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お父さんのタイムマシン

ー/ー



 (なつ)(やす)。今日(きょう)は、お(とう)さんが()ったタイムマシンで、初(はじ)めてのお()()け。
 ()(さき)、僕(ぼく)(だい)()きな(きょう)(りゅう)()(だい)だ。
 まぁ、お(とう)さんの()きな(きょう)(りゅう)()(だい)でもある。
 お(かあ)さんは「ヘビやトカゲは(だい)(きら)い」って()ってお()()(ばん)。でも、恐(きょう)(りゅう)()(ちゅう)(るい)じゃないんだけどなぁ…。
 お(とう)さんの()ったタイムマシンは(さい)(しん)(がた)で、なんと(いち)()(かん)(さい)(だい)六百(ろっぴゃく)(まん)(ねん)()(どう)()()(すぐ)れものだ。
 だから、晩(ばん)()(はん)()べて()(みが)いた(あと)、パジャマに()()えて()()んで、ぐっすり()たら(あさ)にはもう(あこ)れの(きょう)(りゅう)()(だい)だ。
 お(とう)さんのタイムマシンは、普()(つう)のキャンピングカーみたいだけど、お(とう)さんが()(ども)(ころ)、時()(かん)()(どう)(そう)()(いま)(さん)(ばい)(おお)きくて、一(いち)()(かん)(じゅう)(まん)(ねん)くらいしか()(どう)()()なかったんだって。
 (ぼく)(さん)(すう)(とく)()だから、0がいっぱいで(たい)(へん)だったけど(けい)(さん)してみた。
 なんとびっくり! (きょう)(りゅう)()(だい)()くのに(いっ)()(げつ)もかかるんだ。行()くだけで(なつ)(やす)みが()わっちゃうよ。
 あ、今(いま)のタイムマシンってのは、行()きと(かえ)りの()(どう)()(かん)(おな)じになるようになっているんだ。ドラえもんのタイムマシンのように()(ゆう)()(どう)()(かん)()められない。
 どうしてなのかお(とう)さんに()いたら、
 「地()(きゅう)()(てん)しながら(こう)(てん)しているから」
 っていうんだけど、なんの(こと)だかさっぱり(わか)らない。しつこく()いたら(さい)()には、
 「時()(かん)()(どう)(ほう)()まってるからなの!」
 って(おこ)られた。
 なんで(おこ)られなきゃなんないんだ?

 ウィンウィン。

 お(とう)さんが()(どう)スイッチを()すと、タイムマシンが(うご)きだす。
 (ぼく)は、お(かあ)さんに「おやすみ」と「いってきます」を()って、タイムマシンのドアを()める。
 いよいよ(しゅっ)(ぱつ)だ!
 お(とう)さんが「もう(いっ)(かい)()うよ」って、最(さい)()(ちゅう)()
 一、お(とう)さんの()うことを()く。
 一、危(あぶ)ない(ところ)には()かない。
 一、ゴミはちゃんと()(かえ)る。
 一、何(なに)()ってきちゃいけない。
 「一(ひと)つでも(やく)(そく)(まも)らないと、もう()()()れて()ってあげないよ」って()われたけど、僕(ぼく)()っている。
 ゴミを()いてきたり、何(なに)かを()ってくると()(くう)(けい)(さつ)(つか)まっちゃうんだ。
 「はい」って(おお)きな(こえ)()うと、お(とう)さんは「昭(しょう)()」って()(だい)のテレビヒーローの()()をして「発(はっ)(しん)」って()いながら、スタートボタンを()した。

 ウィンウィンウィン。

 (まど)(あん)(ぜん)シャッターが()、時()(くう)()(どう)(はじ)まる。動(うご)()してしばらくはガタガタ()れて、おへその(した)あたりがちょっとくすぐったかった。
