第4話 荘園2
ー/ー
虫下し
ブラジリアンワックスが終わって、清潔な胸当て、腰布、チェニックを着せられた。別の部屋に連れていかれた。12畳くらいのダイニングルームだった。ムラーが着席していて、ムラーの横にヴィーナスと一緒に座らせられた。ムラーが酒瓶から緑色の酒をガラス製のゴブレットについで私たちに渡した。「これを飲め」と言われたが、匂いを嗅いだらかなり強い酒のようだ。「何も食べてないのよ。空きっ腹にこんな強いお酒は無理よ」
「空きっ腹に飲まないとダメなんだよ。これはお前の時代で言うアブサンという酒だ。ニガヨモギ、ウイキョウ、アニス、コリアンダー、ミント、ジュニパー、甘草の根、レモンバームが混ぜてあるリキュールだ。ニガヨモギは虫下しになる。入浴してムダ毛処理をしたんで、シラミなんかはいなくなるが、腹の中は別だ。回虫やサナダムシを追い出さないと不健康になるからな」と言われた。一気に飲めというので、私もヴィーナスも我慢して飲んだ。それから、パン、オートミール、卵、チーズの軽い食事を出された。ガツガツと食べた。
食事が終わって、ジュリアがねっとりした油のような液体をグラスで持ってきた。これも飲めと言われる。「変な匂いがする!これは何なの?」「ひまし油だ。アブサンを飲んで飯を食ったらひまし油で腹の中をすっからかんにするんだ。下剤だよ。クソと一緒に寄生虫も出てくる」
十数分するとお腹がゴロゴロしてきた。「トイレはこっちよ」とソフィアに連れて行ってもらった。ちゃんと個室のトイレブースだった。便器も21世紀の洋風トイレのようで、水タンクのついている水洗式だ。
便器に座ったがソフィアが出ていかない。「ソフィア!出てって!」と言うと「ダメよ。どの寄生虫が出たのか確認するの」と言う。モジモジしたが我慢できなかった。たくさん出た。肛門のあたりがモゾモゾする。ソフィアが壁付きのホースの蛇口を捻ってお尻を洗ってくれる。紀元前のウォシュレット?
ソフィアが便器を覗き込む。さっきはお尻の穴を見られて、今度は便器の中身を見られる。これって何なの?「ふ~ん、回虫はいるけど、サナダムシはいないようだけど、一週間様子をみないと。サナダムシは長いのは引っ張らないと出てこないし、節がお腹の中に残るとまた再生するからね」と言う。
私も便器を覗き込んだ。20センチくらいの白いミミズのような虫が十数匹、水の中でのたくっている。これが回虫?ゲェ~、これが私のお腹に!「朝昼晩の食事で、アブサンとひまし油でクソすれば、一週間でお腹の中がキレイになるよ」とソフィアが言う。私もこんなものをお腹の中に飼っておきたくない。なんて不潔な時代なんだろう。
トイレは一回で終わらなかった。何が何匹でたか報告するんだよ、と言われて、二回目からはソフィアはついてこなかった。良かった、良かった。いや、良くない。二回目、三回目は数十匹出た!一回目よりももっと出た!一回目は大腸に巣食っていた回虫で、二回目、三回目は小腸に巣食っていた回虫ということか。これは成虫だから、卵も出たということ?小さい頃の回虫検査を思い出した。粘着フィルムを肛門周りに貼り付けて保健の先生に提出した覚えがある。ソフィアの言うように一週間は虫下しをしないといけないようだ。
お腹の中のものが全部出たようだ。ゴロゴロが収まった。ソフィアがやってくれたように壁付きのホースの蛇口を捻ってお尻を洗った。21世紀の給水くらいの水圧があって、肛門周りをキレイに洗い流すことができる。紀元前にこんな給水システムがあるのか、と不思議になった。大便器も陶器でできていて、洗い落とし式(ポットン式)ではなく、下水管から臭気が漏れないようにトラップで封水ができる仕組みになっている。便座はプラスチックではなくニスを塗った白木づくりだ。さすがにトイレットペーパーはないが、水圧で洗い流せたので、自然に乾くのを待てば良いのか。紀元前の技術じゃないわね、と思った。
隣のブースからヴィーナスが声を上げる。「お姉様!このトイレの使い方わかりませんわ。お姉様はどうされているの?」確かにヴィーナスは初めて使うのだからわからないだろう。「今行くからブースの扉を開けて」と答えた。
ヴィーナスにお尻の洗い方、大便器のフラッシュの仕方を教えた。ヴィーナスも私と同じくらい寄生虫が出たようだ。「お姉様、覗き込まないでください」と言われた。「ヴィーナス、私も同じくらい虫が出たのよ」「気持ち悪いですわね」「あまりいい気分じゃないけど、一週間でお腹の中がキレイになるんだから我慢しないと」
