第038話 リンゴとあやしいババ 後編
ー/ー「しかし、すんなり食べるねぇ」
食事が始まって程なく老婆は言う。
「そりゃ、どう見ても私たちの方がレベルが下だし、殺ろうと思えばいつでも出来たでしょ」
「それに腹ペコだし」
サーシャはそう言って、スプーンですくったシチウを口にした。
その答えに、彼女以外のマコトも含めた三人は最後の言葉が本音だな、と苦笑する。
「それで…どうして私たちの名前を知っているの?」
「私、こう見えても記憶力には自信あるの。少なくとも会ったことは一度もないはずだけど」
「勿論、わしもこの子もお主らの本名など知らなんだよ」
「実際に目の前で会うまではの」
「つまり…魔法ってこと?」
「魔法とは違うの」
「わしらは人と隔絶された世界に住んでおる」
「そこに時間や場所などは意味はなく、当然お主らの持つ記憶も同様じゃ」
「わしらがそれを望めば全てが瞬時に手に入る」
「こわっ!………ってか、じゃあ、私のスケベな記憶や想像も覗いたって事よね?」
「いや、それは望んでおらんから見てはおらんぞ」
「見てやろうか?なんなら、それをそこな真一くんに詳しく話してやっても良いぞ」
「あ、それは勘弁して下さい。お願いします」
サーシャは黄金聖闘士の如き光の速さで土下座を敢行した。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥。
「で、結局、私たちに何を望んでいるの?」
「薄々分かっておるじゃろ」
「お主には魔女の才能がある」
「つまり、現実世界から引き抜きしたいってこと?」
「そうじゃ」
「ふーん…ということは、貴女もこのお婆さんからスカウトされたの?」
サーシャは、老婆の孫娘に視線を向ける。
「流石ですね。いつ、私が孫娘で無い事に気付いたのですか?」
「いや、普通に全然似てないし。お婆さんの目は黒いし、貴方のは明らかに遺伝ではないわ」
「カラーコンタクトをしてるとしたら?」
「なるほど、その手があったか」
老婆の孫娘の答えに、サーシャはポンと手を叩きあっさりと納得してしまう。
「ふふふ。嘘ですよ」
老婆の孫娘と思われた女はそう言って、食後のティーカップに口を付けた。
「で、どうする。サーシャよ」
「え?普通に元の世界に戻して」
「それは本当の元の世界か、それとも…」
「連れ去られる前の世界よ」
サーシャはそう答えると、カップに入った紅茶をグビグビと一気飲みした。
「ふむ…本当の元の世界には未練はないようじゃが、今の世界には未練があるようじゃの」
「ならば、その未練を断ち切ってみようかのぅ………ひっひっひ、怖い怖い………じゃが、やはりお主には魔女の才能があるのぅ」
「それはどうも」
「で、どうやったら帰られるの?」
「これを食すがよい」
老婆はそう言うと、リンゴをサーシャとマコトに投げ渡す。
サーシャはそれを受け取ると、マジマジとリンゴを眺めはじめた。
「ひひひ。どうした?食べないのかい?」
意地悪そうに老婆は言う。
「いや、腐った箇所が無いか見てただけよ」
サーシャはそう言うとがぶりとリンゴにかぶりつく。
「おー、中々に美味いわね。マコっちゃんも早く食べて。さっさと帰ろ」
「そだね」
サーシャの言葉に、マコトもリンゴにかぶりついた。
そして、二人が気付いた時には、既に元の場所に戻っていた。
「あれ?いつの間に帰って来たの?」
「手に持ってたリンゴもないし、時間も…あれから経って無さそうだわ」
「そだね。今までの事が白昼夢だったかのようだね」
二人がまだその余韻に浸る中、声をかける者がいた。
「あら?そんなところで突っ立って、何をしているの二人とも」
振り返ると、そこに居たのはリリスであった。
「あ、リリスさん。ちょうど良かったわ……昼前ぶりってことで良いのよね?」
「そりゃそうでしょ。何を言ってるのかしらこの子は」
「とうとうボケたのかしら?」
リリスはサーシャに指を指しながらマコトに言う。
「あはは、気にしないで下さい」