 「さ、後(あと)()るだけだ」って、お(とう)さんは()うけど、興(こう)(ふん)してなかなかすぐに(ねむ)れるもんじゃない。
 (ぼく)()(だん)ベッドの(うえ)(ほう)、何(なん)(かい)()(がえ)りして、やっと(ねむ)れたと(おも)ったら、もうお(とう)さんに()こされた(お(とう)さんは、ずぅっと()てたって()うけど、僕(ぼく)(いま)さっき、眠(ねむ)ったばっかりだったんだ! (ぜっ)(たい)、絶(ぜっ)(たい)(ねむ)ったばっかりだったんだから)。
 お(とう)さんが()れて()てくれたのは、七(なな)(せん)(まん)(ねん)(まえ)(はく)()()という(きょう)(りゅう)()(だい)(おわ)わり(ごろ)
 (ほん)(とう)、僕(ぼく)(だい)()きなステゴサウルスやブラキオサウルスのいるジュラ()()きたかったんだけど、ジュラ()()くには(いち)(にち)()(じょう)タイムマシンに()っていなきゃならないし、お(とう)さんもそんなに(かい)(しゃ)(やす)めないから、諦(あき)めた。
 「タイムマシンなら(しゅっ)(ぱつ)した()(かん)(もど)ってこれるはずなのに、どうしてドラえもんのタイムマシンみたいにそれが()()ないのか?」僕(ぼく)はやっぱりそれが()りたかったからもう(いっ)(かい)だけ()いてみた。そうしたら、
 「それは()(けん)(こと)なの。危(あぶ)ない(こと)だから、市()(はん)のタイムマシンはそういう(こと)()()ないようになっているんだよ」
 と、答(こた)えてくれた。
 どう()(けん)なのかは、僕(ぼく)にはまだ(むず)しくて(わか)らない(こと)だからって、やっぱり(おし)えてくれなかったけど、かわりにこんな(こと)(おし)えてくれた。
 (むかし)、実(じっ)(けん)(ちゅう)(だい)()()()きた(こと)があって、それ()(らい)(けん)(きゅう)(よう)(おお)(がた)タイムマシンと(とく)(べつ)(きょ)()がないと、出(しゅっ)(ぱつ)した()(かん)(もど)ってくる(こと)()(かん)()(どう)(ほう)(きん)()になったんだって。
 まぁ、いいんだ。白(はく)()()にもイグアノドンとか、好()きな(きょう)(りゅう)はいっぱいいるから。
 タイムマシンが()いたのは、芝(しば)()()できれいに()()られたような(みずうみ)(ちか)くの(そう)(げん)で、あまり(とお)くない(ところ)にすごくいっぱいのトリケラトプスがムシャムシャと(くさ)()べている。
 「トリケラトプスばっかりだなぁ、お(とう)さんの()きなアンキモサウルスいないかなぁ?」
 ……って、それはアンキロサウルス。
 「森(もり)(ほう)()ったら、もっといっぱい(きょう)(りゅう)がいるんじゃない?」
 (ぼく)、外(そと)()たくてワクワクしてる。けど、お(とう)さんは(そと)()ちゃダメって()うんだ。
 ()たトコ(にく)(しょく)(きょう)(りゅう)なんて(ぜん)(ぜん)いないのに、外(そと)()るのは(あぶ)ないって…。
 (ぼく)、森(もり)(はず)れで()()っぱを()べているパキケファロサウルスに(さわ)ってみたいのに。
 「ちょっと、移()(どう)してみよう?」
 お(とう)さんは、タイムマシンをランドクルーザーみたいに(うん)(てん)して、森(もり)(ほう)()れていってくれた。
 タイムマシンは(おお)きくて、森(もり)(なか)まで(はい)って()けなかったけれど、望(ぼう)(えん)カメラで(おく)(のぞ)くとオルトミムスがトカゲみたいのを(つか)まえている(ところ)や、マイアサウラが(あか)ちゃんに(えさ)をあげているトコが()れた。
 マイアサウラの(あか)ちゃんはちっちゃくて、かわいかった。
 うー、触(さわ)ってみたい、抱()っこしてみたい!
