表示設定
表示設定
目次 目次




第三部 7話 初戦

ー/ー



 翌日。俺達は相手チームと演習場で向かい合っていた。
 演習場は思っていたよりも広く、複数の試合を同時に進めるようだ。

 障害物などは特にない。
 基本は白線から出なければ良いというルールのみ。

 俺達の構成は前衛がグレイで、中衛が俺。後衛がセシルだ。
 オーソドックスな構成だからだろう。相手も同じような構成だった。

 武器についてはグレイは斧。俺は小剣を選んだ。セシルは護身用の短剣のみ。
 お互いに武器の刃は潰してある。

「……」
 ちらり、と目を向ける。

 ソフィアがこの試合……というか、明らかに俺を見ていた。
 睨むような視線が向けられていた。

 柄にもなく、少し緊張しているかも知れない。
 作戦というほどではないが、一つだけ考えを伝えてはいるが……。

 試合開始の合図が鳴った。
 前衛のグレイがすぐさま前に出た。

 相手の前衛である剣士とぶつかる。
 俺は相手の気を引くように側面へと回り込んだ。

「ははは、吹っ飛べ!」
 俺を横目に見て、グレイが一際大きく斧を振るう。

 前衛がグレイに掛かり切りになったことを確認すると、俺は大きく踏み込んだ。

 狙った先は相手の中衛だ。
 後衛の魔弾を数度弾いて、急速に接近した。

「ッ!」
 中衛も咄嗟に対応しようとする。魔法かスキルか。

 しかし、襲ってきた魔弾がそれをさせない。
 的確なタイミングで放たれたセシルの援護だった。

 すごいな。ブラウン団長みたいだ。
 この距離での乱戦の中、ほぼ全てを当てに来た。

 相手の中衛は魔弾を避けて弾いてどうにか凌ぐ。
 だが、既に俺は相手の間合いに入ろうとしていた。

「こ、の!」
 狙われた少年は怒りに任せて長剣を払う。

 しかし、少しだけ狙った位置が高かった。
 足は止めず、姿勢を低くすることでやりすごす。

 相手の驚いた顔が見えた。
 一歩踏み込んで、俺は右手で小剣を斬り払った。

「……!」
 とにかく後ろへと飛び退くように相手は避ける。

 ――よし、ここだ。

 さらに一歩。全力で踏み込んだ。
 アッシュには及ばないが、今の体で出せる精一杯だ。

 相手が長剣を上段から振り下ろした。
 小剣を逆手に握り直す。そのまま返す刃で長剣を弾いた。
 
 空いている左手を相手の腹に当てる。
 今度こそ相手の顔が凍り付いた。
 
「魔弾よ、貫け」
 聞き慣れた言葉を口にした。相手の中衛が倒れる。

 開始早々に三対二になった俺達は勝負を有利に進めて、無事に勝利した。
 作戦と言えるほどでもないが、同じ標的を狙うようにだけ提案していたのだ。

「やったぞ! 何だお前、戦えるじゃないか!」
「失礼な。戦えないなんて言ってないだろう」
「……お疲れ」

 それぞれに喜びを表現する。
 無表情に見えるセシルも心なしか楽しそうだった。

 グレイにもみくちゃにされながら、ソフィアをちらりと見てしまう。
 口をへの字に曲げて、わざとらしく視線を逸らしていた。

 一番機嫌が悪い時の表情だな、と思った。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第三部 8話 同級生


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 翌日。俺達は相手チームと演習場で向かい合っていた。
 演習場は思っていたよりも広く、複数の試合を同時に進めるようだ。
 障害物などは特にない。
 基本は白線から出なければ良いというルールのみ。
 俺達の構成は前衛がグレイで、中衛が俺。後衛がセシルだ。
 オーソドックスな構成だからだろう。相手も同じような構成だった。
 武器についてはグレイは斧。俺は小剣を選んだ。セシルは護身用の短剣のみ。
 お互いに武器の刃は潰してある。
「……」
 ちらり、と目を向ける。
 ソフィアがこの試合……というか、明らかに俺を見ていた。
 睨むような視線が向けられていた。
 柄にもなく、少し緊張しているかも知れない。
 作戦というほどではないが、一つだけ考えを伝えてはいるが……。
 試合開始の合図が鳴った。
 前衛のグレイがすぐさま前に出た。
 相手の前衛である剣士とぶつかる。
 俺は相手の気を引くように側面へと回り込んだ。
「ははは、吹っ飛べ!」
 俺を横目に見て、グレイが一際大きく斧を振るう。
 前衛がグレイに掛かり切りになったことを確認すると、俺は大きく踏み込んだ。
 狙った先は相手の中衛だ。
 後衛の魔弾を数度弾いて、急速に接近した。
「ッ!」
 中衛も咄嗟に対応しようとする。魔法かスキルか。
 しかし、襲ってきた魔弾がそれをさせない。
 的確なタイミングで放たれたセシルの援護だった。
 すごいな。ブラウン団長みたいだ。
 この距離での乱戦の中、ほぼ全てを当てに来た。
 相手の中衛は魔弾を避けて弾いてどうにか凌ぐ。
 だが、既に俺は相手の間合いに入ろうとしていた。
「こ、の!」
 狙われた少年は怒りに任せて長剣を払う。
 しかし、少しだけ狙った位置が高かった。
 足は止めず、姿勢を低くすることでやりすごす。
 相手の驚いた顔が見えた。
 一歩踏み込んで、俺は右手で小剣を斬り払った。
「……!」
 とにかく後ろへと飛び退くように相手は避ける。
 ――よし、ここだ。
 さらに一歩。全力で踏み込んだ。
 アッシュには及ばないが、今の体で出せる精一杯だ。
 相手が長剣を上段から振り下ろした。
 小剣を逆手に握り直す。そのまま返す刃で長剣を弾いた。
 空いている左手を相手の腹に当てる。
 今度こそ相手の顔が凍り付いた。
「魔弾よ、貫け」
 聞き慣れた言葉を口にした。相手の中衛が倒れる。
 開始早々に三対二になった俺達は勝負を有利に進めて、無事に勝利した。
 作戦と言えるほどでもないが、同じ標的を狙うようにだけ提案していたのだ。
「やったぞ! 何だお前、戦えるじゃないか!」
「失礼な。戦えないなんて言ってないだろう」
「……お疲れ」
 それぞれに喜びを表現する。
 無表情に見えるセシルも心なしか楽しそうだった。
 グレイにもみくちゃにされながら、ソフィアをちらりと見てしまう。
 口をへの字に曲げて、わざとらしく視線を逸らしていた。
 一番機嫌が悪い時の表情だな、と思った。