マコトはただ苦笑いするしかなかったのであった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥
「だから、無理だと申しましたのに」
「ひひひ。じゃが、あれはわしの見立てどおり逸材じゃ」
「そうですわね。あの時の彼女の顔は、正に魔女の片鱗を見た気がします」
「しかし、彼女にはまだ多くの未練があります」
「じゃのぅ」
「どうなさるのですか?あのような事を言ってしまった以上、もしもの事があっても私達の下に来るとも思えませんが」
「いや、あの娘は賢い子じゃ。わしが画策したかそうでないかは自分で気付くじゃろう」
「お主がそうであったようにな」
「全く、おばあ様は………」
「さて、わしらはその時が来るのを楽しみに待つことにしようぞ」
「永遠に来ないかも知れませんけれどね」
「ひっひっひっひっひ」
こうして二人は、霧の中へと消えていったのであった。
食事が始まって程なく老婆は言う。
「そりゃ、どう見ても私たちの方がレベルが下だし、殺ろうと思えばいつでも出来たでしょ」
「それに腹ペコだし」
サーシャはそう言って、スプーンですくったシチウを口にした。
その答えに、彼女以外のマコトも含めた三人は最後の言葉が本音だな、と苦笑する。
「それで…どうして私たちの名前を知っているの?」
「私、こう見えても記憶力には自信あるの。少なくとも会ったことは一度もないはずだけど」
「勿論、わしもこの子もお主らの本名など知らなんだよ」
「実際に目の前で会うまではの」
「つまり…魔法ってこと?」
「魔法とは違うの」
「わしらは人と隔絶された世界に住んでおる」
「そこに時間や場所などは意味はなく、当然お主らの持つ記憶も同様じゃ」
「わしらがそれを望めば全てが瞬時に手に入る」
「こわっ!………ってか、じゃあ、私のスケベな記憶や想像も覗いたって事よね?」
「いや、それは望んでおらんから見てはおらんぞ」
「見てやろうか?なんなら、それをそこな真一くんに詳しく話してやっても良いぞ」
「あ、それは勘弁して下さい。お願いします」
サーシャは黄金聖闘士の如き光の速さで土下座を敢行した。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
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‥‥‥。
「で、結局、私たちに何を望んでいるの?」
「薄々分かっておるじゃろ」
「お主には魔女の才能がある」
「つまり、現実世界から引き抜きしたいってこと?」
「そうじゃ」
「ふーん…ということは、貴女もこのお婆さんからスカウトされたの?」
サーシャは、老婆の孫娘に視線を向ける。
「流石ですね。いつ、私が孫娘で無い事に気付いたのですか?」
「いや、普通に全然似てないし。お婆さんの目は黒いし、貴方のは明らかに遺伝ではないわ」
「カラーコンタクトをしてるとしたら?」
「なるほど、その手があったか」
老婆の孫娘の答えに、サーシャはポンと手を叩きあっさりと納得してしまう。
「ふふふ。嘘ですよ」
老婆の孫娘と思われた女はそう言って、食後のティーカップに口を付けた。
「で、どうする。サーシャよ」
「え?普通に元の世界に戻して」
「それは本当の元の世界か、それとも…」
「連れ去られる前の世界よ」
サーシャはそう答えると、カップに入った紅茶をグビグビと一気飲みした。
「ふむ…本当の元の世界には未練はないようじゃが、今の世界には未練があるようじゃの」
「ならば、その未練を断ち切ってみようかのぅ………ひっひっひ、怖い怖い………じゃが、やはりお主には魔女の才能があるのぅ」
「それはどうも」
「で、どうやったら帰られるの?」
「これを食すがよい」
老婆はそう言うと、リンゴをサーシャとマコトに投げ渡す。
サーシャはそれを受け取ると、マジマジとリンゴを眺めはじめた。
「ひひひ。どうした?食べないのかい?」
意地悪そうに老婆は言う。
「いや、腐った箇所が無いか見てただけよ」
サーシャはそう言うとがぶりとリンゴにかぶりつく。
