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第三部 11話 元教え子

ー/ー



「お前、何か恨みでも買ったのか?」
「……何もしてないよ」

 試合開始の直前。
 グレイと二人でソフィアを見ながら囁き合う。
 俺達の様子を見て、ソフィアはさらに眉を吊り上げた。

 ここまで、お互いに無敗だった。
 他にも無敗のチームはいくつかあるが、重要な一戦ではあるのだろう。

 俺は小剣を両手に一本ずつ持っている。
 ソフィアもリックを小剣に錬金している。

 ソフィア達の構成も俺達と同じ。
 ソフィアは中衛だ。俺が相手をすることになるだろう。

 それぞれが配置に着くと、開始の合図が鳴った。

 いつも通り、前衛同士がぶつかった。ソフィア達もこちらに合わせるようだ。
 しかし、今まで通りとはいかなかった。

「よし! ……おぉ?」
 ぶつかったグレイが驚いた声を上げる。

 重装備で固めた前衛はグレイを確実に押していた。
 セシルの援護もどこ吹く風で少しずつ前に出る。
 流石にソフィアのチームはレベルが違うということか。

 少しだけ急ぎながら、隙を伺うように俺は横へと移動していく。
 予想通り、ソフィアが前に出て来た。

「お……ソフィア。やっぱり、こうなるよな」
「当然でしょ」

 一瞬だけ「お嬢様」と言いそうになった。

 ソフィアが強く踏み込んで、小剣を真横に払う。
 俺は左の小剣で上に弾く。ソフィアの小剣が浮いた。

 バチ、という聞き慣れた音。
 弾かれた小剣は長槍へと姿を変える。

 予想していた俺は右の小剣でさらに上へと弾く。
 そのまま一歩踏み込んだ。両手の小剣を袈裟に斬り下ろす。

 ガキン、という硬い音。
 ソフィアの小剣は盾に姿を変えて俺の小剣を防いでいた。

 思わず苦笑しながら、俺は大きく後ろへと跳ぶ。
 ソフィアが俺を追って踏み込んだ。今度は双剣を握っている。

 ソフィアが右の剣で斬り払う。左の小剣で弾く。
 続けて左で突き込んでくる。半身ずらして避けた。

 今度は俺が踏み込む。
 ソフィアが楽しそうに微笑んだ。

 左の小剣を上段から斬り下ろす。ソフィアが右の剣で受け流した。
 右の小剣は下段を払う。ソフィアは地面に左の剣を突き立てるようにして防ぐ。

「あんた、本当に十六歳?」
「どうだったかな? 確か同い年だったと思うけど」

 軽口を交わして、互いに小さく笑った。
 同時、ソフィアが一際強く踏み込む。逆袈裟に斬り上げた。

「障壁よ、防げ」
「!?」
 俺は手札を切ることにした。多めに魔力を注ぎ込む。

 ソフィアの一撃を障壁が防いだ。
 同時にいくつもの障壁が俺達を囲んでいた。
 
「魔弾よ、貫け」
 こちらも多めに魔力を消費して、無数の魔弾を障壁へと放つ。

 複数の魔弾がピンボールのように跳ね回る。
 いくつかの魔弾をソフィアが弾いた。

「うっとうしいわね……!」
「アッシュが喜びそうな戦い方だ」
 ソフィアとリックがぼやくように呟いた。

 当たるとは思っていない。
 ただの目くらましだ。

 俺は先程の一撃を防いだ障壁を足場に跳び上がる。
 さらに障壁の一つに足を付けると、地面に向けて跳んだ。

 いつか『レン・クーガー』が影を使ってやっていた動きだ。
 右の小剣を払いながらソフィアへと飛び掛かる。

「この……!」
 それでもソフィアは反応した。左の剣で弾いて見せる。

 しかし、ここまでは想定通り。
 ソフィアの後ろに着地して振り返り、俺は残しておいた左の小剣を払う。

「後ろだ」
 リックの冷静な声が響く。

 すぐさま、バチッという錬金音。最後は鎖だった。
 振り返ることもせず、ソフィアは俺を捕まえた。

「……まいった」