 「子()(そだ)てを(じゃ)()するとお(かあ)さんに(おこ)られるからな」って、お(とう)さんはタイムマシンを()(どう)させる。
 (そと)()れてて()()()さそうだったから、ピクニックみたいに(そと)でご(はん)()べたかったんだけど、やっぱりお(とう)さんはダメだって()う。
 なぜ? って()いたら、
 「人(にん)(げん)()んでいる()(だい)とは、環(かん)(きょう)(ちが)うからだよ」
 って。外(そと)()るためには、特(とく)(べつ)(じゅん)()(かっ)(こう)をしないと、知()らない(びょう)()になったりして(あぶ)ないんだって。
 ちぇ、つまんないな。
 お(ひる)(はん)()べながら、ボーッと(そと)()ていたら、突(とつ)(ぜん)()(まえ)(おお)きなトンボが(よこ)()った。
 「両(りょう)()(ひろ)げたくらい(おお)きかったよ」って、お(とう)さんに()ったら「ゴキブリも(いえ)()てくるヤツより(さん)(ばい)くらいは(おお)きいぞ」って、笑(わら)ってた。
 ……それには、会()いたくないぞ…。
 (みずうみ)(なが)れる(おお)きな(かわ)には、プカプカとワニが()いていて、時(とき)(どき)(おお)きなあくびをしている。
 のんびりしてていいなぁ…って(おも)っていたら、急(きゅう)(きょう)(りゅう)たちが(はし)()した。すると、ドドドドッって()(めん)()れたかと(おも)ったら、ゴゴォーッって(すご)(おと)がした。
 (はん)(たい)(がわ)(まど)(そと)()ると、一(いち)(ばん)(ちか)くの()(ざん)(ふん)()している。
 お(とう)さんは()べかけのおにぎりを(くち)いっぱいに(ほお)()ると、運(うん)(てん)(せき)(すわ)って(きゅう)(はっ)(しん)。走(はし)って()げてくる(きょう)(りゅう)にぶつからないように(うん)(てん)する。
 なんか、とっても格好(カッコ)いい。
 …けど、右(みぎ)()がったり(ひだり)()がったりして(はし)るもんだから、僕(ぼく)()(ぶん)(わる)くなった。
 (あん)(ぜん)そうな(ところ)まで()ると、そこにはパラサウロロフスがいた。
 やっぱり(そと)()てみたい!
 お(とう)さんにお(ねが)いしようとしたら、お(とう)さんが(まど)(そと)(ゆび)()している。
 ()ると、林(はやし)がサワサワと()れている。大(おお)きな(きょう)(りゅう)(ちか)づいているみたいだ!
 うわっ! もしかして!?
 (あらわ)れたのは(にく)(しょく)(きょう)(りゅう)(おう)(さま)、ティラノサウルス=レックスだ!
 ティラノサウルスは、思(おも)っていたよりずっと(はや)くて、とっても(ちから)(づよ)(はし)って()る。そして、群()れから()(おく)れた(いっ)(ぴき)のパラサウロロフスのお(しり)()()いた!
 「まずい!」
 お(とう)さんは、慌(あわ)ててタイムマシンを(うご)かした。二()(ひき)(たた)いながら()げながら、こっちに()かって()たからだ。

 ウィンウィンウィン。

 ()(ひき)(たお)()んでくる(かん)(いっ)(ぱつ)(ところ)でタイムマシンは(ぼく)らの()(だい)(もど)()す。
 「一(いち)(ばん)いいトコだったのになぁ…」
 (ぼく)は、そう()いながら(おお)きなあくびをした。
 ()(けい)()ると、恐(きょう)(りゅう)()(だい)()いてから(じゅう)()()(かん)くらい()ぎていた。
 それから(ぼく)らは(ばん)()(はん)()べながら、今日(きょう)()(きょう)(りゅう)たちの(はなし)(ねむ)くなるまで(はな)()った。
 「でも、イグアノドンが()れなかったのが(ざん)(ねん)だよ」
 パジャマに()()えてベッドに(はい)りながら(ぼく)()うと、お(とう)さんはニッコリ(わら)いながらこう()った。
 「なんだぁ? (きょう)(りゅう)博士(はかせ)なんだろ? イグアノドンは、もっと(むかし)(きょう)(りゅう)だぞ。知()らなかったのか? 明日(あした)、お(うち)(かえ)ったら、もう(いっ)(かい)ちゃんと()(かん)調(しら)べてみるんだな」
