺りでは珍しい風体だな――旅の者か)
 やがて、ラトはその少年に向けられた、良からぬ視線に気づく。
 薄ら笑いを浮かべながら顎をさすっているその男は、この辺りでは有名な人買いだった。
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 ラトは眉を顰めた。
 ――考えるよりも先に、足が動いていた。
 ラトは知り合いのふりをして、その少年に近づいた。
 ラトに気付いた人買いは、ちっ、と舌打ちを残して立ち去って行った。
 「どうした?迷ったのか?」
 穏やかに声を掛けると、少年はラトを見上げた。
 その美しい顔に配された、左右の瞳の色が違う。
 右目は泉の如き透明な青。左目は琥珀の如き褐色。
 (これは……)
 ラトは微かに目を細めた。
 「実は、外に出たの、初めてで。何処をどう行ったらいいのか……」
 少年は、素直に打ち明けてきた。
 「え?」
 「僕はずっと、母様と閉じ込められていたんだ。お前みたいな気味の悪い子は外に出せないって」
 少年は小さな声で言葉を繋ぐ。
 「それで、この前、母様が死んで……もう僕を庇ってくれる人がいなくなって……だから、僕は」
 「思い切って、飛び出してきたってわけか?」
 「……」
 少年は、ふと俯いた。
 「あなたは、どうして怖がらないの?みんな僕の目を邪眼だって言う。このおかしな髪の色も気味悪いって言う。それで、誰も口さえ利いてくれないのに」
 消え入りそうな小さな声だ。
 ラトは小さく息をつくと、再び穏やかに声を掛けた。
 「小僧。名は?」
 「――アラン」
 「あのな、アラン。まず、お前のその目が邪眼というのは、嘘だ。確かに左右の目の色が違うのは珍しいが、ただそれだけのことだ」
 「えっ……?」
 少年は驚きに目を見開いて、再びラトを見上げた。
 「それに、その髪の色も白い肌も、この街道を西にずっと行った先の国では、珍しくも何ともない。むしろ普通だ」
 「……」
 淡々と「事実」を語るラトの顔を、アランはただ眩しく見つめていた。
 「あのう、あなたは、どんな人なの?」
 おずおずと尋ねるアラン。
 「俺はラト。風に吹かれるまま気の向くまま旅をしている者だ」
 「ずっと、旅を?」
 「そうだ。これから草原を抜けて北へ行くつもりだ」
 ラトの言葉に、アランはごくりと唾を飲んだ。
 そして。
 「ラト。僕も連れて行って!」
 ありったけの勇気をもって、そう願った。
 ラトは驚いた。
 初対面の少年に、よもやそのようなことを願われるとは思っていなかったのだ。
 逡巡する彼に、一すじの風が語り掛ける。
 『偉大なる王の血を引く者よ。その者に慈悲を』
 風は神の使い。風の声は神の声。
 ラトは迷うことなく、その導きに身を委ねることにした。
 「構わないよ、アラン。共に行こう」
 ラトは大きな右手をアランに差し出し、アランはその手でラトの手を握った。
 ラトはかつてこの草原を支配していた一族の末裔だ。
 その一族は版図から消えて久しく、ラトはその血を受け継ぐ者として先祖伝来のしきたりに従って生きている。
 彼らの神を信じ、風を神の使いとし、禁忌を守り、折々の祈りを欠かさない。
 彼は、そんな日々を淡々と過ごしている。
 ラトはそれをアランに強いることはしなかったが、ただ一つだけ厳命したことがある。
 「自分の剣には決して触れてはいけない」と。
 ラトの剣は王族のみに許された聖なるもの。
 その禁を破れば、神が怒りを以って罰するとの伝承があるからだ。
 ラトは何も知らないアランに様々なことを教えた。
 生きていく上で必要なことは言うまでもなく。
 太陽や星の位置から方角を知る方法。
 この風が強く吹いたら嵐が来る。
 太陽に虹がかかったら雨が降る。
 草の匂いに水気が濃くなったら水場が近い。
 アランはその度に神秘的な瞳を輝かせた。
 ずっと閉じ込められていた彼にとって、ラトが語る言葉はまだ見ぬ世界への扉だった。
 初めは表情が乏しかった少年は、いつしかよく笑うようになっていた。
 当座の物資を仕入れに立ち寄った小さな市場。