正体
ダイニングルームに戻るとムラーが酒を飲みながら待っていた。「いっぱいでたか?」と私に聞く。「女性に向かってそんなことを聞くものじゃないわ!」「女性とか男性とかの概念がよくわからんが、男性はその手の恥ずかしい話を女性にしてはいけない、ということだな。まあ、いいや。今日はこれでお仕舞いだ。もう今日は眠れ」
ムラーは私とヴィーナスを寝室に案内してくれた。寝室は殺風景だった。床、壁、天井はすべて白いタイル張りだった。病院の手術室のようだ。寄生虫の卵を発見できてすぐ清掃ができるようにしてあるのだそうだ。だから、カーペットなどの内装はない。キングサイズのベッドがひとつだけ。硬くプレスしてある乾いた藁を麻布で包んである代物。煎餅布団みたいなものだった。それに薄いウールの掛け布団。木のテーブルと三脚の椅子。
「一週間の我慢だ。寝るだけなら問題はないだろう?」とムラー。
奴隷市場からここに来るまで、妹(?)のヴィーナスは口数が少なかった。海賊船から降ろされて奴隷商人に売られて、ムラーに買われるという出来事が次々と起こったのだ。アルファから事前にムラーのことを教えられた私とは違う。
「お姉様」ヴィーナスが私の顔をまじまじと見た。「お姉様はこのムラーさんという方と顔見知りなんですか?そんなことはありませんわね。私とお姉様はいつも一緒なのですから。では、なぜ、彼と顔見知りのような会話ができるのですか?お姉様は、お姉様に思えません。男性は嫌いじゃなかったんですか?男性とお話などしたことがなかったでしょう?まるで、人が違ってしまったようです」とアディゲ語で私に言う。ちなみに、ムラーやソフィア、ジュリアと私たちの会話はフェニキア語とギリシャ語だった。ラタキアにアディゲ語がわかる人間がいるとは思わなかったので、ヴィーナスは私たちの故郷の言葉を使ったのだ。
私はどう説明しようと悩んでムラーを見た。すると「アルテミスと一番近しいヴィーナスにはこれまでのことを全て知っておいて貰ったほうがいいだろう」と私とヴィーナスを見てアディゲ語で答えた。ヴィーナスは彼が故郷の言葉がわかるので驚いたが、知性体のプローブだ、なんでも知っているのだろう。
私がニューヨークのタイムズスクエアで射殺された場面から説明しようとしたがムラーに遮られた。「そんな面倒くさい話を言葉で説明すると何時間かかるかわかんねえだろ。記憶域のデータ転送をすればいいんだよ」と言う。え?何?「アルテミス、ヴィーナスと額をつき合わせてみろ」とヴィーナスとおでこを合わせられた。「アルテミス、ヴィーナスに説明したいお前の記憶をイメージしてみろ。そうそう。それで、ヴィーナスの脳の長期記憶域にそれをコピーして転送するイメージをする」
ムラーの言う通りにしてみた。うまくいったのかわからない。だが、ヴィーナスの目が見開いて驚いている。
「え?え?え?何?何なの?二千年の未来?日本?ニューヨーク?ピンカートン法律事務所?暗殺?超新星爆発?純粋知性体?それのプローブ?着陸船?・・・わ、わからないわ・・・」
「ヴィーナス、少しずつ理解すれば良い。わからない単語や概念はアルテミスに聞けば良い」
「え~、つまり、ムラーさんとお姉様は神がかったということ?人間じゃなくなったの?」
「いや、ムラーもアルテミスもここに」と彼が額を指で叩いた。「いる。消えてなくなったわけじゃない。ムラーは俺と一緒にいる。アルテミスも同じだ。絵美と一緒にいる。そうだな、例えば、ヘラクレスを知っているな?半神半人だ。人間の体に神が宿っているが、神じゃない。人間の体の限界以上には能力は発揮できないが、普通の人間じゃない。それみたいなものだ。元は知性体というお前からすればバケモノだが、バケモノじゃなくなった人間ということだ。まあ、今日はゆっくり休め」
ムラーが寝室から出ていった。ヴィーナスが私に「お姉様・・・というべきか、お姉様はまだあなたの中にいるの?いなくなってしまったんじゃないの?信じられない・・・」
「そうよね。信じられないのも無理はないかも・・・う~ん、どう証明すれば良いかな?・・・あ!ヴィーナスとアルテミスだけが知っている秘密があるでしょう?アレよ、アレ。アレは恥ずかしい話だけど、それだけ秘密ということよね?
