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第三部 39話 結成

ー/ー



 数日後、俺は組合に顔を出した。
 今日はナタリー、アリス、ソフィアの三人とチームを結成する日だった。

 王都の四番街を歩き、組合の窓口のある建物までやって来た。
 雑多な雰囲気は四番街の特徴だろう。正面入口のある大通りはいつも騒がしい。

 考えてみれば、騎士団の詰所と魔術師団の学舎に比べると縁がない場所だった。
 アッシュの時に王都へ初めて来た頃に入ったくらいか?

「……は」

 思わず笑ってしまう。あの時、ナタリーを連れてきたのだった。
 まさかA級冒険者になるなんて思いもしなかった。
 
「気持ち悪いわね。二度と笑わないで」
「……笑うこと自体は許してくれ」

 エルが嫌そうな声を出す。
 俺は独り言を呟きながら、組合の王都支部へと入っていった。



「あ、キース! ここだよー!」
 足を踏み入れるなり、ナタリーの元気な声が届いてきた。

 目を向けると、すでに三人は揃っているようだった。
 正面にある窓口から少し外れたテーブルに陣取っている。
 
「……すみません。遅れました」
 ちらりとソフィアを盗み見る。先日の姿が頭を過ぎった。
 
「いや、まだちょっと早いくらいだよ」
「あはは、ナタリーと私たちは朝からいるからね?」
 アリスが応じて、加奈が付け加える。
 
「じゃあ、始めますか」
 ナタリーはそう言って、切り出した。



「この瞬間をもって、この四人でパーティを結成とするよ?」
 規則などの説明を一通り終えると、ゆっくりとナタリーは俺たちを見回した。

 結成の瞬間を明確にしたいのだろう。
 全員が頷いた。すでに決定済みの内容だ。

「それじゃ、改めてよろしくね。『悪戯娘』ナタリー・クレフです」
「……私は『ダブル』アリス・カナ・バケットよ」
「?」

 二人が改めて、二つ名を口にした。
 意味を掴みかねて、ソフィアと顔を見合わせる。

「さて、二人の最初の仕事です」
 しかしナタリーの言葉に気を引き締める。アリスがにやりと笑った。

「二つ名を決めて。
 ああ、やっと言えた! ずっと決めさせる側に回りたかったのよ」

 続けてナタリーも笑う。
 その口ぶりからすると、本人は自分の二つ名に不満があるのかも知れない。

 ――でもその笑顔は『悪戯娘』だなぁ。



「『狐好き好き』キース・クロス!」
 ナタリーが案を叫ぶ。楽しそうで何よりだ。
 
 二つ名が『好き』で溢れてるなぁ。
 文字換算で八割を占めているぞ。
 
 ぺち、とエルが俺の頭を叩いた。
 ……俺じゃねえだろ。いや、そもそも叩くのもおかしくないか?
 
「『返る魔弾』キース・クロスは?」
 アリスが真面目くさった顔で案を出す。口元が笑ってるぞ?
 
 能力的な特徴を入れようとするのは分かるが……自業自得な感じが酷い。
『天に唾を吐く』系のことわざにしか聞こえなかった。
 
「うーん『独白』キース・クロス?」
 加奈が控えめに案を出した。唯一真面目に考えているかもしれない。
 
 まだマシだが……独り言が多くて悪かったな。
 わざわざ恰好良く言おうとしないでくれ。独り言が恥ずかしくなるじゃないか。
 
「『卒業試験粘り勝ち』キース……」
「ただの悪口じゃねぇか!」
 ソフィアの呟きに即答した。

 俺が一通り遊ばれた後、俺たちの二つ名が決まった。
 お前ら、遊びたかっただけだろう?

『白銀鋼』ソフィア・ターナー
『乱反射』キース・クロス



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 数日後、俺は組合に顔を出した。
 今日はナタリー、アリス、ソフィアの三人とチームを結成する日だった。
 王都の四番街を歩き、組合の窓口のある建物までやって来た。
 雑多な雰囲気は四番街の特徴だろう。正面入口のある大通りはいつも騒がしい。
 考えてみれば、騎士団の詰所と魔術師団の学舎に比べると縁がない場所だった。
 アッシュの時に王都へ初めて来た頃に入ったくらいか?
「……は」
 思わず笑ってしまう。あの時、ナタリーを連れてきたのだった。
 まさかA級冒険者になるなんて思いもしなかった。
「気持ち悪いわね。二度と笑わないで」
「……笑うこと自体は許してくれ」
 エルが嫌そうな声を出す。
 俺は独り言を呟きながら、組合の王都支部へと入っていった。
「あ、キース! ここだよー!」
 足を踏み入れるなり、ナタリーの元気な声が届いてきた。
 目を向けると、すでに三人は揃っているようだった。
 正面にある窓口から少し外れたテーブルに陣取っている。
「……すみません。遅れました」
 ちらりとソフィアを盗み見る。先日の姿が頭を過ぎった。
「いや、まだちょっと早いくらいだよ」
「あはは、ナタリーと私たちは朝からいるからね?」
 アリスが応じて、加奈が付け加える。
「じゃあ、始めますか」
 ナタリーはそう言って、切り出した。
「この瞬間をもって、この四人でパーティを結成とするよ?」
 規則などの説明を一通り終えると、ゆっくりとナタリーは俺たちを見回した。
 結成の瞬間を明確にしたいのだろう。
 全員が頷いた。すでに決定済みの内容だ。
「それじゃ、改めてよろしくね。『悪戯娘』ナタリー・クレフです」
「……私は『ダブル』アリス・カナ・バケットよ」
「?」
 二人が改めて、二つ名を口にした。
 意味を掴みかねて、ソフィアと顔を見合わせる。
「さて、二人の最初の仕事です」
 しかしナタリーの言葉に気を引き締める。アリスがにやりと笑った。
「二つ名を決めて。
 ああ、やっと言えた! ずっと決めさせる側に回りたかったのよ」
 続けてナタリーも笑う。
 その口ぶりからすると、本人は自分の二つ名に不満があるのかも知れない。
 ――でもその笑顔は『悪戯娘』だなぁ。
「『狐好き好き』キース・クロス!」
 ナタリーが案を叫ぶ。楽しそうで何よりだ。
 二つ名が『好き』で溢れてるなぁ。
 文字換算で八割を占めているぞ。
 ぺち、とエルが俺の頭を叩いた。
 ……俺じゃねえだろ。いや、そもそも叩くのもおかしくないか?
「『返る魔弾』キース・クロスは?」
 アリスが真面目くさった顔で案を出す。口元が笑ってるぞ?
 能力的な特徴を入れようとするのは分かるが……自業自得な感じが酷い。
『天に唾を吐く』系のことわざにしか聞こえなかった。
「うーん『独白』キース・クロス?」
 加奈が控えめに案を出した。唯一真面目に考えているかもしれない。
 まだマシだが……独り言が多くて悪かったな。
 わざわざ恰好良く言おうとしないでくれ。独り言が恥ずかしくなるじゃないか。
「『卒業試験粘り勝ち』キース……」
「ただの悪口じゃねぇか!」
 ソフィアの呟きに即答した。
 俺が一通り遊ばれた後、俺たちの二つ名が決まった。
 お前ら、遊びたかっただけだろう?
『白銀鋼』ソフィア・ターナー
『乱反射』キース・クロス