 その(とき)はもう、眠(ねむ)くてよく(おぼ)えていないんだけど、確(たし)かそんなふうに()っていた()がする。
 (あさ)()きると、そこは(ぼく)()のタイムマシンを()くガレージだった。
 (うち)(もど)ってお(かあ)さんに「ただいま」と「おはよう」を()って、急(いそ)いで(きょう)(りゅう)()(かん)調(しら)べたら、イグアノドンは(だい)(たい)(いち)(おく)(ねん)くらい(まえ)(はく)()()(ぜん)()()きていた(きょう)(りゅう)だって()いてあった。
 なんだ、イグアノドン()たかったのになぁ。


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 夏《なつ》休《やす》み。今日《きょう》は、お父《とう》さんが買《か》ったタイムマシンで、初《はじ》めてのお出《で》掛《か》け。
 行《い》き先《さき》は、僕《ぼく》の大《だい》好《す》きな恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》だ。
 まぁ、お父《とう》さんの好《す》きな恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》でもある。
 お母《かあ》さんは「ヘビやトカゲは大《だい》嫌《きら》い」って言《い》ってお留《る》守《す》番《ばん》。でも、恐《きょう》竜《りゅう》は爬《は》虫《ちゅう》類《るい》じゃないんだけどなぁ…。
 お父《とう》さんの買《か》ったタイムマシンは最《さい》新《しん》型《がた》で、なんと一《いち》時《じ》間《かん》に最《さい》大《だい》六百《ろっぴゃく》万《まん》年《ねん》も移《い》動《どう》出《で》来《き》る優《すぐ》れものだ。
 だから、晩《ばん》御《ご》飯《はん》を食《た》べて歯《は》を磨《みが》いた後《あと》、パジャマに着《き》替《が》えて乗《の》り込《こ》んで、ぐっすり寝《ね》たら朝《あさ》にはもう憧《あこ》れの恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》だ。
 お父《とう》さんのタイムマシンは、普《ふ》通《つう》のキャンピングカーみたいだけど、お父《とう》さんが子《こ》供《ども》の頃《ころ》は、時《じ》間《かん》移《い》動《どう》装《そう》置《ち》が今《いま》の三《さん》倍《ばい》大《おお》きくて、一《いち》時《じ》間《かん》に十《じゅう》万《まん》年《ねん》くらいしか移《い》動《どう》出《で》来《き》なかったんだって。
 僕《ぼく》は算《さん》数《すう》が得《とく》意《い》だから、0がいっぱいで大《たい》変《へん》だったけど計《けい》算《さん》してみた。
 なんとびっくり! 恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》に行《い》くのに一《いっ》|ヶ《か》月《げつ》もかかるんだ。行《い》くだけで夏《なつ》休《やす》みが終《お》わっちゃうよ。
 あ、今《いま》のタイムマシンってのは、行《い》きと帰《かえ》りの移《い》動《どう》時《じ》間《かん》が同《おな》じになるようになっているんだ。ドラえもんのタイムマシンのように自《じ》由《ゆう》に移《い》動《どう》時《じ》間《かん》を決《き》められない。
 どうしてなのかお父《とう》さんに聞《き》いたら、
 「地《ち》球《きゅう》が自《じ》転《てん》しながら公《こう》転《てん》しているから」
 っていうんだけど、なんの事《こと》だかさっぱり判《わか》らない。しつこく聞《き》いたら最《さい》後《ご》には、
 「時《じ》間《かん》移《い》動《どう》法《ほう》で決《き》まってるからなの!」
 って怒《おこ》られた。
 なんで怒《おこ》られなきゃなんないんだ?
 ウィンウィン。
 お父《とう》さんが起《き》動《どう》スイッチを押《お》すと、タイムマシンが動《うご》きだす。
 僕《ぼく》は、お母《かあ》さんに「おやすみ」と「いってきます」を言《い》って、タイムマシンのドアを閉《し》める。
 いよいよ出《しゅっ》発《ぱつ》だ!