「おー、中々に美味いわね。マコっちゃんも早く食べて。さっさと帰ろ」
「そだね」
サーシャの言葉に、マコトもリンゴにかぶりついた。
そして、二人が気付いた時には、既に元の場所に戻っていた。
「あれ?いつの間に帰って来たの?」
「手に持ってたリンゴもないし、時間も…あれから経って無さそうだわ」
「そだね。今までの事が白昼夢だったかのようだね」
二人がまだその余韻に浸る中、声をかける者がいた。
「あら?そんなところで突っ立って、何をしているの二人とも」
振り返ると、そこに居たのはリリスであった。
「あ、リリスさん。ちょうど良かったわ……昼前ぶりってことで良いのよね?」
「そりゃそうでしょ。何を言ってるのかしらこの子は」
「とうとうボケたのかしら?」
リリスはサーシャに指を指しながらマコトに言う。
「あはは、気にしないで下さい」
マコトはただ苦笑いするしかなかったのであった。
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「だから、無理だと申しましたのに」
「ひひひ。じゃが、あれはわしの見立てどおり逸材じゃ」
「そうですわね。あの時の彼女の顔は、正に魔女の片鱗を見た気がします」
「しかし、彼女にはまだ多くの未練があります」
「じゃのぅ」
「どうなさるのですか?あのような事を言ってしまった以上、もしもの事があっても私達の下に来るとも思えませんが」
「いや、あの娘は賢い子じゃ。わしが画策したかそうでないかは自分で気付くじゃろう」
「お主がそうであったようにな」
「全く、おばあ様は………」
「さて、わしらはその時が来るのを楽しみに待つことにしようぞ」
「永遠に来ないかも知れませんけれどね」
「ひっひっひっひっひ」
こうして二人は、霧の中へと消えていったのであった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「しかし、すんなり食べるねぇ」
食事が始まって程なく老婆は言う。
「そりゃ、どう見ても私たちの方がレベルが下だし、|殺《や》ろうと思えばいつでも出来たでしょ」
「それに腹ペコだし」
「それに腹ペコだし」
サーシャはそう言って、スプーンですくったシチウを口にした。
その答えに、彼女以外のマコトも含めた三人は最後の言葉が本音だな、と苦笑する。
その答えに、彼女以外のマコトも含めた三人は最後の言葉が本音だな、と苦笑する。
「それで…どうして私たちの名前を知っているの?」
「私、こう見えても記憶力には自信あるの。少なくとも会ったことは一度もないはずだけど」
「私、こう見えても記憶力には自信あるの。少なくとも会ったことは一度もないはずだけど」
「勿論、わしも|この子《・・・》もお主らの本名など知らなんだよ」
「実際に目の前で会うまではの」
「実際に目の前で会うまではの」
「つまり…魔法ってこと?」
「魔法とは違うの」
「わしらは人と隔絶された世界に住んでおる」
「そこに時間や場所などは意味はなく、当然お主らの持つ記憶も同様じゃ」
「わしらがそれを望めば全てが瞬時に手に入る」
「わしらは人と隔絶された世界に住んでおる」
「そこに時間や場所などは意味はなく、当然お主らの持つ記憶も同様じゃ」
「わしらがそれを望めば全てが瞬時に手に入る」
「こわっ!………ってか、じゃあ、私のスケベな記憶や想像も覗いたって事よね?」
「いや、それは望んでおらんから見てはおらんぞ」
「見てやろうか?なんなら、それをそこな真一くんに詳しく話してやっても良いぞ」
「見てやろうか?なんなら、それをそこな真一くんに詳しく話してやっても良いぞ」
「あ、それは勘弁して下さい。お願いします」
サーシャは|黄金聖闘士《ゴールド〇イント》の如き光の速さで土下座を敢行した。
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「で、結局、私たちに何を望んでいるの?」
「薄々分かっておるじゃろ」
「お主には魔女の才能がある」
