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第三部 18話 人間らしい感情

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 追いつくと、男達が倒れていた。すでに出番はないらしい。
 人数がやたらと増えたところを見ると、男は囮だったのだろう。

 もちろん数だけでソフィアの相手にはならないだろう。
 全員を鎖で無力化している張本人は男達の中心で俯いていた。

「やっぱり――追いかけて来てくれるのね?」
「? 当然だろう?」
 俺の言葉で一瞬だけソフィアは顔を歪ませる。

「そうね。あんたはそうでしょうね」
「? 一体どういう意味……」
「きっと、嫉妬からくる八つ当たりよ」
 ソフィアが皮肉気に呟いた。初めて見る表情だった。

 俺の返事も待たずに畳みかける。

「誰かを傷つけることを楽しいとは思わないでしょう?
 誰かが傷つくことを悲しいと思えるでしょう?」

「人間らしい感情があるのでしょう?
 なら、人間らしく振舞えば良いじゃない」

「嬉しい時に、楽しい時に、素直に笑いなさいよ。
 悲しい時に、苦しい時に、素直に泣きなさいよ」

「あんたにはそれが出来るのだから。
 誰よりも人間らしい感情を持ってる」

「欲しくて仕方がないけれど、どうしても手に入らないものを目の前で捨てられている気分になるの」

 ソフィアは目元に薄く涙さえ浮かべて俺を睨んだ。

「……」
 その様子をみて、兄さんが俺を嫌っていた理由がやっと分かった気がした。

 俺が兄さんの能力に嫉妬して、その扱い方を理解できなかったように。
 兄さんは俺の感情に嫉妬して、その扱い方を嫌悪していたんだ。

「意識してやっているわけではないから、出来るかどうか分からないけど……」
 俺は慎重に言葉を選んで一言ずつ口にする。

「約束する。全力で直すよ」
 兄さんは生まれ変わって、人を殺さなくなった。

 兄弟の関係を直したいと思うのなら――俺も変わるべきだろう。



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 追いつくと、男達が倒れていた。すでに出番はないらしい。
 人数がやたらと増えたところを見ると、男は囮だったのだろう。
 もちろん数だけでソフィアの相手にはならないだろう。
 全員を鎖で無力化している張本人は男達の中心で俯いていた。
「やっぱり――追いかけて来てくれるのね?」
「? 当然だろう?」
 俺の言葉で一瞬だけソフィアは顔を歪ませる。
「そうね。あんたはそうでしょうね」
「? 一体どういう意味……」
「きっと、嫉妬からくる八つ当たりよ」
 ソフィアが皮肉気に呟いた。初めて見る表情だった。
 俺の返事も待たずに畳みかける。
「誰かを傷つけることを楽しいとは思わないでしょう?
 誰かが傷つくことを悲しいと思えるでしょう?」
「人間らしい感情があるのでしょう?
 なら、人間らしく振舞えば良いじゃない」
「嬉しい時に、楽しい時に、素直に笑いなさいよ。
 悲しい時に、苦しい時に、素直に泣きなさいよ」
「あんたにはそれが出来るのだから。
 誰よりも人間らしい感情を持ってる」
「欲しくて仕方がないけれど、どうしても手に入らないものを目の前で捨てられている気分になるの」
 ソフィアは目元に薄く涙さえ浮かべて俺を睨んだ。
「……」
 その様子をみて、兄さんが俺を嫌っていた理由がやっと分かった気がした。
 俺が兄さんの能力に嫉妬して、その扱い方を理解できなかったように。
 兄さんは俺の感情に嫉妬して、その扱い方を嫌悪していたんだ。
「意識してやっているわけではないから、出来るかどうか分からないけど……」
 俺は慎重に言葉を選んで一言ずつ口にする。
「約束する。全力で直すよ」
 兄さんは生まれ変わって、人を殺さなくなった。
 兄弟の関係を直したいと思うのなら――俺も変わるべきだろう。