 お父《とう》さんが「もう一《いっ》回《かい》言《い》うよ」って、最《さい》後《ご》の注《ちゅう》意《い》。
 一、お父《とう》さんの言《い》うことを聞《き》く。
 一、危《あぶ》ない所《ところ》には行《い》かない。
 一、ゴミはちゃんと持《も》ち帰《かえ》る。
 一、何《なに》も持《も》ってきちゃいけない。
 「一《ひと》つでも約《やく》束《そく》を守《まも》らないと、もう二《に》度《ど》と連《つ》れて行《い》ってあげないよ」って言《い》われたけど、僕《ぼく》は知《し》っている。
 ゴミを置《お》いてきたり、何《なに》かを取《と》ってくると時《じ》空《くう》警《けい》察《さつ》に捕《つか》まっちゃうんだ。
 「はい」って大《おお》きな声《こえ》で言《い》うと、お父《とう》さんは「昭《しょう》和《わ》」って時《じ》代《だい》のテレビヒーローの真《ま》似《ね》をして「発《はっ》進《しん》」って言《い》いながら、スタートボタンを押《お》した。
 ウィンウィンウィン。
 窓《まど》の安《あん》全《ぜん》シャッターが閉《と》じ、時《じ》空《くう》移《い》動《どう》が始《はじ》まる。動《うご》き出《だ》してしばらくはガタガタ揺《ゆ》れて、おへその下《した》あたりがちょっとくすぐったかった。
 「さ、後《あと》は寝《ね》るだけだ」って、お父《とう》さんは言《い》うけど、興《こう》奮《ふん》してなかなかすぐに眠《ねむ》れるもんじゃない。
 僕《ぼく》は二《に》段《だん》ベッドの上《うえ》の方《ほう》で、何《なん》回《かい》も寝《ね》返《がえ》りして、やっと眠《ねむ》れたと思《おも》ったら、もうお父《とう》さんに起《お》こされた(お父《とう》さんは、ずぅっと寝《ね》てたって言《い》うけど、僕《ぼく》は今《いま》さっき、眠《ねむ》ったばっかりだったんだ! 絶《ぜっ》対《たい》、絶《ぜっ》対《たい》眠《ねむ》ったばっかりだったんだから)。
 お父《とう》さんが連《つ》れて来《き》てくれたのは、七《なな》千《せん》万《まん》年《ねん》前《まえ》の白《はく》亜《あ》紀《き》という恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》の終《おわ》わり頃《ごろ》。
 本《ほん》当《とう》は、僕《ぼく》の大《だい》好《す》きなステゴサウルスやブラキオサウルスのいるジュラ紀《き》に行《い》きたかったんだけど、ジュラ紀《き》に着《つ》くには一《いち》日《にち》以《い》上《じょう》タイムマシンに乗《の》っていなきゃならないし、お父《とう》さんもそんなに会《かい》社《しゃ》を休《やす》めないから、諦《あき》めた。
 「タイムマシンなら出《しゅっ》発《ぱつ》した時《じ》間《かん》に戻《もど》ってこれるはずなのに、どうしてドラえもんのタイムマシンみたいにそれが出《で》来《き》ないのか?」僕《ぼく》はやっぱりそれが知《し》りたかったからもう一《いっ》回《かい》だけ聞《き》いてみた。そうしたら、
 「それは危《き》険《けん》な事《こと》なの。危《あぶ》ない事《こと》だから、市《し》販《はん》のタイムマシンはそういう事《こと》が出《で》来《き》ないようになっているんだよ」
 と、答《こた》えてくれた。
 どう危《き》険《けん》なのかは、僕《ぼく》にはまだ難《むず》しくて判《わか》らない事《こと》だからって、やっぱり教《おし》えてくれなかったけど、かわりにこんな事《こと》を教《おし》えてくれた。
 昔《むかし》、実《じっ》験《けん》中《ちゅう》に大《だい》事《じ》故《こ》が起《お》きた事《こと》があって、それ以《い》来《らい》研《けん》究《きゅう》用《よう》の大《おお》型《がた》タイムマシンと特《とく》別《べつ》の許《きょ》可《か》がないと、出《しゅっ》発《ぱつ》した時《じ》間《かん》に戻《もど》ってくる事《こと》は時《じ》間《かん》移《い》動《どう》法《ほう》で禁《きん》止《し》になったんだって。
 まぁ、いいんだ。白《はく》亜《あ》紀《き》にもイグアノドンとか、好《す》きな恐《きょう》竜《りゅう》はいっぱいいるから。
 タイムマシンが着《つ》いたのは、芝《しば》刈《か》り機《き》できれいに刈《か》り取《と》られたような湖《みずうみ》の近《ちか》くの草《そう》原《げん》で、あまり遠《とお》くない所《ところ》にすごくいっぱいのトリケラトプスがムシャムシャと草《くさ》を食《た》べている。
