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第三部 36話 勧誘

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 後期の授業も中盤を過ぎた放課後。
 俺たちのチームはいつも通りに頭を抱えていた。
 学年末試験が近づいて来たからだ。

「どうしよう。遊びを加えても、賭けにしても、やる気が保てない……」
「うん……神様は不公平だと思う。やる気を平等に与えるべき」
「もう少し俺たちにやる気があればなぁ。くそ、一体どうすれば良いんだ!?」
「……やれば?」
 俺たち三人の戯言にエルが呟いた気がした。幻聴だろう。

 実技演習ではトップがほぼ確定した。しかし座学では最下位争いである。
 二位もソフィアでほぼ決まり。座学もトップクラスだった。

「ちょっと良い?」
 そのソフィアが俺を呼んだ。見れば、教室の入口に立っている。

「ああ、ちょっと待ってくれ。今、二人と勉強中で……」
「ああ、気にするな。行ってこい」
「うん、大丈夫。ゆっくりしてくると良いよ」
 俺の言葉をすぐさま二人が封じた。一見優しく見えるが……。

「そう? じゃあ、遠慮なく」
「待て待て……」
 ソフィアが歩み寄って俺の手を引いた。

「? 何を気にしてるの?」
「抜け駆けされる!」
 俺が叫ぶ。二人が急いで顔を背けた。

 ――そう。
 ――座学では最下位争いなのである。

 ソフィアが溜息を吐いた後、構わず俺を引きずっていく。
 考慮する価値なし、と言わんばかりだった。



 そうして、俺たちはいつかの空き教室へとやって来た。
 あの時はいきなり喧嘩を売られたようなものだったが。

「今日は相談があって呼んだのよ」
「? 相談?」
 首を傾げた俺に頷いて、ソフィアは続けた。

「学院を卒業した後、組合で一緒にチームを組まない?」
「チーム? 俺とソフィアが?」
「ええ。正確には四人のチームになりそうだけど」
「……あと二人は?」
 俺の言葉にソフィアが小さく笑った。

「ナタリーとアリスよ。もともと声を掛けられていたの。
 せっかくだから、あんたもどうかと思ってね」
「……なる、ほど」
 予想外の展開に呆然と呟いた。

 ああ、そうか――

 すぐに気が付いた。
 ソフィアは『アッシュ・クレフ』の遺言通り、ナタリーを守ろうとしているのだ。

 ――気が付いたなら、答えは決まっていた。

「よろしく頼むよ」
 俺が微笑むと、ソフィアは困ったように笑った。

「留年は嫌よ?」
 俺は顔を背けた。



 それから二年と少し。
 俺は卒業を控えていた。



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 後期の授業も中盤を過ぎた放課後。
 俺たちのチームはいつも通りに頭を抱えていた。
 学年末試験が近づいて来たからだ。
「どうしよう。遊びを加えても、賭けにしても、やる気が保てない……」
「うん……神様は不公平だと思う。やる気を平等に与えるべき」
「もう少し俺たちにやる気があればなぁ。くそ、一体どうすれば良いんだ!?」
「……やれば?」
 俺たち三人の戯言にエルが呟いた気がした。幻聴だろう。
 実技演習ではトップがほぼ確定した。しかし座学では最下位争いである。
 二位もソフィアでほぼ決まり。座学もトップクラスだった。
「ちょっと良い?」
 そのソフィアが俺を呼んだ。見れば、教室の入口に立っている。
「ああ、ちょっと待ってくれ。今、二人と勉強中で……」
「ああ、気にするな。行ってこい」
「うん、大丈夫。ゆっくりしてくると良いよ」
 俺の言葉をすぐさま二人が封じた。一見優しく見えるが……。
「そう? じゃあ、遠慮なく」
「待て待て……」
 ソフィアが歩み寄って俺の手を引いた。
「? 何を気にしてるの?」
「抜け駆けされる!」
 俺が叫ぶ。二人が急いで顔を背けた。
 ――そう。
 ――座学では最下位争いなのである。
 ソフィアが溜息を吐いた後、構わず俺を引きずっていく。
 考慮する価値なし、と言わんばかりだった。
 そうして、俺たちはいつかの空き教室へとやって来た。
 あの時はいきなり喧嘩を売られたようなものだったが。
「今日は相談があって呼んだのよ」
「? 相談?」
 首を傾げた俺に頷いて、ソフィアは続けた。
「学院を卒業した後、組合で一緒にチームを組まない?」
「チーム? 俺とソフィアが?」
「ええ。正確には四人のチームになりそうだけど」
「……あと二人は?」
 俺の言葉にソフィアが小さく笑った。
「ナタリーとアリスよ。もともと声を掛けられていたの。
 せっかくだから、あんたもどうかと思ってね」
「……なる、ほど」
 予想外の展開に呆然と呟いた。
 ああ、そうか――
 すぐに気が付いた。
 ソフィアは『アッシュ・クレフ』の遺言通り、ナタリーを守ろうとしているのだ。
 ――気が付いたなら、答えは決まっていた。
「よろしく頼むよ」
 俺が微笑むと、ソフィアは困ったように笑った。
「留年は嫌よ?」
 俺は顔を背けた。
 それから二年と少し。
 俺は卒業を控えていた。