「アレってアレ?」とヴィーナスが顔を赤らめた。
「そうそう。海賊船に三週間も監禁されていたでしょう?あなたも私もかなり溜まってるわよね?だったら、今晩、アレをしない?」
「お姉様といつもしていたアレのこと?」
アディゲ族の族長家は、代々、娘を神殿に差し出していて、その娘は神殿巫女の長になった。その他の有力者の家の娘は長の侍女になり、下級の家の娘は神殿巫女となった。巫女の長と数人の侍女は生涯処女を守らなければならなかった。その他の巫女は、神殿の神託を受ける請願者に対して、宗教上の儀式として神聖なまぐわいの儀式を執り行った。彼女らは儀式の前にオピウム(阿片)を神官から処方された。神聖娼婦がまぐわいの果の悦楽の際に発する言葉を巫女の長が神託としてまぐわいの終わった請願者に下賜した。
アルテミスとヴィーナスは一卵性双生児であるため、族長はためらったが、二人共巫女の長として差し出した。彼女らの他に姉妹が五人いたのと、オリエント世界ではあまり双子が好まれなかったためだった。
彼女たちは、生涯処女を守り続け、神殿巫女と請願者のまぐわいを毎回見なければいけない。12歳で巫女の長となったあと、17歳までアルテミスとヴィーナスは神殿で男女のまぐわいを見続けた。少女でも性欲はある。神殿の部屋で同衾していた二人は、抱き合って胸や腰を擦り付け合ったり互いを愛撫したりすると快感が得られることを発見した。
私とヴィーナスはチェニックを脱いでベッドに横になった。「以前のお姉様じゃなくなったのよね?」と言う。
「でも、あなたが私の妹なのに変わりはないわ」
「なんとなく違和感があるんだけど」
「そうかしら?でも、あなたの体のこんなところを知っているのよ、私は?」アルテミスの記憶をさぐった。私は腰布の脇からヴィーナスのあそこに触れた。ビクッとするヴィーナス。すぐ濡れるのはわかっている。中指をゆっくりとあそこに挿れた。指を曲げて粘膜を擦った。「あなたの好きなのはここでしょ?」
「あ!あ!お、お姉様!」
「ほぉら、あなたの身体のことを知っているのは、私、アルテミスだけでしょ?」
「そ、そうです。お姉様。そ、そこ、弱い・・・」
「もう私を疑わないわよね?」
「ハ、ハイ・・・ダメ、そこ!」
疑いは晴れたようだ。しかし、アルテミスの記憶をまだ全て探っていなかった。アルテミスのことをもっと知らないと。と、思っていると、ヴィーナスに攻められた。あ!ダメ、そこ!
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《《虫下し》》
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十数分するとお腹がゴロゴロしてきた。「トイレはこっちよ」とソフィアに連れて行ってもらった。ちゃんと個室のトイレブースだった。便器も21世紀の洋風トイレのようで、水タンクのついている水洗式だ。
便器に座ったがソフィアが出ていかない。「ソフィア!出てって!」と言うと「ダメよ。どの寄生虫が出たのか確認するの」と言う。モジモジしたが我慢できなかった。たくさん出た。肛門のあたりがモゾモゾする。ソフィアが壁付きのホースの蛇口を捻ってお尻を洗ってくれる。紀元前のウォシュレット?
