第8話 絵美と横浜で1
ー/ー
妹に、「絵美はぼくと同じで、普通じゃないところがあると思うから、ぼくのもの、私のものゲームにはならないという予感はある」と言ってはみたものの、それはわからない。黙っていて、将来、絵美ともぐちゃぐちゃになるのもイヤだったので、今日会ったら、ぼくは今の状況を説明しておこうとこう決めた。
今日は、絵美とは横浜で会う約束をしている。
東京はぼくの肌に合わない気がする。横浜の方が気楽だ。東京駅、お茶の水、神田、四谷、飯田橋、渋谷、新宿、池袋・・・こう街が多いと焦点がぼけるような気がする。それも山手線なんていう始点も終点もない電車路線を中心にして、円形で散乱している街。八割の住民が元々ここに住んでいなかった街。そういう街にいると、息が詰まるような気がするのだ。
今日は、関内駅で落ち合って、早い時間に馬車道の十番館で食事して、石川町まで歩いて、コペンハーゲンでお酒を飲みたいと絵美には言ってある。「明彦、それ素敵な響きのデートコースね。絵美、それ好きよ。そうしましょ」と彼女は言う。
十番館に予約を入れておいた。「もしもし?」「ハイ、十番館です」「明彦ですが」「あら、明彦くん、元気?」「元気ですよ。え~、今日、2名、予約お願いしてよろしいでしょうか?6時半から?」「あら?個室?」「いや、そんな大げさなもんじゃありません。3階のテーブル席で結構です」「わかったわ。お待ちしてます」「よろしくお願いします、では」「ハイハイ」関内とか石川町近辺は、ぼくの学校の同窓生がたくさんいるので、結構便利なんだ。
六時十五分に関内駅でぼくらは待ち合わせしていた。五時四十分に鶴見駅から京浜東北線に乗った。六時十分に関内駅に着いた。改札口を出ると、絵美はもう来ていた。
「あれ?早いじゃないか?」「「ハイ、明彦!四日ぶりね。どのくらいで着くかわからなかったから、ちょっと早めに出てきたのよ。でも、私も着いたのは五分前だから」「それほど待っていないね、よかった」「横浜もいいわねえ。私、この街好きよ」「ぼくのホームタウンだ」「だから、もっと好き。さ、行きましょ」と、絵美は腕を絡ませてきて言った。
「六時半に予約を入れてあるんだ。フランス料理だけどいいかな?」「うれしい!私、フランス料理好きなの」「そりゃ、よかった」「私の好きなもの知っているのね?」「今日で、まだ三回目だよ、会うのは。でも、そういう気がしたんだ」「明彦、あなたを昔から知っていたような気がするけど」「ぼくもそうだ。不思議だね」「いいなあ、この街。明彦と一緒に住んでみたいな、この街に」絵美はドキッとすることを平気で口に出すのだ。
ぼくらは十番館の三階にあがった。窓際の席が用意されていた。「明彦、いらっしゃい」とおばさんが言う。「お久しぶりです」とぼくは言った。
絵美の椅子を引いて座らせ、ぼくも向かい側に座った。「さて、何を食べようか?」とぼくはメニューを見た。絵美もメニューを開いて、「このコースの料理長推薦料理にしよううかしら?」「じゃあ、ぼくは同じものだと面白くないから季節のディナーにしよう。おいしそうだったらシェアすればいい」「それがいいわね」「飲み物は?」「私のメインはビーフなのね。じゃあ、赤ワインをいただこうかしら?」「ぼくは・・・ジンフィズをもらおう」「あ!ずるい!私もそっちにする!」「ワインをよして?」「ジンフィズ、おいしそうじゃない?」「ぼくのはシロップをいれないんだよ」「私もそれをいただくわ。甘いのダメなの」「了解。じゃあ、注文しよう」
飲み物が来て、コースが順番に来て、「明彦、これおいしい。食べてみて」「これもおいしいよ、取りなよ」と取り替えっこをした。デザートが済んで、コーヒーが出た。ぼくは「絵美、ブランディー飲む?」と訊く。「明彦、私がブランディー飲みたいのがなぜわかるの?」「顔に書いてある」「本当に書いてある?そんな物欲しそうな顔をしていた?・・・って、ウソよ」
