第三部 22話 驚異の断片的記憶力による冤罪事件の濡れ衣
ー/ー 翌日は朝から村を歩いて回ることになった。
どうやらソフィアもこの村に来たことはないらしい。
「へぇ……」
なんて呟きながら楽しそうに見回している。
ナタリーアリスはその様子を楽しそうに眺めていた。
ちなみにセシルはまだ寝ている。
「あれ? どうしたんだろ?」
広場までやってくると、ナタリーが声を上げた。
見れば、人だかりができていた。
小さな村なのでそこまで大きなものではないが。
野次馬丸出しで、俺達も広場に入っていく。
「……何やってんだ、あの人」
俺が誰にも聞こえないように呟く。
「あ、どうもぉ。何か買っていきませんかぁ?」
神出鬼没の行商人が声を掛けてきやがった。
人相の悪い顔つきに、人の好い笑み。
恰幅の良い体格を揺らしていた。
「ん? んん?」
俺が反応に困っていると、アリスがずいと一歩踏み出した。
「な、なんですか?」
「この人……見たことがある? いいえ、声を聞いたことがある?」
アリスはじろじろと行商人を観察する。
そうか。昔、家出したアリスを見つけたのはこの人だった。
あの時は寝惚けていたはずだけど……。
「確か、言っていたのは――」
「む、無理に思い出す必要はないのではありませんか?」
アリスが頭を押さえて思い出そうとする。
「おい、こっちに来い!
手間取らせるなよ……急いでるんだから。
こら、抵抗するな! 怪我をしたくはないだろう? ぐへへ」
アリスが暗唱して見せる。確かに言っていた気がする。
口調も真似ているが、こっちは完全にイメージだろう。
「お嬢ちゃん……こんなところで寝たら危ないよ? よ、良かったら家に来ない?
うん、そうだ、それが良いよ! 暖かいベッドもあるし、甘いお菓子もある。
すぐにパパとママのところへ連れて行ってあげるからさ。ね? ぐへへ」
自分でも意味が分からないが、それは俺だった気がする。
ただし、間違ってもそんな表情はしていなかった。
記憶力は良いのだろうが、随分と作為的な思い出し方じゃないか?
それと、台詞は完璧だと思うから言い辛いが「ぐへへ」は誰も言っていない。
「え? じゃあ、この人は人攫い……?」
ナタリーが呟いた。アリスの記憶力を信用しているのだろう。
「……」
ソフィアが軽蔑するような視線を行商人に向けた。
「んー……何か、誤解があるようですねぇ……ね?」
そう言って行商人は俺を見た。俺を見るな。
助け船なんて出せるはずないだろうが。
初対面の設定じゃねーのかよ。
俺が目を逸らすと、行商人は目を泳がせながら口を開く。
「あれぇ? ひょっとして……魔術師団長の娘さんだったり?」
「え、ええ。そうよ?」
「あぁー! やっぱりぃ! 以前、魔術師団長から声を掛けられたんですよ。
娘を見なかったかって。あの時は『アッシュ・クレフ』さんに預けたのです」
「確かにパパが行商人に家出した私の行方を聞いたって……」
「なら、さっきの言葉はアッシュさんですよぉ」
行商人は巧みに犯人を誘導し始めた。
「……確かに、そうだったかも?」
アリスが首を傾げる。
台詞の内容はともかく、誰が言っていたかは自信がないのだろう。
「私は数回会った程度ですが……ほら。
アッシュさんはそういうことを言いそうじゃないですかぁ?」
行商人の言葉に、全員が首を傾げた。
――否定しろ!
「何と言うか、誤解されやすいことを言うというか」
ナタリーとリックが頷き始めた。
――否定しろぉ!?
「実際に悪い事はしないけれど、言うだけなら何でも言いそうというか」
とうとう全員が深く頷いた。
――その失礼な嘘吐き野郎をひっ捕らえろッ!
俺は心の中で叫び続けた。
どうやらソフィアもこの村に来たことはないらしい。
「へぇ……」
なんて呟きながら楽しそうに見回している。
ナタリーアリスはその様子を楽しそうに眺めていた。
ちなみにセシルはまだ寝ている。
「あれ? どうしたんだろ?」
広場までやってくると、ナタリーが声を上げた。
見れば、人だかりができていた。
小さな村なのでそこまで大きなものではないが。
野次馬丸出しで、俺達も広場に入っていく。
「……何やってんだ、あの人」
俺が誰にも聞こえないように呟く。
「あ、どうもぉ。何か買っていきませんかぁ?」
神出鬼没の行商人が声を掛けてきやがった。
人相の悪い顔つきに、人の好い笑み。
恰幅の良い体格を揺らしていた。
「ん? んん?」
俺が反応に困っていると、アリスがずいと一歩踏み出した。
「な、なんですか?」
「この人……見たことがある? いいえ、声を聞いたことがある?」
アリスはじろじろと行商人を観察する。
そうか。昔、家出したアリスを見つけたのはこの人だった。
あの時は寝惚けていたはずだけど……。
「確か、言っていたのは――」
「む、無理に思い出す必要はないのではありませんか?」
アリスが頭を押さえて思い出そうとする。
「おい、こっちに来い!
手間取らせるなよ……急いでるんだから。
こら、抵抗するな! 怪我をしたくはないだろう? ぐへへ」
アリスが暗唱して見せる。確かに言っていた気がする。
口調も真似ているが、こっちは完全にイメージだろう。
「お嬢ちゃん……こんなところで寝たら危ないよ? よ、良かったら家に来ない?
うん、そうだ、それが良いよ! 暖かいベッドもあるし、甘いお菓子もある。
すぐにパパとママのところへ連れて行ってあげるからさ。ね? ぐへへ」
自分でも意味が分からないが、それは俺だった気がする。
ただし、間違ってもそんな表情はしていなかった。
記憶力は良いのだろうが、随分と作為的な思い出し方じゃないか?
それと、台詞は完璧だと思うから言い辛いが「ぐへへ」は誰も言っていない。
「え? じゃあ、この人は人攫い……?」
ナタリーが呟いた。アリスの記憶力を信用しているのだろう。
「……」
ソフィアが軽蔑するような視線を行商人に向けた。
「んー……何か、誤解があるようですねぇ……ね?」
そう言って行商人は俺を見た。俺を見るな。
助け船なんて出せるはずないだろうが。
初対面の設定じゃねーのかよ。
俺が目を逸らすと、行商人は目を泳がせながら口を開く。
「あれぇ? ひょっとして……魔術師団長の娘さんだったり?」
「え、ええ。そうよ?」
「あぁー! やっぱりぃ! 以前、魔術師団長から声を掛けられたんですよ。
娘を見なかったかって。あの時は『アッシュ・クレフ』さんに預けたのです」
「確かにパパが行商人に家出した私の行方を聞いたって……」
「なら、さっきの言葉はアッシュさんですよぉ」
行商人は巧みに犯人を誘導し始めた。
「……確かに、そうだったかも?」
アリスが首を傾げる。
台詞の内容はともかく、誰が言っていたかは自信がないのだろう。
「私は数回会った程度ですが……ほら。
アッシュさんはそういうことを言いそうじゃないですかぁ?」
行商人の言葉に、全員が首を傾げた。
――否定しろ!
「何と言うか、誤解されやすいことを言うというか」
ナタリーとリックが頷き始めた。
――否定しろぉ!?
「実際に悪い事はしないけれど、言うだけなら何でも言いそうというか」
とうとう全員が深く頷いた。
――その失礼な嘘吐き野郎をひっ捕らえろッ!
俺は心の中で叫び続けた。
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