ソフィアが便器を覗き込む。さっきはお尻の穴を見られて、今度は便器の中身を見られる。これって何なの?「ふ~ん、回虫はいるけど、サナダムシはいないようだけど、一週間様子をみないと。サナダムシは長いのは引っ張らないと出てこないし、節がお腹の中に残るとまた再生するからね」と言う。
私も便器を覗き込んだ。20センチくらいの白いミミズのような虫が十数匹、水の中でのたくっている。これが回虫?ゲェ~、これが私のお腹に!「朝昼晩の食事で、アブサンとひまし油でクソすれば、一週間でお腹の中がキレイになるよ」とソフィアが言う。私もこんなものをお腹の中に飼っておきたくない。なんて不潔な時代なんだろう。
トイレは一回で終わらなかった。何が何匹でたか報告するんだよ、と言われて、二回目からはソフィアはついてこなかった。良かった、良かった。いや、良くない。二回目、三回目は数十匹出た!一回目よりももっと出た!一回目は大腸に巣食っていた回虫で、二回目、三回目は小腸に巣食っていた回虫ということか。これは成虫だから、卵も出たということ?小さい頃の回虫検査を思い出した。粘着フィルムを肛門周りに貼り付けて保健の先生に提出した覚えがある。ソフィアの言うように一週間は虫下しをしないといけないようだ。
お腹の中のものが全部出たようだ。ゴロゴロが収まった。ソフィアがやってくれたように壁付きのホースの蛇口を捻ってお尻を洗った。21世紀の給水くらいの水圧があって、肛門周りをキレイに洗い流すことができる。紀元前にこんな給水システムがあるのか、と不思議になった。大便器も陶器でできていて、洗い落とし式(ポットン式)ではなく、下水管から臭気が漏れないようにトラップで封水ができる仕組みになっている。便座はプラスチックではなくニスを塗った白木づくりだ。さすがにトイレットペーパーはないが、水圧で洗い流せたので、自然に乾くのを待てば良いのか。紀元前の技術じゃないわね、と思った。
隣のブースからヴィーナスが声を上げる。「お姉様!このトイレの使い方わかりませんわ。お姉様はどうされているの?」確かにヴィーナスは初めて使うのだからわからないだろう。「今行くからブースの扉を開けて」と答えた。
ヴィーナスにお尻の洗い方、大便器のフラッシュの仕方を教えた。ヴィーナスも私と同じくらい寄生虫が出たようだ。「お姉様、覗き込まないでください」と言われた。「ヴィーナス、私も同じくらい虫が出たのよ」「気持ち悪いですわね」「あまりいい気分じゃないけど、一週間でお腹の中がキレイになるんだから我慢しないと」
《《正体》》
ダイニングルームに戻るとムラーが酒を飲みながら待っていた。「いっぱいでたか?」と私に聞く。「女性に向かってそんなことを聞くものじゃないわ!」「女性とか男性とかの概念がよくわからんが、男性はその手の恥ずかしい話を女性にしてはいけない、ということだな。まあ、いいや。今日はこれでお仕舞いだ。もう今日は眠れ」
ムラーは私とヴィーナスを寝室に案内してくれた。寝室は殺風景だった。床、壁、天井はすべて白いタイル張りだった。病院の手術室のようだ。寄生虫の卵を発見できてすぐ清掃ができるようにしてあるのだそうだ。だから、カーペットなどの内装はない。キングサイズのベッドがひとつだけ。硬くプレスしてある乾いた藁を麻布で包んである代物。煎餅布団みたいなものだった。それに薄いウールの掛け布団。木のテーブルと三脚の椅子。
「一週間の我慢だ。寝るだけなら問題はないだろう?」とムラー。
奴隷市場からここに来るまで、妹(?)のヴィーナスは口数が少なかった。海賊船から降ろされて奴隷商人に売られて、ムラーに買われるという出来事が次々と起こったのだ。アルファから事前にムラーのことを教えられた私とは違う。
「お姉様」ヴィーナスが私の顔をまじまじと見た。「お姉様はこのムラーさんという方と顔見知りなんですか?そんなことはありませんわね。私とお姉様はいつも一緒なのですから。では、なぜ、彼と顔見知りのような会話ができるのですか?お姉様は、お姉様に思えません。男性は嫌いじゃなかったんですか?男性とお話などしたことがなかったでしょう?まるで、人が違ってしまったようです」とアディゲ語で私に言う。ちなみに、ムラーやソフィア、ジュリアと私たちの会話はフェニキア語とギリシャ語だった。ラタキアにアディゲ語がわかる人間がいるとは思わなかったので、ヴィーナスは私たちの故郷の言葉を使ったのだ。
私はどう説明しようと悩んでムラーを見た。すると「アルテミスと一番近しいヴィーナスにはこれまでのことを全て知っておいて貰ったほうがいいだろう」と私とヴィーナスを見てアディゲ語で答えた。ヴィーナスは彼が故郷の言葉がわかるので驚いたが、知性体のプローブだ、なんでも知っているのだろう。