「絵美の考えていることは自然にわかるんだ」
「あら、私も明彦が何を考えているか、わかるの」
「何をいまぼくは考えている?」
「そうねえ、私に話そうか、話すまいか、悩んでいる問題について?女性の話でしょ?」ぼくは驚いた。
「なぜわかるの?」
「なぜなんだか知りません。でも、わかるわよ。さ、お話しなさい」
ぼくは、真理子とメグミの長い長い話をした。彼女とぼくのブランディーが三杯あく間話し続けた。絵美は、相づちもうたず、黙って聞いていた。話し終わって、絵美は、
「そお、明彦らしいじゃない?」と絵美が言う。
「それだけ?」とぼくは驚いて言った。
「だって、明彦がやりそうなことだもの」と、すました顔で言う。
「イヤな話じゃないの?絵美の聞きたくない話じゃないの?」と訊くと、「私が聞きたくない話を明彦がするわけないでしょ?最初から、私がわかる、理解すると思っているから明彦は私に話した。それも逐一。誤魔化さないで。率直なのよ、キミは。だから、絵美はキミのことが好きだよ」
「でもさ、この関係をキミはどう考える?どうしたい?」
「そのままでいいんじゃないかしら?だって、時間的に考えたら、私と明彦はまだまだ三回会っただけよ。時間的に考えたらってことでは。私があなたの女性問題をとやかく言うつもりもないし、私に話したいんだったら話す、話したくないんだったら話さない、それでいいと思うの」
「それでいいの?・・・ああ、いいんだよね。わかった」とぼくは言った。
「私の話は聞きたい?」と、絵美が言う。
「聞かなくてもいい」とぼくは言った。「そういうと思った。それが女性と男性の違うところね」
「まったく、心理学なんて専攻していると、読心術ができるんじゃないかと思っちゃうよ」
「心理学は読心術なんて教えないけど、自動的に、明彦だけは私は心が読めるのよ。あなただって、私の心が読めるのと同じ」
「まあ、安心したよ」
「でもね、そのメグミさん?彼女はケアしないといけないぞ、明彦?もちろん、真理子さんも」
「そりゃあ・・・」
「明彦、キミ、面倒だなと思っているでしょ?でも、ダメ。メグミさんが以前と逆のことをされているのを知ったとしたら、キミは彼女の人生を狂わせる。真理子さんは、一歩、身を引いたと思うけれど、それは、キミとメグミさんのことを思って、わざと身をひいたのよ。彼女、ハッピーじゃないわよ、たとえ次の彼氏ができても」
「絵美、キミはどうなんだ?どう思うんだ?」
「私?私は、メグミさんでもなく、真理子さんでもない。私は、私が欲しいと思ったときに、明彦をもらうわ。別に、肉体関係がなくても、私たち、関係ないでしょ?それで、明彦がお茶目しても、それはスポーツみたいなものが多分にあるんだから、私はそれで嫉妬しません。それでよろしい?」
「なんで、キミはキッパリそう言い切れるんだろうか?」
「だって、私は明彦のパートナーなんだから。キミの人生に関しては、キッパリ言い切れるのよ。自分の人生は・・・わからないんだけね。それはキミがキッパリと私に言い切ってくれればいい。でも、今じゃない。そのうちにね。今のところ、まだ、私の方は問題はないから。そうそう、妹さん?彼女とメグミさんを会わせても差し支えないわよ。妹さんがなんとかしてくれる、そんな気がする。妹さん、私のこと嫌うでしょうけどね」
「なぜ、妹がキミを嫌うんだ?」
「そういう気がするだけよ。妹さんの大好きなメグミさんから、私が明彦を奪ったと思うんだろうから。でも、妹さんに私の弁護なんてしないでもいいのよ。弁護するとますます私が嫌いになるんだろうから」
「なぜ、絵美と話していると、ジグソーパズルの破片がぴたりぴたりと収まるような気がするんだろうか?」