 「トリケラトプスばっかりだなぁ、お父《とう》さんの好《す》きなアンキモサウルスいないかなぁ?」
 ……って、それはアンキロサウルス。
 「森《もり》の方《ほう》に行《い》ったら、もっといっぱい恐《きょう》竜《りゅう》がいるんじゃない?」
 僕《ぼく》は、外《そと》に出《で》たくてワクワクしてる。けど、お父《とう》さんは外《そと》に出《で》ちゃダメって言《い》うんだ。
 見《み》たトコ肉《にく》食《しょく》恐《きょう》竜《りゅう》なんて全《ぜん》然《ぜん》いないのに、外《そと》に出《で》るのは危《あぶ》ないって…。
 僕《ぼく》は、森《もり》の外《はず》れで木《き》の葉《は》っぱを食《た》べているパキケファロサウルスに触《さわ》ってみたいのに。
 「ちょっと、移《い》動《どう》してみよう?」
 お父《とう》さんは、タイムマシンをランドクルーザーみたいに運《うん》転《てん》して、森《もり》の方《ほう》へ連《つ》れていってくれた。
 タイムマシンは大《おお》きくて、森《もり》の中《なか》まで入《はい》って行《い》けなかったけれど、望《ぼう》遠《えん》カメラで奥《おく》を覗《のぞ》くとオルトミムスがトカゲみたいのを捕《つか》まえている所《ところ》や、マイアサウラが赤《あか》ちゃんに餌《えさ》をあげているトコが見《み》れた。
 マイアサウラの赤《あか》ちゃんはちっちゃくて、かわいかった。
 うー、触《さわ》ってみたい、抱《だ》っこしてみたい!
 「子《こ》育《そだ》てを邪《じゃ》魔《ま》するとお母《かあ》さんに怒《おこ》られるからな」って、お父《とう》さんはタイムマシンを移《い》動《どう》させる。
 外《そと》は晴《は》れてて気《き》持《も》ち良《よ》さそうだったから、ピクニックみたいに外《そと》でご飯《はん》を食《た》べたかったんだけど、やっぱりお父《とう》さんはダメだって言《い》う。
 なぜ? って聞《き》いたら、
 「人《にん》間《げん》の住《す》んでいる時《じ》代《だい》とは、環《かん》境《きょう》が違《ちが》うからだよ」
 って。外《そと》に出《で》るためには、特《とく》別《べつ》な準《じゅん》備《び》と格《かっ》好《こう》をしないと、知《し》らない病《びょう》気《き》になったりして危《あぶ》ないんだって。
 ちぇ、つまんないな。
 お昼《ひる》ご飯《はん》を食《た》べながら、ボーッと外《そと》を見《み》ていたら、突《とつ》然《ぜん》目《め》の前《まえ》を大《おお》きなトンボが横《よこ》切《ぎ》った。
 「両《りょう》手《て》を拡《ひろ》げたくらい大《おお》きかったよ」って、お父《とう》さんに言《い》ったら「ゴキブリも家《いえ》に出《で》てくるヤツより三《さん》倍《ばい》くらいは大《おお》きいぞ」って、笑《わら》ってた。
 ……それには、会《あ》いたくないぞ…。
 湖《みずうみ》に流《なが》れる大《おお》きな川《かわ》には、プカプカとワニが浮《う》いていて、時《とき》々《どき》大《おお》きなあくびをしている。
 のんびりしてていいなぁ…って思《おも》っていたら、急《きゅう》に恐《きょう》竜《りゅう》たちが走《はし》り出《だ》した。すると、ドドドドッって地《じ》面《めん》が揺《ゆ》れたかと思《おも》ったら、ゴゴォーッって凄《すご》い音《おと》がした。
 反《はん》対《たい》側《がわ》の窓《まど》の外《そと》を見《み》ると、一《いち》番《ばん》近《ちか》くの火《か》山《ざん》が噴《ふん》火《か》している。
 お父《とう》さんは食《た》べかけのおにぎりを口《くち》いっぱいに頬《ほお》張《ば》ると、運《うん》転《てん》席《せき》に座《すわ》って急《きゅう》発《はっ》進《しん》。走《はし》って逃《に》げてくる恐《きょう》竜《りゅう》にぶつからないように運《うん》転《てん》する。
 なんか、とっても格好《カッコ》いい。
 …けど、右《みぎ》に曲《ま》がったり左《ひだり》に曲《ま》がったりして走《はし》るもんだから、僕《ぼく》は気《き》分《ぶん》が悪《わる》くなった。
 安《あん》全《ぜん》そうな所《ところ》まで来《く》ると、そこにはパラサウロロフスがいた。
 やっぱり外《そと》に出《で》てみたい!
