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第三部 49話 帝国への道

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 そのさらに翌日。
 俺たちは大急ぎで王都を発つことになった。
 
 本当はもう少しゆっくりする予定だったのだが、組合長からお達しが来たのだ。
 事実上、王都を追い出された形だった。
 
「顔を見たら八つ当たりしそうだから、さっさと出て行け。
 こっちはクソ忙しいのに宴会なんぞしやがって。けっ」
 伝令役が正確に『八つ当たり』を伝えてくれた。

『緑竜』の件がよほど忙しいのだろう。
 加えて、一気に『B級冒険者』へと昇格した俺たちへの風当たりも強くなり始めていた。

 その辺りの配慮もあるのは間違いなかった。



 荷馬車を借りて北西を目指す。
 幸い、出発の準備は全員が済ませていた。

 問題は体調だった。
 もちろん、二日酔いである。

「ピノ! 助けてぇ」
「お願い、飲みすぎたのよっ!」

 ナタリーとアリスが青い小鳥のピノに頭を下げていた。
 こういう生活用の細かい魔法はピノが一番得意なのだった。

「ぴっ」
 ピノは「反省しろ」と言わんばかりにそっぽを向いた。

「反省してる!」
「反省してるからぁ!」

 掌に収まる小鳥に魔法をねだる女性二人。
 俺たちのパーティの主力。どちらも『A級冒険者』である。

「主人の命令に従いなさいっ」
「ああ、頭がガンガン鳴ってる……馬車の揺れがぁ」

 ナタリーがついに命令する。
 同時にアリスが頭を抱えて目を閉じた。

「ぴ……?」
 ピノが可愛らしく首を傾げて見せる。

「今更言葉が通じないフリをするな!」
「その惚けた表情をやめて、ピノ。殴りそう」

 まぁ、昨日はバカみたいに飲んでたからな。

「おかしいわね……。あの二人は王立学院でも指折りの秀才。
 それも王国で話題の『A級冒険者』コンビのはずよ?」
 ソフィアが真面目に首を傾げていた。



 騒ぎながら三日が過ぎると、大きな関所にたどり着いた。
 ここまででおよそ目的地との中間地点くらいか。

 ここまで同じような景色が続いたからだろう。
 全員が興味深そうに関所を見上げた。

「おー、大きいねぇ」
「でも、この程度で防げるものかしら?」
「どちらかと言うと、監視の意味が強いと思うよ」
 ナタリーが歓声を上げて、ソフィアの質問に加奈が答えた。

 高い城壁が築かれて門のようになっている。
 加奈の言う通り、関所の上には監視の人員が配置されているらしい。

 他のメンバーの話を聞く限り、昔は形だけだったらしい。
 昔の連合との諍いと帝国から不穏な空気を感じて、急いで改築したとのこと。

 帝国領へと続く北西の街道だけではなく、連合領へと続く北東の街道も同じだとナタリーが言う。
 どうやら王国内の地理は少し変化があったようだ。

 組合長から雑に渡された通行許可証を見せると、すぐに通された。
 流石に偽物ではなかったらしい。

 俺たちが向かっているのは、城塞都市『ネルソン』だ。
 名前の通り、要塞が都市化したものである。

 長年に渡る帝国との膠着で要塞が都市になってしまったのである。
 この都市の周りに魔物が増えているらしい。

 帝国はクーデターを成功させて新政権を樹立した。
 王国との関係が変わる中、国境付近の不安要素は排除したいようだ。



 関所を抜けてからさらに三日。

「ぴ」
 偵察に飛び回っていたピノが戻ってくる。

「城塞都市が見えたって」
 ナタリーが言った。



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 そのさらに翌日。
 俺たちは大急ぎで王都を発つことになった。
 本当はもう少しゆっくりする予定だったのだが、組合長からお達しが来たのだ。
 事実上、王都を追い出された形だった。
「顔を見たら八つ当たりしそうだから、さっさと出て行け。
 こっちはクソ忙しいのに宴会なんぞしやがって。けっ」
 伝令役が正確に『八つ当たり』を伝えてくれた。
『緑竜』の件がよほど忙しいのだろう。
 加えて、一気に『B級冒険者』へと昇格した俺たちへの風当たりも強くなり始めていた。
 その辺りの配慮もあるのは間違いなかった。
 荷馬車を借りて北西を目指す。
 幸い、出発の準備は全員が済ませていた。
 問題は体調だった。
 もちろん、二日酔いである。
「ピノ! 助けてぇ」
「お願い、飲みすぎたのよっ!」
 ナタリーとアリスが青い小鳥のピノに頭を下げていた。
 こういう生活用の細かい魔法はピノが一番得意なのだった。
「ぴっ」
 ピノは「反省しろ」と言わんばかりにそっぽを向いた。
「反省してる!」
「反省してるからぁ!」
 掌に収まる小鳥に魔法をねだる女性二人。
 俺たちのパーティの主力。どちらも『A級冒険者』である。
「主人の命令に従いなさいっ」
「ああ、頭がガンガン鳴ってる……馬車の揺れがぁ」
 ナタリーがついに命令する。
 同時にアリスが頭を抱えて目を閉じた。
「ぴ……?」
 ピノが可愛らしく首を傾げて見せる。
「今更言葉が通じないフリをするな!」
「その惚けた表情をやめて、ピノ。殴りそう」
 まぁ、昨日はバカみたいに飲んでたからな。
「おかしいわね……。あの二人は王立学院でも指折りの秀才。
 それも王国で話題の『A級冒険者』コンビのはずよ?」
 ソフィアが真面目に首を傾げていた。
 騒ぎながら三日が過ぎると、大きな関所にたどり着いた。
 ここまででおよそ目的地との中間地点くらいか。
 ここまで同じような景色が続いたからだろう。
 全員が興味深そうに関所を見上げた。
「おー、大きいねぇ」
「でも、この程度で防げるものかしら?」
「どちらかと言うと、監視の意味が強いと思うよ」
 ナタリーが歓声を上げて、ソフィアの質問に加奈が答えた。
 高い城壁が築かれて門のようになっている。
 加奈の言う通り、関所の上には監視の人員が配置されているらしい。
 他のメンバーの話を聞く限り、昔は形だけだったらしい。
 昔の連合との諍いと帝国から不穏な空気を感じて、急いで改築したとのこと。
 帝国領へと続く北西の街道だけではなく、連合領へと続く北東の街道も同じだとナタリーが言う。
 どうやら王国内の地理は少し変化があったようだ。
 組合長から雑に渡された通行許可証を見せると、すぐに通された。
 流石に偽物ではなかったらしい。
 俺たちが向かっているのは、城塞都市『ネルソン』だ。
 名前の通り、要塞が都市化したものである。
 長年に渡る帝国との膠着で要塞が都市になってしまったのである。
 この都市の周りに魔物が増えているらしい。
 帝国はクーデターを成功させて新政権を樹立した。
 王国との関係が変わる中、国境付近の不安要素は排除したいようだ。
 関所を抜けてからさらに三日。
「ぴ」
 偵察に飛び回っていたピノが戻ってくる。
「城塞都市が見えたって」
 ナタリーが言った。