「それが、明彦の人生に割り当てられた私の役目だからじゃないの?さて、行きましょうよ。コペンハーゲン?」
「ああ、行こう」
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今日は、絵美とは横浜で会う約束をしている。
東京はぼくの肌に合わない気がする。横浜の方が気楽だ。東京駅、お茶の水、神田、四谷、飯田橋、渋谷、新宿、池袋・・・こう街が多いと焦点がぼけるような気がする。それも山手線なんていう始点も終点もない電車路線を中心にして、円形で散乱している街。八割の住民が元々ここに住んでいなかった街。そういう街にいると、息が詰まるような気がするのだ。
今日は、関内駅で落ち合って、早い時間に馬車道の十番館で食事して、石川町まで歩いて、コペンハーゲンでお酒を飲みたいと絵美には言ってある。「明彦、それ素敵な響きのデートコースね。絵美、それ好きよ。そうしましょ」と彼女は言う。
十番館に予約を入れておいた。「もしもし?」「ハイ、十番館です」「明彦ですが」「あら、明彦くん、元気?」「元気ですよ。え~、今日、2名、予約お願いしてよろしいでしょうか?6時半から?」「あら?個室?」「いや、そんな大げさなもんじゃありません。3階のテーブル席で結構です」「わかったわ。お待ちしてます」「よろしくお願いします、では」「ハイハイ」関内とか石川町近辺は、ぼくの学校の同窓生がたくさんいるので、結構便利なんだ。
六時十五分に関内駅でぼくらは待ち合わせしていた。五時四十分に鶴見駅から京浜東北線に乗った。六時十分に関内駅に着いた。改札口を出ると、絵美はもう来ていた。
「あれ?早いじゃないか?」「「ハイ、明彦!四日ぶりね。どのくらいで着くかわからなかったから、ちょっと早めに出てきたのよ。でも、私も着いたのは五分前だから」「それほど待っていないね、よかった」「横浜もいいわねえ。私、この街好きよ」「ぼくのホームタウンだ」「だから、もっと好き。さ、行きましょ」と、絵美は腕を絡ませてきて言った。
「六時半に予約を入れてあるんだ。フランス料理だけどいいかな?」「うれしい!私、フランス料理好きなの」「そりゃ、よかった」「私の好きなもの知っているのね?」「今日で、まだ三回目だよ、会うのは。でも、そういう気がしたんだ」「明彦、あなたを昔から知っていたような気がするけど」「ぼくもそうだ。不思議だね」「いいなあ、この街。明彦と一緒に住んでみたいな、この街に」絵美はドキッとすることを平気で口に出すのだ。
ぼくらは十番館の三階にあがった。窓際の席が用意されていた。「明彦、いらっしゃい」とおばさんが言う。「お久しぶりです」とぼくは言った。
絵美の椅子を引いて座らせ、ぼくも向かい側に座った。「さて、何を食べようか?」とぼくはメニューを見た。絵美もメニューを開いて、「このコースの料理長推薦料理にしよううかしら?」「じゃあ、ぼくは同じものだと面白くないから季節のディナーにしよう。おいしそうだったらシェアすればいい」「それがいいわね」「飲み物は?」「私のメインはビーフなのね。じゃあ、赤ワインをいただこうかしら?」「ぼくは・・・ジンフィズをもらおう」「あ!ずるい!私もそっちにする!」「ワインをよして?」「ジンフィズ、おいしそうじゃない?」「ぼくのはシロップをいれないんだよ」「私もそれをいただくわ。甘いのダメなの」「了解。じゃあ、注文しよう」
飲み物が来て、コースが順番に来て、「明彦、これおいしい。食べてみて」「これもおいしいよ、取りなよ」と取り替えっこをした。デザートが済んで、コーヒーが出た。ぼくは「絵美、ブランディー飲む?」と訊く。「明彦、私がブランディー飲みたいのがなぜわかるの?」「顔に書いてある」「本当に書いてある?そんな物欲しそうな顔をしていた?・・・って、ウソよ」