 嬉しいような寂しいような、複雑な感情で俺は呟いた。



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「お前、何か恨みでも買ったのか?」
「……何もしてないよ」
 試合開始の直前。
 グレイと二人でソフィアを見ながら囁き合う。
 俺達の様子を見て、ソフィアはさらに眉を吊り上げた。
 ここまで、お互いに無敗だった。
 他にも無敗のチームはいくつかあるが、重要な一戦ではあるのだろう。
 俺は小剣を両手に一本ずつ持っている。
 ソフィアもリックを小剣に錬金している。
 ソフィア達の構成も俺達と同じ。
 ソフィアは中衛だ。俺が相手をすることになるだろう。
 それぞれが配置に着くと、開始の合図が鳴った。
 いつも通り、前衛同士がぶつかった。ソフィア達もこちらに合わせるようだ。
 しかし、今まで通りとはいかなかった。
「よし! ……おぉ?」
 ぶつかったグレイが驚いた声を上げる。
 重装備で固めた前衛はグレイを確実に押していた。
 セシルの援護もどこ吹く風で少しずつ前に出る。
 流石にソフィアのチームはレベルが違うということか。
 少しだけ急ぎながら、隙を伺うように俺は横へと移動していく。
 予想通り、ソフィアが前に出て来た。
「お……ソフィア。やっぱり、こうなるよな」
「当然でしょ」
 一瞬だけ「お嬢様」と言いそうになった。
 ソフィアが強く踏み込んで、小剣を真横に払う。
 俺は左の小剣で上に弾く。ソフィアの小剣が浮いた。
 バチ、という聞き慣れた音。
 弾かれた小剣は長槍へと姿を変える。
 予想していた俺は右の小剣でさらに上へと弾く。
 そのまま一歩踏み込んだ。両手の小剣を袈裟に斬り下ろす。
 ガキン、という硬い音。
 ソフィアの小剣は盾に姿を変えて俺の小剣を防いでいた。
 思わず苦笑しながら、俺は大きく後ろへと跳ぶ。
 ソフィアが俺を追って踏み込んだ。今度は双剣を握っている。
 ソフィアが右の剣で斬り払う。左の小剣で弾く。
 続けて左で突き込んでくる。半身ずらして避けた。
 今度は俺が踏み込む。
 ソフィアが楽しそうに微笑んだ。
 左の小剣を上段から斬り下ろす。ソフィアが右の剣で受け流した。
 右の小剣は下段を払う。ソフィアは地面に左の剣を突き立てるようにして防ぐ。
「あんた、本当に十六歳?」
「どうだったかな? 確か同い年だったと思うけど」
 軽口を交わして、互いに小さく笑った。
 同時、ソフィアが一際強く踏み込む。逆袈裟に斬り上げた。
「障壁よ、防げ」
「!?」
 俺は手札を切ることにした。多めに魔力を注ぎ込む。
 ソフィアの一撃を障壁が防いだ。
 同時にいくつもの障壁が俺達を囲んでいた。
「魔弾よ、貫け」
 こちらも多めに魔力を消費して、無数の魔弾を障壁へと放つ。
 複数の魔弾がピンボールのように跳ね回る。
 いくつかの魔弾をソフィアが弾いた。
「うっとうしいわね……!」
「アッシュが喜びそうな戦い方だ」
 ソフィアとリックがぼやくように呟いた。
 当たるとは思っていない。
 ただの目くらましだ。
 俺は先程の一撃を防いだ障壁を足場に跳び上がる。
 さらに障壁の一つに足を付けると、地面に向けて跳んだ。
 いつか『レン・クーガー』が影を使ってやっていた動きだ。
 右の小剣を払いながらソフィアへと飛び掛かる。
「この……!」
 それでもソフィアは反応した。左の剣で弾いて見せる。
 しかし、ここまでは想定通り。
 ソフィアの後ろに着地して振り返り、俺は残しておいた左の小剣を払う。
「後ろだ」
 リックの冷静な声が響く。
 すぐさま、バチッという錬金音。最後は鎖だった。
 振り返ることもせず、ソフィアは俺を捕まえた。
「……まいった」
 嬉しいような寂しいような、複雑な感情で俺は呟いた。