 アランは彫金師が営む露店の前で立ち止まった。
 職人の手によって緻密に彫られる彫金の美しさに心を奪われたのだ。
 「なんだ、欲しいのか?」
 ラトの声に、アランは驚いた顔をする。
 物をねだるなど、したことがないのだ。
 そんなアランの頭に、ラトの大きな手が乗った。
 「遠慮しているのか?気に入ったのがあったら、買ってやるぞ」
 くしゃくしゃと頭を撫で回されて、アランは少し頬を赤らめた。
 ――欲しいものがあったら、言ってもいいんだ。
 悩んだ挙句、アランは銀細工のペンダントを選んだ。
 細工は細かいが、安物だ。
 ラトは口元を少し綻ばせると、黙って金を払い、商品を受け取った。
 「ほら」
 アランに手渡すと、その白い顔がぱあっ、と華やいだ。
 「ありがとう、ラト。大事にするね」
 アランは本当に嬉しそうだった。
 やがて時が過ぎ、アランがラトの手伝いをこなせるようになった頃。
 草原を渡る風は、突然荒れ狂う。
 二人はいつものように簡単な朝食を済ませた。
 アランはラトの食器を片付けようと、いつものように手を伸ばした。
 ほんの少しだけ、注意が足りなかったのか。
 その手が、思いがけず食器を行き過ぎた。
 そして、何か異質なものに触れた。
 固くて、冷たくて、重厚な手触り。
 ――剣の、柄頭だ。
 「……!」
 アランは息を呑んだ。
 恐る恐るラトの顔を見る。
 「お前……!」
 ラトは低い呻き声を発した。
 わざとではなかったにせよ。
 アランは「禁忌」に触れてしまったのだ。
 「ラ、ラト、ご、ごめんなさい」
 アランは色を失って謝罪した。
 ラトは小さく首を振ると、剣を片手に、ふい、と出て行った。
 ラトは、作法に従って清らかな泉の水で剣と我が身を清め、神に対してアランを取りなした。
 『神よ、偉大なる神よ。
 あの者は何も知らないのです。
 どうか、怒りをお鎮め下さい。
 あの者を罰することのなきよう、伏してお願い申し上げます。
 これより2回目の夜が明けるまでの間、私の言葉をあなたに預けましょう。
 神よ、神よ。我が言葉を以って贖いとさせて下さい』
 「ラト!」
 戻ってきたラトに、アランは蒼ざめた顔で取り縋った。
 「ラト、ごめんなさい、ごめんなさい。僕は触るつもりは……これからもっと気を付けるから、お願い、赦して」
 目に涙を浮かべて必死に謝罪するアラン。
 ラトは彼を一瞥しただけで、無言のままそっとその手を引き剥がした。
 「ラト……」
 茫然とその名を呼ぶアランに、ラトは背を向けた。
 ラトは、一言も言葉を発しなかった。
 ただ、気まずさだけが二人の間に重く横たわる。
 アランは謝罪の言葉さえ失って、ラトから距離を置いて小さくなっていた。
 ラトは無言のまま淡々と日課をこなし、やがて夜が更けた。
 翌日になっても、状況は変わらなかった。
 ラトは相変わらず口を利かず、アランは出された食事に手を付けられなかった。
 やがて、アランは確信する。
 ラトは、口を利く気になれないほど怒っているのだと。
 彼のたったひとつの言いつけさえ守れなかった自分を蔑み、失望しているのだと。
 翌朝。
 アランが目覚めると、ラトの姿はなかった。
 「……」
 アランは冷え切った焚火の跡をぼんやりと眺めていた。
 燃え尽きてぼろぼろになった墨屑は、まるで今の自分のように思えてきた。
 やがて、彼の右目の深き青から、涙が静かに零れ落ちた。
 ――僕は、ここにいてはいけない。
 アランは、そう思い込んでしまった。
 その頃。
 ラトは泉で身を清め、深い祈りを捧げていた。
 神に預けた言葉を返してもらう儀式だ。
 草原を渡る風は優しくラトの頬を撫でる。
 どうやら、神は機嫌を直してくれたようだ。
 「アラン。神が許してくれた。もう大丈夫だ」
 戻ったラトは、晴れ晴れとした顔で声を掛けた。
 「アラン――?」
 普段なら駆け寄ってくる少年の姿は、どこにもない。
 「アラン?アラン!」
 必死で周囲を探すラト。
 「アラン!どこだ!アラン!」
 ラトの声が、虚しく草原をこだまする。
 風は、沈黙した。
 神は、禁忌を犯した者を赦さなかったのか――。