「絵美の考えていることは自然にわかるんだ」
「あら、私も明彦が何を考えているか、わかるの」
「何をいまぼくは考えている?」
「そうねえ、私に話そうか、話すまいか、悩んでいる問題について?女性の話でしょ?」ぼくは驚いた。
「なぜわかるの?」
「なぜなんだか知りません。でも、わかるわよ。さ、お話しなさい」
ぼくは、真理子とメグミの長い長い話をした。彼女とぼくのブランディーが三杯あく間話し続けた。絵美は、相づちもうたず、黙って聞いていた。話し終わって、絵美は、
「そお、明彦らしいじゃない?」と絵美が言う。
「それだけ?」とぼくは驚いて言った。
「だって、明彦がやりそうなことだもの」と、すました顔で言う。
「イヤな話じゃないの?絵美の聞きたくない話じゃないの?」と訊くと、「私が聞きたくない話を明彦がするわけないでしょ?最初から、私がわかる、理解すると思っているから明彦は私に話した。それも逐一。誤魔化さないで。率直なのよ、キミは。だから、絵美はキミのことが好きだよ」
「でもさ、この関係をキミはどう考える?どうしたい?」
「そのままでいいんじゃないかしら?だって、時間的に考えたら、私と明彦はまだまだ三回会っただけよ。時間的に考えたらってことでは。私があなたの女性問題をとやかく言うつもりもないし、私に話したいんだったら話す、話したくないんだったら話さない、それでいいと思うの」
「それでいいの?・・・ああ、いいんだよね。わかった」とぼくは言った。
「私の話は聞きたい?」と、絵美が言う。
「聞かなくてもいい」とぼくは言った。「そういうと思った。それが女性と男性の違うところね」
「まったく、心理学なんて専攻していると、読心術ができるんじゃないかと思っちゃうよ」
「心理学は読心術なんて教えないけど、自動的に、明彦だけは私は心が読めるのよ。あなただって、私の心が読めるのと同じ」
「まあ、安心したよ」
「でもね、そのメグミさん?彼女はケアしないといけないぞ、明彦?もちろん、真理子さんも」
「そりゃあ・・・」
「明彦、キミ、面倒だなと思っているでしょ?でも、ダメ。メグミさんが以前と逆のことをされているのを知ったとしたら、キミは彼女の人生を狂わせる。真理子さんは、一歩、身を引いたと思うけれど、それは、キミとメグミさんのことを思って、わざと身をひいたのよ。彼女、ハッピーじゃないわよ、たとえ次の彼氏ができても」
「絵美、キミはどうなんだ?どう思うんだ?」
「私?私は、メグミさんでもなく、真理子さんでもない。私は、私が欲しいと思ったときに、明彦をもらうわ。別に、肉体関係がなくても、私たち、関係ないでしょ?それで、明彦がお茶目しても、それはスポーツみたいなものが多分にあるんだから、私はそれで嫉妬しません。それでよろしい?」
「なんで、キミはキッパリそう言い切れるんだろうか?」
「だって、私は明彦のパートナーなんだから。キミの人生に関しては、キッパリ言い切れるのよ。自分の人生は・・・わからないんだけね。それはキミがキッパリと私に言い切ってくれればいい。でも、今じゃない。そのうちにね。今のところ、まだ、私の方は問題はないから。そうそう、妹さん?彼女とメグミさんを会わせても差し支えないわよ。妹さんがなんとかしてくれる、そんな気がする。妹さん、私のこと嫌うでしょうけどね」
「なぜ、妹がキミを嫌うんだ?」
「そういう気がするだけよ。妹さんの大好きなメグミさんから、私が明彦を奪ったと思うんだろうから。でも、妹さんに私の弁護なんてしないでもいいのよ。弁護するとますます私が嫌いになるんだろうから」
「なぜ、絵美と話していると、ジグソーパズルの破片がぴたりぴたりと収まるような気がするんだろうか?」
「それが、明彦の人生に割り当てられた私の役目だからじゃないの?さて、行きましょうよ。コペンハーゲン?」
「ああ、行こう」