私たちは気がついたら一緒にいた。家が近い関係で、物心つくよりも互いを知り合う方が早かったのだ。こういうのを世間一般的には幼なじみというのだろう。
「佐和、どうして分かったの?」
「何が?」
「私が公園に居たこと。普段、別にあそこに寄ったりしないのに」
右手から流れ込んでくる彼の体温は、存在感を覚えないくらいに薄い。輪郭の無い空気を纏う彼は、春風と共に消え去ってしまうのではないかといつも思う。
「僕は真緒のことなら何でも分かるんだよ」
どうせ雑な返事しか返って来ないのに、と思うよりも佐和がそう答える方が早かった。「あっそ」と私も小石を蹴りながら呼応する。
けれど思い返してみれば、佐和の言うことはあながち間違っていない。例えば、中学生の頃、私が数学の教科書を無くしたことを何故か佐和は悟って、隣のクラスからわざわざ授業前に貸しに来てくれたことがあった。他にも、小学生の頃、高架下の河川敷で水切りをして家までの帰り道を引き伸ばしていた時も、「もっと薄い石を使った方が良いよ」と突然佐和は隣に現れたのだった。文字通り、佐和は私のことなら何でも分かる。不思議なことに。
「それより真緒、高校はどう?」
でもやっぱり、一番不思議だったのは幼少期のあの出来事だろう。たった五歳の少女が、自力で鍵を開けて外へ飛び出した事件の。
「また誰かに教科書を無くされたり、紙くずを投げつけられたりしていない?」
鮮明には覚えていないが、とにかく遠くへ、遠くへと必死に足を動かしたことだけは高画質のフィルムのようにはっきり記憶に残っている。いつか祖母が買ってくれた、片耳の歪なテディベアを両手いっぱいに抱えて。
陽が傾いて、空気が青くなって、カラスの大群が一斉に飛翔して、心が悴んで、迫り来る暗闇に涙が滲んだ時、またも佐和は私の隣にいた。「大丈夫、僕がいるからね」
「……真緒」
「いたっ」
不意に額に痛覚が走った。デコピンされたのだ。
「ちゃんと聞いてよ、僕の話」
「……ごめん」
気がつくと私の家はもう目の前だった。一時的に孤島を分断しなくてはいけない。
視界の端で、古ぼけたカーブミラーが不規則に明滅する街頭に照らされて黒い影を落としていた。私たちは、どんな姿で映っているのだろう───と、鏡の方へ視線を向けた瞬間、目の前には佐和の顔があった。間を割るように、ずいっと私を覗き込んだ彼がニヒルに微笑む。
「じゃあ、また明日も会おうよ。今日僕の話を聞いてくれなかった分、埋め合わせしてよ」
佐和の細い髪が夜風に揺れる。長めに整えられた髪から垣間見える瞳はいつも無機質で読めない。でも、深淵を想起するその黒目が日々微細な感情を帯びていることを私は知っている。
「気が向いたらね」
言い終わる前に温もりに縛られた。呼吸の仕方をつい忘れる。共鳴するように佐和の背中に腕を回すと、真新しいブレザーから薄い体温が流れ込んできて、心地良かった。束の間の融合。