第三部 73話 回収
ー/ー 組合長に連れてこられたのは前と同じテントだった。
中に入るとやはり顔ぶれも同じ。三組織のトップが二人ずつ。
俺たちが中に入ると、組合長が自分の席に着いた。
そのまま口を開いた。俺たちの所属は組合だしな。
「さて……どうして呼ばれたか分かるか?」
「…………分かりません」
ナタリーが目を泳がしながらも堂々と言い切った。逆にすごいな。
その様子に付き合いの長いブラウン団長とセシリーが軽く笑っていた。
ニナさんは堪えているが、口元が少し歪んでいた。
「……そうかよ」
組合長がこめかみに青筋を浮かべていた。
往生際が悪い、と聞こえてきそうだった。
「まあまあ、組合長。一度、質問を変えてみましょう」
「?」
組合長の隣に座ったラルフが口を挟んだ。
ナタリーが首を傾げるが、何か返す前にラルフは続ける。
「ナタリー、これから俺たちは帝国の司令部へと襲撃しようと思っている。
君の案を採用するつもりだ。詳しい内容を詰めていきたい。
発案者として何かないかな?」
「……まず、前提として『エリーナ・コルト』はそこにいます」
ラルフの言葉を受けて、ナタリーがぽつりぽつりと考えを伝えていく。
「あれだけ頭にこだわったあの人が自軍の弱点に気付かないわけがない。
弱点を補うためには本人が守るしかないでしょう……たとえ不本意だとしても」
エリーナと戦うことになるとナタリーは前置きをして、さらに続ける。
「だけどエリーナを倒す必要はない。目的は帝国軍を撤退させることだから。
その考えだと、極論を言えば補給を断つだけでも勝てるかもしれない。補給がなければ帝国軍は撤退するでしょう」
「しかし、逃がすべきではない。もしも逃がせば城塞都市を本格的に奪われる。
あたしの考える最善手は帝国の上層部全員の身柄を確保すること」
「そのまま捕虜の身柄を条件に有利な条約を結ばせる。
そうすれば城塞都市も取り戻せるはず」
「容赦する必要はありません。
一方的な侵略を仕掛けた挙句、全員捕まる方が悪いのだから」
最後に悪いのは相手だと言い切って、ナタリーは口を閉ざした。
帝国軍を撤退させた場合を考慮していたのは、きっとこの場に一人しかいなかった。
きっぱりと断言したその姿に誰も口を出せずにいた。
ただ一人。ラルフはその言葉に満足した様子で微笑み、訊ねた。
「では、適任者は誰かな?」
「っ!」
ナタリーは痛いところを突かれたとばかりに言葉を詰まらせた。
さらに嫌そうに顔を歪めて「うーん」と唸り、腕を組んで悩みに悩み、答えた。
「……あ、あたしたちを軸に主力を強化するべきです。
情報収集が可能で攻守のバランスが取れている」
「そうだね」
「加えて『S級冒険者』は主力だから正面から外せない。
対してあたしたちは本来『B級冒険者』にすぎないから抜けても痛手にはなりにくい」
「ああ、確かに」
「さらにエリーナと戦った実績がある。
その分、エリーナにも手の内が知られているけれど戦力を強化すれば裏をかくこともできる。
……はぁ、もう良いですよ。ラルフさん」
「そうかな?」
相槌を打っていたラルフが悪戯っぽく微笑んだ。
ナタリーが「ああ……」と天を仰いだ。
「あはは……他にいないや」
そう言って、しっかりとフラグを回収したのだった。
それはきっと、最善手を見つけることが出来る能力と真っ直ぐすぎる性格のためだった。
中に入るとやはり顔ぶれも同じ。三組織のトップが二人ずつ。
俺たちが中に入ると、組合長が自分の席に着いた。
そのまま口を開いた。俺たちの所属は組合だしな。
「さて……どうして呼ばれたか分かるか?」
「…………分かりません」
ナタリーが目を泳がしながらも堂々と言い切った。逆にすごいな。
その様子に付き合いの長いブラウン団長とセシリーが軽く笑っていた。
ニナさんは堪えているが、口元が少し歪んでいた。
「……そうかよ」
組合長がこめかみに青筋を浮かべていた。
往生際が悪い、と聞こえてきそうだった。
「まあまあ、組合長。一度、質問を変えてみましょう」
「?」
組合長の隣に座ったラルフが口を挟んだ。
ナタリーが首を傾げるが、何か返す前にラルフは続ける。
「ナタリー、これから俺たちは帝国の司令部へと襲撃しようと思っている。
君の案を採用するつもりだ。詳しい内容を詰めていきたい。
発案者として何かないかな?」
「……まず、前提として『エリーナ・コルト』はそこにいます」
ラルフの言葉を受けて、ナタリーがぽつりぽつりと考えを伝えていく。
「あれだけ頭にこだわったあの人が自軍の弱点に気付かないわけがない。
弱点を補うためには本人が守るしかないでしょう……たとえ不本意だとしても」
エリーナと戦うことになるとナタリーは前置きをして、さらに続ける。
「だけどエリーナを倒す必要はない。目的は帝国軍を撤退させることだから。
その考えだと、極論を言えば補給を断つだけでも勝てるかもしれない。補給がなければ帝国軍は撤退するでしょう」
「しかし、逃がすべきではない。もしも逃がせば城塞都市を本格的に奪われる。
あたしの考える最善手は帝国の上層部全員の身柄を確保すること」
「そのまま捕虜の身柄を条件に有利な条約を結ばせる。
そうすれば城塞都市も取り戻せるはず」
「容赦する必要はありません。
一方的な侵略を仕掛けた挙句、全員捕まる方が悪いのだから」
最後に悪いのは相手だと言い切って、ナタリーは口を閉ざした。
帝国軍を撤退させた場合を考慮していたのは、きっとこの場に一人しかいなかった。
きっぱりと断言したその姿に誰も口を出せずにいた。
ただ一人。ラルフはその言葉に満足した様子で微笑み、訊ねた。
「では、適任者は誰かな?」
「っ!」
ナタリーは痛いところを突かれたとばかりに言葉を詰まらせた。
さらに嫌そうに顔を歪めて「うーん」と唸り、腕を組んで悩みに悩み、答えた。
「……あ、あたしたちを軸に主力を強化するべきです。
情報収集が可能で攻守のバランスが取れている」
「そうだね」
「加えて『S級冒険者』は主力だから正面から外せない。
対してあたしたちは本来『B級冒険者』にすぎないから抜けても痛手にはなりにくい」
「ああ、確かに」
「さらにエリーナと戦った実績がある。
その分、エリーナにも手の内が知られているけれど戦力を強化すれば裏をかくこともできる。
……はぁ、もう良いですよ。ラルフさん」
「そうかな?」
相槌を打っていたラルフが悪戯っぽく微笑んだ。
ナタリーが「ああ……」と天を仰いだ。
「あはは……他にいないや」
そう言って、しっかりとフラグを回収したのだった。
それはきっと、最善手を見つけることが出来る能力と真っ直ぐすぎる性格のためだった。
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