私がニューヨークのタイムズスクエアで射殺された場面から説明しようとしたがムラーに遮られた。「そんな面倒くさい話を言葉で説明すると何時間かかるかわかんねえだろ。記憶域のデータ転送をすればいいんだよ」と言う。え?何?「アルテミス、ヴィーナスと額をつき合わせてみろ」とヴィーナスとおでこを合わせられた。「アルテミス、ヴィーナスに説明したいお前の記憶をイメージしてみろ。そうそう。それで、ヴィーナスの脳の長期記憶域にそれをコピーして転送するイメージをする」
ムラーの言う通りにしてみた。うまくいったのかわからない。だが、ヴィーナスの目が見開いて驚いている。
「え?え?え?何?何なの?二千年の未来?日本?ニューヨーク?ピンカートン法律事務所?暗殺?超新星爆発?純粋知性体?それのプローブ?着陸船?・・・わ、わからないわ・・・」
「ヴィーナス、少しずつ理解すれば良い。わからない単語や概念はアルテミスに聞けば良い」
「え~、つまり、ムラーさんとお姉様は神がかったということ?人間じゃなくなったの?」
「いや、ムラーもアルテミスもここに」と彼が額を指で叩いた。「いる。消えてなくなったわけじゃない。ムラーは俺と一緒にいる。アルテミスも同じだ。絵美と一緒にいる。そうだな、例えば、ヘラクレスを知っているな?半神半人だ。人間の体に神が宿っているが、神じゃない。人間の体の限界以上には能力は発揮できないが、普通の人間じゃない。それみたいなものだ。元は知性体というお前からすればバケモノだが、バケモノじゃなくなった人間ということだ。まあ、今日はゆっくり休め」
ムラーが寝室から出ていった。ヴィーナスが私に「お姉様・・・というべきか、お姉様はまだあなたの中にいるの?いなくなってしまったんじゃないの?信じられない・・・」
「そうよね。信じられないのも無理はないかも・・・う~ん、どう証明すれば良いかな?・・・あ!ヴィーナスとアルテミスだけが知っている秘密があるでしょう?アレよ、アレ。アレは恥ずかしい話だけど、それだけ秘密ということよね?
「アレってアレ?」とヴィーナスが顔を赤らめた。
「そうそう。海賊船に三週間も監禁されていたでしょう?あなたも私もかなり溜まってるわよね?だったら、今晩、アレをしない?」
「お姉様といつもしていたアレのこと?」
アディゲ族の族長家は、代々、娘を神殿に差し出していて、その娘は神殿巫女の長になった。その他の有力者の家の娘は長の侍女になり、下級の家の娘は神殿巫女となった。巫女の長と数人の侍女は生涯処女を守らなければならなかった。その他の巫女は、神殿の神託を受ける請願者に対して、宗教上の儀式として神聖なまぐわいの儀式を執り行った。彼女らは儀式の前にオピウム(阿片)を神官から処方された。神聖娼婦がまぐわいの果の悦楽の際に発する言葉を巫女の長が神託としてまぐわいの終わった請願者に下賜した。
アルテミスとヴィーナスは一卵性双生児であるため、族長はためらったが、二人共巫女の長として差し出した。彼女らの他に姉妹が五人いたのと、オリエント世界ではあまり双子が好まれなかったためだった。
彼女たちは、生涯処女を守り続け、神殿巫女と請願者のまぐわいを毎回見なければいけない。12歳で巫女の長となったあと、17歳までアルテミスとヴィーナスは神殿で男女のまぐわいを見続けた。少女でも性欲はある。神殿の部屋で同衾していた二人は、抱き合って胸や腰を擦り付け合ったり互いを愛撫したりすると快感が得られることを発見した。
私とヴィーナスはチェニックを脱いでベッドに横になった。「以前のお姉様じゃなくなったのよね?」と言う。
「でも、あなたが私の妹なのに変わりはないわ」
「なんとなく違和感があるんだけど」
「そうかしら?でも、あなたの体のこんなところを知っているのよ、私は?」アルテミスの記憶をさぐった。私は腰布の脇からヴィーナスのあそこに触れた。ビクッとするヴィーナス。すぐ濡れるのはわかっている。中指をゆっくりとあそこに挿れた。指を曲げて粘膜を擦った。「あなたの好きなのはここでしょ?」
「あ!あ!お、お姉様!」
「ほぉら、あなたの身体のことを知っているのは、私、アルテミスだけでしょ?」
「そ、そうです。お姉様。そ、そこ、弱い・・・」
「もう私を疑わないわよね?」
「ハ、ハイ・・・ダメ、そこ!」
疑いは晴れたようだ。しかし、アルテミスの記憶をまだ全て探っていなかった。アルテミスのことをもっと知らないと。と、思っていると、ヴィーナスに攻められた。あ!ダメ、そこ!