 お父《とう》さんにお願《ねが》いしようとしたら、お父《とう》さんが窓《まど》の外《そと》を指《ゆび》差《さ》している。
 見《み》ると、林《はやし》がサワサワと揺《ゆ》れている。大《おお》きな恐《きょう》竜《りゅう》が近《ちか》づいているみたいだ!
 うわっ! もしかして!?
 現《あらわ》れたのは肉《にく》食《しょく》恐《きょう》竜《りゅう》の王《おう》様《さま》、ティラノサウルス=レックスだ!
 ティラノサウルスは、思《おも》っていたよりずっと速《はや》くて、とっても力《ちから》強《づよ》く走《はし》って来《く》る。そして、群《む》れから逃《に》げ遅《おく》れた一《いっ》匹《ぴき》のパラサウロロフスのお尻《しり》に噛《か》み付《つ》いた!
 「まずい!」
 お父《とう》さんは、慌《あわ》ててタイムマシンを動《うご》かした。二《に》匹《ひき》が戦《たた》いながら逃《に》げながら、こっちに向《む》かって来《き》たからだ。
 ウィンウィンウィン。
 二《に》匹《ひき》が倒《たお》れ込《こ》んでくる間《かん》一《いっ》髪《ぱつ》の所《ところ》でタイムマシンは僕《ぼく》らの時《じ》代《だい》に戻《もど》り出《だ》す。
 「一《いち》番《ばん》いいトコだったのになぁ…」
 僕《ぼく》は、そう言《い》いながら大《おお》きなあくびをした。
 時《と》計《けい》を見《み》ると、恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》に着《つ》いてから十《じゅう》二《に》時《じ》間《かん》くらい過《す》ぎていた。
 それから僕《ぼく》らは晩《ばん》御《ご》飯《はん》を食《た》べながら、今日《きょう》見《み》た恐《きょう》竜《りゅう》たちの話《はなし》を眠《ねむ》くなるまで話《はな》し合《あ》った。
 「でも、イグアノドンが見《み》れなかったのが残《ざん》念《ねん》だよ」
 パジャマに着《き》替《が》えてベッドに入《はい》りながら僕《ぼく》が言《い》うと、お父《とう》さんはニッコリ笑《わら》いながらこう言《い》った。
 「なんだぁ? 恐《きょう》竜《りゅう》博士《はかせ》なんだろ? イグアノドンは、もっと昔《むかし》の恐《きょう》竜《りゅう》だぞ。知《し》らなかったのか? 明日《あした》、お家《うち》に帰《かえ》ったら、もう一《いっ》回《かい》ちゃんと図《ず》鑑《かん》で調《しら》べてみるんだな」
 その時《とき》はもう、眠《ねむ》くてよく覚《おぼ》えていないんだけど、確《たし》かそんなふうに言《い》っていた気《き》がする。
 朝《あさ》起《お》きると、そこは僕《ぼく》ン家《ち》のタイムマシンを置《お》くガレージだった。
 家《うち》に戻《もど》ってお母《かあ》さんに「ただいま」と「おはよう」を言《い》って、急《いそ》いで恐《きょう》竜《りゅう》図《ず》鑑《かん》を調《しら》べたら、イグアノドンは大《だい》体《たい》一《いち》億《おく》年《ねん》くらい前《まえ》の白《はく》亜《あ》紀《き》前《ぜん》期《き》に生《い》きていた恐《きょう》竜《りゅう》だって書《か》いてあった。
 なんだ、イグアノドン見《み》たかったのになぁ。