第三部 55話 計算以上
ー/ー『エリーナ・コルト』を城塞都市内部へと吹き飛ばした俺たちは空を飛んでいた。
いや、単純に風で吹き飛ばされていた。
ナタリーは『S級冒険者』レベルのアリスと加奈の魔法を二人同時に使わせやがった。
結果的にエリーナからは逃げ切ったが、本質的には全て吹っ飛ばしただけである。
チェックメイトを上手く躱したとはお世辞でも言えないだろう。
どちらかと言えばちゃぶ台返しだと思う。
「落ちる落ちる!」
「ナタリー! 着地も考えてるっすよねぇ!?」
「もちろん! ピノは上昇気流を作り続けて!
アリスと加奈は着地をお願い。あと一回ずつは使えるでしょう?」
ちょうど山なりの頂点辺りで焦る俺とミアにナタリーが指示を出す。
無茶苦茶ではあるが、勝算のある賭けなのだろう。
「人使いが荒い……!」
「……ぴ」
ナタリーの言葉にアリスとピノが文句を言った。
二人で分担したとは言え、この威力の風魔法だ。アリス達の魔力はほとんど空だろう。
対してピノは着地まで継続的に魔法を使わなければならない。
二人が文句を言うのも無理はない。それでも指示通りには従った。
ナタリーの声に合わせて魔法を使う。落下の勢いが弱まったのが分かった。
残るは加奈の魔法だけである。その風魔法で着地できれば問題ないはずだった。
しかし――ナタリーは首を傾げた。
「あれ? 計算間違った?」
「冗談でしょ!? これで死んだら笑いものよッ」
「うーん、集団自殺になるのかなぁ」
ナタリーの言葉にアリスが喚く。
しかし加奈はすでに諦めているようだった。
「よし、エル!」
「な、なによ!」
俺は頭上の使い魔に声を掛けた。名案が思い浮かんだのだ。
この状況になってしまえば、他にできることは見当たらなかった。
すでに地面が迫ってきている。
先ほどの魔法でかなり速度は落ちたが、地面に激突すれば絶対死ぬ。
「穏やかな幻覚を見せてくれ」
「現実逃避してんじゃないわよっ」
エルが俺の頭をボールのように蹴りつけた。
だが、俺にできることはなさそうだった。
「あ、そうか……アリス、加奈。魔法の威力上がったんじゃない?」
「嬉しいけど! 今回は自分たちに向けて撃っちゃったのよ、バカ!」
「あはは。自分の魔法が強力になったのが死因って、きっと珍しいよね」
ナタリーの能天気な言葉に、アリスと加奈が応じる。
緊張感のないやり取りに脱力してしまう。帝国の英雄を退けた結果がこれである。
「ああもう、リック! 出来るだけ柔らかくお願い!」
そこで初めて、ソフィアが声を上げた。
バチッと、いつもの錬金音。
ソフィアはメタルスライムに空気の層を何度も挟むように錬金した。
薄く延ばして、さらに地面にへと投げる。
「……これならなんとかなるかも。加奈」
アリスの声に希望が混じった。
「風よ、吹き飛ばせ」
最後の魔法が放たれた。
いや、単純に風で吹き飛ばされていた。
ナタリーは『S級冒険者』レベルのアリスと加奈の魔法を二人同時に使わせやがった。
結果的にエリーナからは逃げ切ったが、本質的には全て吹っ飛ばしただけである。
チェックメイトを上手く躱したとはお世辞でも言えないだろう。
どちらかと言えばちゃぶ台返しだと思う。
「落ちる落ちる!」
「ナタリー! 着地も考えてるっすよねぇ!?」
「もちろん! ピノは上昇気流を作り続けて!
アリスと加奈は着地をお願い。あと一回ずつは使えるでしょう?」
ちょうど山なりの頂点辺りで焦る俺とミアにナタリーが指示を出す。
無茶苦茶ではあるが、勝算のある賭けなのだろう。
「人使いが荒い……!」
「……ぴ」
ナタリーの言葉にアリスとピノが文句を言った。
二人で分担したとは言え、この威力の風魔法だ。アリス達の魔力はほとんど空だろう。
対してピノは着地まで継続的に魔法を使わなければならない。
二人が文句を言うのも無理はない。それでも指示通りには従った。
ナタリーの声に合わせて魔法を使う。落下の勢いが弱まったのが分かった。
残るは加奈の魔法だけである。その風魔法で着地できれば問題ないはずだった。
しかし――ナタリーは首を傾げた。
「あれ? 計算間違った?」
「冗談でしょ!? これで死んだら笑いものよッ」
「うーん、集団自殺になるのかなぁ」
ナタリーの言葉にアリスが喚く。
しかし加奈はすでに諦めているようだった。
「よし、エル!」
「な、なによ!」
俺は頭上の使い魔に声を掛けた。名案が思い浮かんだのだ。
この状況になってしまえば、他にできることは見当たらなかった。
すでに地面が迫ってきている。
先ほどの魔法でかなり速度は落ちたが、地面に激突すれば絶対死ぬ。
「穏やかな幻覚を見せてくれ」
「現実逃避してんじゃないわよっ」
エルが俺の頭をボールのように蹴りつけた。
だが、俺にできることはなさそうだった。
「あ、そうか……アリス、加奈。魔法の威力上がったんじゃない?」
「嬉しいけど! 今回は自分たちに向けて撃っちゃったのよ、バカ!」
「あはは。自分の魔法が強力になったのが死因って、きっと珍しいよね」
ナタリーの能天気な言葉に、アリスと加奈が応じる。
緊張感のないやり取りに脱力してしまう。帝国の英雄を退けた結果がこれである。
「ああもう、リック! 出来るだけ柔らかくお願い!」
そこで初めて、ソフィアが声を上げた。
バチッと、いつもの錬金音。
ソフィアはメタルスライムに空気の層を何度も挟むように錬金した。
薄く延ばして、さらに地面にへと投げる。
「……これならなんとかなるかも。加奈」
アリスの声に希望が混じった。
「風よ、吹き飛ばせ」
最後の魔法が放たれた。
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