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第三部 10話 キースの魔術

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 開始の合図が鳴る。今日が五試合目だった。
 初戦と同じようにグレイが前でぶつかる。

 セシルにはグレイを援護するようにお願いしていた。
 俺は左側へと抜けるように駆けていく。

 相手の中衛が後衛を庇う位置についた。俺達の初戦を警戒したのだろう。
 中衛と後衛が離れないように意識しているのが分かった。

 後衛の魔弾が俺へと集中する。
 お互いに二対一だ。

 俺は足を止めずに、走り回って逃げる。
 相手も無視はできないだろう。

 魔力特性について、いくつか分かったことがある。

 まずは一つ目。
 魔力特性『弾性』は自分の魔力に対してのみ発揮される。

「障壁よ、防げ」
 覚えたばかりの魔術を使う。相当マイナーな魔術らしいが。

 相手の魔弾が障壁にぶつかった。
 途端に魔弾は霧散してゆく。これが自然な結果だ。

「魔弾よ、貫け」
 次に俺は後衛たち目掛けて魔弾を撃つ。

 二人が身構えた瞬間、もう一度口を開く。

「障壁よ、防げ」
 俺と二人の中間くらいに障壁が出来上がる。

 今度は自分の魔弾が障壁にぶつかった。
 すると、魔弾は消えずに反射するように跳ね返った。

「がっ!?」
「おっらぁ!」

 跳ね返った魔弾はグレイの相手にぶつかる。
 グレイはしっかりとその隙を突いて相手を吹き飛ばした。

 二つ目。
 魔力が生み出した物にこの特性は付かない。
 魔法で氷を作っても弾性はないのだ。また、俺の体にも弾性はない。

 魔力を直接加工する類の魔弾や障壁でのみ使える特性だ。
 ……使いやすいのか、使いにくいにか、判断が難しい。

 さらに俺は中衛へと踏み込んだ。
 一気に間合いを詰める。

「障壁よ、防げ」
 呟きながら小剣で斬りつけた。

 相手は正確に間合いを読んで避ける。
 さらに迎え撃つように軽く長剣で切り返す。

 俺は一歩、後ろへ跳んで――

「な……!」
 相手の意表を突かれた声。

 ――障壁を何度か蹴りつけて、跳び上がった。

 空中で体をひねって、一閃。
 しかし、相手は剣に覚えがあるのだろう。
 半歩下がってこれも避ける。

「魔弾よ、貫け」
 さらに俺は右手を伸ばす。

 今度はしゃがんで避ける。
 俺が着地する瞬間を狙って、踏み込もうとする。

「!?」
 しかし、障壁で跳ね返った魔弾に背中を打たれた。

 反射的に振り返る。その隙に着地。同時に踏み込んだ。
 俺へと向き直って驚いた表情を浮かべる。

 その腹に柄頭を叩き込んだ。
 小さく呻いて倒れ込む。

 同時に背後から大きな声が聞こえてきた。
 グレイとセシルが相手の前衛を倒したのだろう。

 俺は後衛の女の子の目を見ながら、少しの間だけ動きを止める。
 俺の意を汲んだ女の子は「降参」と呟いた。

 魔力特性『弾性』か。
 使い勝手が良いとは言えないが、意表を突けるのは俺に向いている気がする。

 いつの間にか癖になっているのだろう、ソフィアの方をちらりと見る。
 向こうも見られていることは知っているのだろう。すでに俺を見ていた。

 まるで睨みつけるように、俺から視線を外さない。
 次はソフィアと戦うことになっていた。



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 開始の合図が鳴る。今日が五試合目だった。
 初戦と同じようにグレイが前でぶつかる。
 セシルにはグレイを援護するようにお願いしていた。
 俺は左側へと抜けるように駆けていく。
 相手の中衛が後衛を庇う位置についた。俺達の初戦を警戒したのだろう。
 中衛と後衛が離れないように意識しているのが分かった。
 後衛の魔弾が俺へと集中する。
 お互いに二対一だ。
 俺は足を止めずに、走り回って逃げる。
 相手も無視はできないだろう。
 魔力特性について、いくつか分かったことがある。
 まずは一つ目。
 魔力特性『弾性』は自分の魔力に対してのみ発揮される。
「障壁よ、防げ」
 覚えたばかりの魔術を使う。相当マイナーな魔術らしいが。
 相手の魔弾が障壁にぶつかった。
 途端に魔弾は霧散してゆく。これが自然な結果だ。
「魔弾よ、貫け」
 次に俺は後衛たち目掛けて魔弾を撃つ。
 二人が身構えた瞬間、もう一度口を開く。
「障壁よ、防げ」
 俺と二人の中間くらいに障壁が出来上がる。
 今度は自分の魔弾が障壁にぶつかった。
 すると、魔弾は消えずに反射するように跳ね返った。
「がっ!?」
「おっらぁ!」
 跳ね返った魔弾はグレイの相手にぶつかる。
 グレイはしっかりとその隙を突いて相手を吹き飛ばした。
 二つ目。
 魔力が生み出した物にこの特性は付かない。
 魔法で氷を作っても弾性はないのだ。また、俺の体にも弾性はない。
 魔力を直接加工する類の魔弾や障壁でのみ使える特性だ。
 ……使いやすいのか、使いにくいにか、判断が難しい。
 さらに俺は中衛へと踏み込んだ。
 一気に間合いを詰める。
「障壁よ、防げ」
 呟きながら小剣で斬りつけた。
 相手は正確に間合いを読んで避ける。
 さらに迎え撃つように軽く長剣で切り返す。
 俺は一歩、後ろへ跳んで――
「な……!」
 相手の意表を突かれた声。
 ――障壁を何度か蹴りつけて、跳び上がった。
 空中で体をひねって、一閃。
 しかし、相手は剣に覚えがあるのだろう。
 半歩下がってこれも避ける。
「魔弾よ、貫け」
 さらに俺は右手を伸ばす。
 今度はしゃがんで避ける。
 俺が着地する瞬間を狙って、踏み込もうとする。
「!?」
 しかし、障壁で跳ね返った魔弾に背中を打たれた。
 反射的に振り返る。その隙に着地。同時に踏み込んだ。
 俺へと向き直って驚いた表情を浮かべる。
 その腹に柄頭を叩き込んだ。
 小さく呻いて倒れ込む。
 同時に背後から大きな声が聞こえてきた。
 グレイとセシルが相手の前衛を倒したのだろう。
 俺は後衛の女の子の目を見ながら、少しの間だけ動きを止める。
 俺の意を汲んだ女の子は「降参」と呟いた。
 魔力特性『弾性』か。
 使い勝手が良いとは言えないが、意表を突けるのは俺に向いている気がする。
 いつの間にか癖になっているのだろう、ソフィアの方をちらりと見る。
 向こうも見られていることは知っているのだろう。すでに俺を見ていた。
 まるで睨みつけるように、俺から視線を外さない。
 次はソフィアと戦うことになっていた。