俺は達也。
小学生。
絵を描くのが好きで、
アニメのキャラクターを描いたり、テレビのアイドルの似顔絵を描いたり
いろいろな絵を描いてる。
学校では、ちょっとした人気者だ。
友達のリクエストに応えて絵を描いたりもしてる。
お金は貰わないよ?
その代わりに、給食の牛乳を貰ったり、その子の嫌いなおかずを食べてあげたりしてる。
外の風景を描くのも好きだ。
朝の静かな風景とか、夕方の寂しい景色とか、そういう何でもない自然の風景が好きだ。図書館で絵の本を見るのも好きだ。昔の人の絵とか、外国の人の絵は、見ていて面白い。参考にもなる。
春休み。
僕は、春休みの間、おじいちゃんの家に行く。
おじいちゃんの住んでいる町は、随分田舎だ。
電車の線路は一本しかないし、コンビニも一つしかない。
でも、景色が綺麗で、絵を描くにはいいところだと思う。町のはずれには、古い神社があった。
そこには大きな桜の木が立っていて、おじいちゃんが言うには「神様の木」らしい。
僕は、その桜の木を絵に描くことにした。僕は春休みの間、毎日、神社に通って、桜の木を描いていた。
そんなある日。ビューっと風が吹いた。
ウワッ。
描いている紙が飛ばされそうになったから、必死に抑えた。
顔を上げると。
そこに、きれいなお姉さんがいた。
とても綺麗で、どこか寂しそう。
「お姉さん、どこから来たの?」
僕は、不思議に思って聞いた。
「達也くん、いつも桜の木を書いてるのね。」
お姉さんは、なんで僕のことを知ってるんだろう?
「お姉さんは、どうして、僕の名前を知ってるの?」
「私は、桜の精だからよ。」
お姉さんは桜の妖精だという。僕は信じられなかった。
「達也くん、お姉さんの絵を描いてくれる?」
「いいよ。絵の練習になるし。」
僕は、不思議に思いながらも、お姉さんのお願いを聞いてあげることにした。
それから、僕は毎日神社に通って、お姉さんと桜の木の絵を描いた。
お姉さんと一緒に弁当を食べたり、話をしたり、楽しい時間を過ごした。
でも時々、お姉さんは寂しい顔をする。
お姉さんには、昔、好きな人がいて、その人と離れ離れになってしまったそうだ。
僕は、お姉さんの為に、今書いている絵をプレゼントしようと思った。春休みも終わりに近づいたある日。
「やっと完成だー!」
「完成したのね。よかった。」
僕は完成した絵に「TATSUYA」と英語で名前をサインして、お姉さんに渡した。
お姉さんはとっても、喜んでくれた。
「達也くん、ありがとう。お姉さん、とっても嬉しい。」
すると、お姉さんが、桜の木に吸い込まれていく。
「達也くん、とっても楽しかったけど、もうお別れなの。ありがとう。」
そんな、急にお別れなんて、、、僕は叫んだ。
「お姉さん、名前は?」
「さくら!」
お姉さんは僕が描いた絵と一緒に、桜の木の中に消えてしまった。
とても不思議な体験だったけど、僕はおじいさんにも誰にも話さなかった。
これは、僕とお姉さんだけの秘密だ、
そのあとも、神社に行く機会はあったけど、お姉さんに会うことは無かった。
・・・・・・・・・・・
「っていう、不思議な話が子供のころにあったんだよ。」
俺は、少し感傷的になっていた。
「信じられないなー。」
健太は信じてくれない。
「でも、ロマンティストな達也くんらしいね。」
結衣ちゃんは、俺を信じてくれたようだ。
「俺にもそういう部分があるってことだよ。」あの、お姉ちゃんは、今頃、どうしてるだろう?
かけがえのない友達と話しながら、俺は遠くの桜の木に思いを馳せていた。