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第三部 40話 ランク

ー/ー



「……また来たぞ、ソフィア?」
「分かってるわよ。もう少し休ませて」

 深い森の中。
 俺とソフィアは背中合わせでささやき合った。

 俺が見つめる先には魔物の大群が迫っている。
 すでに何度か見た光景だ。できればもう見たくない。

 場所は王都からほど近い『ハーフエルフの森』。
 かつて『ハーフエルフの小国』と呼ばれていた自治領はなくなった。
 結果として『ハーフエルフの森』は荒地となって、魔物の巣と化している。

 俺たちはその魔物の討伐依頼をこなしていた。
 ちらりと頭上を見る。そこには監督役のアリスがいるはずだ。

 木の上から「すぴー」という寝息。
 ……確かに『いる』みたいだ。

「ふ――」
 鋭く息を吐き出して、俺は魔物の群れへと踏み込んだ。

 事前にエルと打ち合わせて、視界に入った順に魔物を『予測』の対象にする。
 見逃すことがないように上下左右へと視線を動かした。

 右の小剣を払う。左の魔弾剣を突いた。
 狼の魔物が腹を裂かれる。鳥の魔物の首が貫かれた。

 さらに両手の魔法陣から無数の魔弾を飛ばす。
 加えて、魔物のすぐ後ろに障壁を張った。

「!?」
 逃げ道を失った魔物たちが混乱した声を上げる。

 多くの魔物が魔弾の雨に打たれ、貫かれてゆく。
 魔物の強さ自体は大したものではない。数が多いだけだ。

 俺はナタリーからの言葉を思い出す。

 ――当面は組合のランクを上げる。
 ――十分にランクが上がったら、王都を出て北を目指しましょう。

 ――原因は不明だけど、北の国境を越えて魔物が流れ込んでいる。
 ――その援護の依頼が来ているのよ。

 ――今の二人は『F級冒険者』よ。
 ――事実上の見習いなので、すぐに『E級冒険者』にはなると思う。

 ――このまま『C級冒険者』まで上げてもらう。
 ――実力は十分と見込んでいる。

 ――分かってると思うけど、甘えないでね?
 ――ソフィアちゃんの実力は良く知っている。
 ――キースも『駆猿』を単独で倒せるのに『D級冒険者』は名乗らせない。

「簡単に言いやがって――!」
「今回ばかりは同感よ!」

 俺たちはナタリーへの罵詈雑言を叫びながら魔物を討伐し続けた。

「はぁ……はぁ」
 魔物の群れを一掃した後、俺たちは肩で息をしながら座り込んでいた。

 頭上からは「すぴー」という安らかな寝息が続いている。
 他人の安眠にこれほど腹を立てることがあるんだな。

「ぴ?」

 ふと、俺たちの前にピノが降り立った。
 首を傾げて俺たちを眺めている。

「はは、心配してくれるのか?」
「ぴ」
「大丈夫よ、すぐに歩けるようになるわ」
「ぴ!」
 俺たちの言葉を受けて、ピノが嬉しそうに鳴いた。

「ぴっ!」
 そして「良かった」とでも言うように、羽で一方を示した。
 
 ――森の奥を。

「…………」
「…………」

 まるで「じゃあ次に行けるね」とでも言うようだった。
 さらに「行かないの?」とでも言うように首を傾げる。

 ――お前もそっち側なのか。



 結成の翌日、俺たちは『E級冒険者』になった。
 事実上の最短記録らしい。

 ナタリーは大喜びで手を叩いてくれた。
 満面の笑みを浮かべて言う。

「おめでとう! 次は『D級冒険者』だね!」
 アッシュだった頃とは別の一面をナタリーに見た。

 ――鬼か?



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「……また来たぞ、ソフィア?」
「分かってるわよ。もう少し休ませて」
 深い森の中。
 俺とソフィアは背中合わせでささやき合った。
 俺が見つめる先には魔物の大群が迫っている。
 すでに何度か見た光景だ。できればもう見たくない。
 場所は王都からほど近い『ハーフエルフの森』。
 かつて『ハーフエルフの小国』と呼ばれていた自治領はなくなった。
 結果として『ハーフエルフの森』は荒地となって、魔物の巣と化している。
 俺たちはその魔物の討伐依頼をこなしていた。
 ちらりと頭上を見る。そこには監督役のアリスがいるはずだ。
 木の上から「すぴー」という寝息。
 ……確かに『いる』みたいだ。
「ふ――」
 鋭く息を吐き出して、俺は魔物の群れへと踏み込んだ。
 事前にエルと打ち合わせて、視界に入った順に魔物を『予測』の対象にする。
 見逃すことがないように上下左右へと視線を動かした。
 右の小剣を払う。左の魔弾剣を突いた。
 狼の魔物が腹を裂かれる。鳥の魔物の首が貫かれた。
 さらに両手の魔法陣から無数の魔弾を飛ばす。
 加えて、魔物のすぐ後ろに障壁を張った。
「!?」
 逃げ道を失った魔物たちが混乱した声を上げる。
 多くの魔物が魔弾の雨に打たれ、貫かれてゆく。
 魔物の強さ自体は大したものではない。数が多いだけだ。
 俺はナタリーからの言葉を思い出す。
 ――当面は組合のランクを上げる。
 ――十分にランクが上がったら、王都を出て北を目指しましょう。
 ――原因は不明だけど、北の国境を越えて魔物が流れ込んでいる。
 ――その援護の依頼が来ているのよ。
 ――今の二人は『F級冒険者』よ。
 ――事実上の見習いなので、すぐに『E級冒険者』にはなると思う。
 ――このまま『C級冒険者』まで上げてもらう。
 ――実力は十分と見込んでいる。
 ――分かってると思うけど、甘えないでね?
 ――ソフィアちゃんの実力は良く知っている。
 ――キースも『駆猿』を単独で倒せるのに『D級冒険者』は名乗らせない。
「簡単に言いやがって――!」
「今回ばかりは同感よ!」
 俺たちはナタリーへの罵詈雑言を叫びながら魔物を討伐し続けた。
「はぁ……はぁ」
 魔物の群れを一掃した後、俺たちは肩で息をしながら座り込んでいた。
 頭上からは「すぴー」という安らかな寝息が続いている。
 他人の安眠にこれほど腹を立てることがあるんだな。
「ぴ?」
 ふと、俺たちの前にピノが降り立った。
 首を傾げて俺たちを眺めている。
「はは、心配してくれるのか?」
「ぴ」
「大丈夫よ、すぐに歩けるようになるわ」
「ぴ!」
 俺たちの言葉を受けて、ピノが嬉しそうに鳴いた。
「ぴっ!」
 そして「良かった」とでも言うように、羽で一方を示した。
 ――森の奥を。
「…………」
「…………」
 まるで「じゃあ次に行けるね」とでも言うようだった。
 さらに「行かないの?」とでも言うように首を傾げる。
 ――お前もそっち側なのか。
 結成の翌日、俺たちは『E級冒険者』になった。
 事実上の最短記録らしい。
 ナタリーは大喜びで手を叩いてくれた。
 満面の笑みを浮かべて言う。
「おめでとう! 次は『D級冒険者』だね!」
 アッシュだった頃とは別の一面をナタリーに見た。
 ――鬼か?