「お主には魔女の才能がある」
「つまり、現実世界から|引き抜き《スカウト》したいってこと?」
「そうじゃ」
「ふーん…ということは、|貴女《あなた》もこのお婆さんからスカウトされたの?」
サーシャは、老婆の孫娘に視線を向ける。
「流石ですね。いつ、私が孫娘で無い事に気付いたのですか?」
「いや、普通に全然似てないし。お婆さんの目は黒いし、貴方のは明らかに遺伝ではないわ」
「カラーコンタクトをしてるとしたら?」
「なるほど、その手があったか」
老婆の孫娘の答えに、サーシャはポンと手を叩きあっさりと納得してしまう。
「ふふふ。嘘ですよ」
老婆の孫娘と思われた女はそう言って、食後のティーカップに口を付けた。
「で、どうする。サーシャよ」
「え?普通に元の世界に戻して」
「それは本当の元の世界か、それとも…」
「連れ去られる前の世界よ」
サーシャはそう答えると、カップに入った紅茶をグビグビと一気飲みした。
「ふむ…本当の元の世界には未練はないようじゃが、今の世界には未練があるようじゃの」
「ならば、その未練を断ち切ってみようかのぅ………ひっひっひ、怖い怖い………じゃが、やはりお主には魔女の才能があるのぅ」
「ならば、その未練を断ち切ってみようかのぅ………ひっひっひ、怖い怖い………じゃが、やはりお主には魔女の才能があるのぅ」
「それはどうも」
「で、どうやったら帰られるの?」
「で、どうやったら帰られるの?」
「これを食すがよい」
老婆はそう言うと、リンゴをサーシャとマコトに投げ渡す。
サーシャはそれを受け取ると、マジマジとリンゴを眺めはじめた。
サーシャはそれを受け取ると、マジマジとリンゴを眺めはじめた。
「ひひひ。どうした?食べないのかい?」
意地悪そうに老婆は言う。
「いや、腐った箇所が無いか見てただけよ」
サーシャはそう言うとがぶりとリンゴにかぶりつく。
「おー、中々に美味いわね。マコっちゃんも早く食べて。さっさと帰ろ」
「そだね」
サーシャの言葉に、マコトもリンゴにかぶりついた。
そして、二人が気付いた時には、既に元の場所に戻っていた。
「あれ?いつの間に帰って来たの?」
「手に持ってたリンゴもないし、時間も…あれから経って無さそうだわ」
「手に持ってたリンゴもないし、時間も…あれから経って無さそうだわ」
「そだね。今までの事が白昼夢だったかのようだね」
二人がまだその余韻に浸る中、声をかける者がいた。
「あら?そんなところで突っ立って、何をしているの二人とも」
振り返ると、そこに居たのはリリスであった。
「あ、リリスさん。ちょうど良かったわ……昼前ぶりってことで良いのよね?」
「そりゃそうでしょ。何を言ってるのかしらこの子は」
「とうとうボケたのかしら?」
「とうとうボケたのかしら?」
リリスはサーシャに指を指しながらマコトに言う。
「あはは、気にしないで下さい」
マコトはただ苦笑いするしかなかったのであった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
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「だから、無理だと申しましたのに」
「ひひひ。じゃが、あれはわしの見立てどおり逸材じゃ」
「そうですわね。あの時の彼女の顔は、正に魔女の片鱗を見た気がします」
「しかし、彼女にはまだ多くの未練があります」
「しかし、彼女にはまだ多くの未練があります」
「じゃのぅ」
「どうなさるのですか?あのような事を言ってしまった以上、もしもの事があっても私達の下に来るとも思えませんが」
「いや、あの娘は賢い子じゃ。わしが画策したかそうでないかは自分で気付くじゃろう」
「お主がそうであったようにな」
「お主がそうであったようにな」
「全く、おばあ様は………」
「さて、わしらはその時が来るのを楽しみに待つことにしようぞ」
「永遠に来ないかも知れませんけれどね」
「ひっひっひっひっひ」
こうして二人は、霧の中へと消えていったのであった。