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第三部 9話 義妹

ー/ー



 やむを得ず解散と決まった後、俺とグレイはセシルからいくつかの料理を買い取った。
 セシルは「お姉ちゃんに怒られる……」と涙目で呟いていた。

「あれ? 兄さん?」
 そこに驚いたような声が届く。

 見れば、義妹であるティアナが立っていた。
 ハーフエルフらしい飾り気のない服装だった。

「知り合いか?」
「あ、妹だよ」
 首を傾げる二人に軽く頷いた。

「ああ、ティアナ・クロスか」
「なんで知って……何でもない」
 学院での自己紹介の惨状を掘り返しそうになって、慌てて口を閉じる。

「じゃあ、いよいよもって今日は解散だな」
 グレイの言葉でその場は別れることになった。



 俺とティアナは自分の家へと向かって行く。
 しかし、未だに自分の家だという認識は薄い。

 隣のティアナをちらりと見る。特に気負った風もなく歩いている。
 正直、今までは意識的に関わらないようにしてきた。

 孤児院から一緒だったなら、少し長く話すだけでボロを出しかねない。
 もう少し時間を置いてから関わっていきたかった。

「二番街にいるってことは……孤児院に用があったのか?」
「うん。久しぶりに顔を出そうかなって」
 資料にあった情報から推測で話を振った。

「……どうだった?」
「ニナさんに会ったよ」
「!」
 やっぱり、同じ孤児院だったか。

「また、援助してくれたみたい。あの人がウチの出世頭だからね」
「そうだな」
「何せ、騎士団長だもん」
「騎士団長!?」
「? 騎士団長だよね?」
 可愛らしく首を傾げるティアナから目を逸らしながら頷いた。

「学院はどうなの? 同級生がいたみたいだけど」
「ま、まあ上手くやってるんじゃないかな」
 下手な嘘を吐いた。

 自己紹介は悲惨で、ソフィアとは険悪だ。
 グレイたちが声を掛けてくれたおかげで何とかなっているだけ。

「ふふ、嘘が下手になった?」
 隣のティアナが嬉しそうに微笑んだ。

 とん、と一歩だけ大きく跳んで俺の前に出る。
 まるでステップでも踏むように、くるりとこちらを振り向いた。

 後ろ手に腕を組みながら、一歩、一歩、と下がってゆく。
 下から覗くように俺の顔を見つめて、からかうように笑っていた。

「兄さんはそれくらいの方が良いよ――」

 三歩目でティアナはくるりと前へ振り返る。
 今度は胸を張るように仰け反ると、視線だけを俺に向けた。

「――昔から好きでもないことが上手すぎるんだから」
 懐かしむように笑う。

 俺はオリジナルの『キース・クロス』と話してみたいと思った。

義妹



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 やむを得ず解散と決まった後、俺とグレイはセシルからいくつかの料理を買い取った。
 セシルは「お姉ちゃんに怒られる……」と涙目で呟いていた。
「あれ? 兄さん?」
 そこに驚いたような声が届く。
 見れば、義妹であるティアナが立っていた。
 ハーフエルフらしい飾り気のない服装だった。
「知り合いか?」
「あ、妹だよ」
 首を傾げる二人に軽く頷いた。
「ああ、ティアナ・クロスか」
「なんで知って……何でもない」
 学院での自己紹介の惨状を掘り返しそうになって、慌てて口を閉じる。
「じゃあ、いよいよもって今日は解散だな」
 グレイの言葉でその場は別れることになった。
 俺とティアナは自分の家へと向かって行く。
 しかし、未だに自分の家だという認識は薄い。
 隣のティアナをちらりと見る。特に気負った風もなく歩いている。
 正直、今までは意識的に関わらないようにしてきた。
 孤児院から一緒だったなら、少し長く話すだけでボロを出しかねない。
 もう少し時間を置いてから関わっていきたかった。
「二番街にいるってことは……孤児院に用があったのか?」
「うん。久しぶりに顔を出そうかなって」
 資料にあった情報から推測で話を振った。
「……どうだった?」
「ニナさんに会ったよ」
「!」
 やっぱり、同じ孤児院だったか。
「また、援助してくれたみたい。あの人がウチの出世頭だからね」
「そうだな」
「何せ、騎士団長だもん」
「騎士団長!?」
「? 騎士団長だよね?」
 可愛らしく首を傾げるティアナから目を逸らしながら頷いた。
「学院はどうなの? 同級生がいたみたいだけど」
「ま、まあ上手くやってるんじゃないかな」
 下手な嘘を吐いた。
 自己紹介は悲惨で、ソフィアとは険悪だ。
 グレイたちが声を掛けてくれたおかげで何とかなっているだけ。
「ふふ、嘘が下手になった?」
 隣のティアナが嬉しそうに微笑んだ。
 とん、と一歩だけ大きく跳んで俺の前に出る。
 まるでステップでも踏むように、くるりとこちらを振り向いた。
 後ろ手に腕を組みながら、一歩、一歩、と下がってゆく。
 下から覗くように俺の顔を見つめて、からかうように笑っていた。
「兄さんはそれくらいの方が良いよ――」
 三歩目でティアナはくるりと前へ振り返る。
 今度は胸を張るように仰け反ると、視線だけを俺に向けた。
「――昔から好きでもないことが上手すぎるんだから」
 懐かしむように笑う。
 俺はオリジナルの『キース・クロス』と話してみたいと思った。