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第三部 56話 状況確認

ー/ー



 その日の夜。
 俺たちはテントの一つで車座になっていた。

 ソフィアの機転で俺たちは何とか着地に成功できた。
 全くの無傷とはいかないが、軽い打撲や捻挫で済んだ。

「いやー、治癒術を持った組合員がいて助かったっす」
「……いなかったら詰みだったな」

 ミアのほっとしたような声に答えた。
 怪我を引きずったまま、次の戦いに挑んでも仕方ない。

「さて、と。次の話をしないと」

 ミアが仕切り直すように言った。
 全員が苦笑するような雰囲気を見せる。

 そう。次だ。
 城塞都市にいた王国軍と合流はできた。
 だが、それで終わりというわけではないのだ。

 騎士団を主体とした本隊と合流するまで安心はできない。
 王都からこちらへと向かっている『一番隊』のところまで逃げる必要がある。

「まぁ『エリーナ・コルト』の追撃があるでしょうね」
「だろうね。単独なら機動力も十分にあるし」

 ミアの予想にナタリーが応じた。
 どちらも大半は歩兵だ。帝国軍が追いつくのは時間がかかるはずだった。

「……ミアとキースと私の三人がかりでも勝てる気がしなかったわ」
「不意打ち以外は当たりもしなかったな」

 ソフィアの言う通りだった。
 正直、勝てる気がしない。

「そんなに強かったの?」
「まあ、強いのは知ってるけど。具体的なところは気になるかも」
 ナタリーアリスが首を傾げて見せる。

「炎で家を焼き切るんだ」
「剣が勝手に戦うのよ」
「キースを投げつけたのに避けるっす」
 俺とソフィアとミアが口々にその恐ろしさをまくしたてる。

「ごめん、全然わかんない」
「キースを投げるってなに?」
 ナタリーアリスがさらに首を傾げて見せた。



「予定通り、目標は王都との中間地点にある関所っす」
「あそこを越えれば一安心だからね」

 指揮官にあたるミアとナタリーが言った。
 城塞都市へと向かう途中で見かけた関所である。

 あの関所の守りが固いのではなく、帝国が本気で山越えしてくるとは考えていなかったのだ。
 他に要害となる地点はない。逆に言えば、迎え撃つ場所が決まっているということだ。

 初めて現れた関所へと逃げ込む俺たちを追って、無策に飛び込むほど帝国軍はバカじゃないだろう。

「問題は……」
「どこで『エリーナ・コルト』が仕掛けてくるか、だね」

 ミアがナタリーに頷く。
 元々、三回は時間を稼ぐ必要があった。
 その予想通りなら、あと二回は戦闘があるだろう。

「あたしの予想は――ここ」

 ナタリーが広げた地図の一点を指さした。そこには小さな森があった。
 決して深い森ではないが、最短距離を行くためには抜ける必要があった。
 迂回した場合、帝国軍に先回りされる恐れがある。

「最初に『エリーナ・コルト』は司令部を狙った。
 今度は奇襲でこの中の誰かを狙う」

 そう言ってナタリーは俺たちを見回した。
 こういう時のナタリーの予想は怖いくらいによく当たる。

 明日は移動に当てて――明後日には森に入る予定だった。



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 その日の夜。
 俺たちはテントの一つで車座になっていた。
 ソフィアの機転で俺たちは何とか着地に成功できた。
 全くの無傷とはいかないが、軽い打撲や捻挫で済んだ。
「いやー、治癒術を持った組合員がいて助かったっす」
「……いなかったら詰みだったな」
 ミアのほっとしたような声に答えた。
 怪我を引きずったまま、次の戦いに挑んでも仕方ない。
「さて、と。次の話をしないと」
 ミアが仕切り直すように言った。
 全員が苦笑するような雰囲気を見せる。
 そう。次だ。
 城塞都市にいた王国軍と合流はできた。
 だが、それで終わりというわけではないのだ。
 騎士団を主体とした本隊と合流するまで安心はできない。
 王都からこちらへと向かっている『一番隊』のところまで逃げる必要がある。
「まぁ『エリーナ・コルト』の追撃があるでしょうね」
「だろうね。単独なら機動力も十分にあるし」
 ミアの予想にナタリーが応じた。
 どちらも大半は歩兵だ。帝国軍が追いつくのは時間がかかるはずだった。
「……ミアとキースと私の三人がかりでも勝てる気がしなかったわ」
「不意打ち以外は当たりもしなかったな」
 ソフィアの言う通りだった。
 正直、勝てる気がしない。
「そんなに強かったの?」
「まあ、強いのは知ってるけど。具体的なところは気になるかも」
 ナタリーアリスが首を傾げて見せる。
「炎で家を焼き切るんだ」
「剣が勝手に戦うのよ」
「キースを投げつけたのに避けるっす」
 俺とソフィアとミアが口々にその恐ろしさをまくしたてる。
「ごめん、全然わかんない」
「キースを投げるってなに?」
 ナタリーアリスがさらに首を傾げて見せた。
「予定通り、目標は王都との中間地点にある関所っす」
「あそこを越えれば一安心だからね」
 指揮官にあたるミアとナタリーが言った。
 城塞都市へと向かう途中で見かけた関所である。
 あの関所の守りが固いのではなく、帝国が本気で山越えしてくるとは考えていなかったのだ。
 他に要害となる地点はない。逆に言えば、迎え撃つ場所が決まっているということだ。
 初めて現れた関所へと逃げ込む俺たちを追って、無策に飛び込むほど帝国軍はバカじゃないだろう。
「問題は……」
「どこで『エリーナ・コルト』が仕掛けてくるか、だね」
 ミアがナタリーに頷く。
 元々、三回は時間を稼ぐ必要があった。
 その予想通りなら、あと二回は戦闘があるだろう。
「あたしの予想は――ここ」
 ナタリーが広げた地図の一点を指さした。そこには小さな森があった。
 決して深い森ではないが、最短距離を行くためには抜ける必要があった。
 迂回した場合、帝国軍に先回りされる恐れがある。
「最初に『エリーナ・コルト』は司令部を狙った。
 今度は奇襲でこの中の誰かを狙う」
 そう言ってナタリーは俺たちを見回した。
 こういう時のナタリーの予想は怖いくらいによく当たる。
 明日は移動に当てて――明後日には森に入る予定だった。