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第三部 5話 実技演習

ー/ー



「……ふう」

 必死に自分の情報を頭に叩き込んだ翌日。
 いくつかの授業をどうにか無事にこなした。

 ……いや、無事かどうかは分からない。
 授業の内容も分からなかったからだ。

 とりあえず、表面上は問題なかった。
 問題は次の授業。予定は『実技演習』とある。

 授業が始まると、担任のユーリ先生が入って来て説明を始めた。
 要約するとこんな感じだ。
 
 三人一組のチームで戦闘を想定して演習を行う。
 チームごとの総当たりを予定している。

「じゃ、自由に三人組でチームを作って」
 最後にユーリ先生は軽い調子で言った。

 困った俺はとりあえず周囲を見回した。
 学院に来る前からの知り合いはすでにチームを組んでいる。

 俺は知り合いがいないからそうはいかない。
 いや、違う。知り合いがいるかどうかも分からない。

「ははは! 分かりやすく困ってる奴がいる!」
 挙動不審な俺を笑う奴がいた。

 慌てて声の方へと向き直る。
 大きくてがっしりとした体つき。

 あまり背は高く見えない。
 だが、ハーフドワーフにしては高い方だろう。

「なんだよ」
「悪い悪い。俺達も困ってたんだ」

 俺が文句を言うと、ハーフドワーフの少年は言い訳をするように笑って見せる。愛嬌のある笑い方だった。
 
「? 俺達?」
 俺が後ろを見ると、女の子が少年の後ろに立っていた。

「……」
 女の子は眠そうな目でぺこりと頭を下げる。

 銀髪碧眼のハーフエルフ。
 結構な美少女だが、なんだか見覚えがある気がする?

「俺達は田舎の村出身でな。知り合いがいないから組める相手を探してるんだ。
 どうだ、相手がいないなら組まないか?」
「ああ、そういうことか。助かった。ぜひ組ませてくれ」
 すぐさま飛びついた。

「改めて。俺はキース・クロス」
「ああ、俺はグレイ・ウッドだ」
「……セシル・ルイス」
 三人がそれぞれ自己紹介を済ませる。

 良かった。何とかチームを組めた。
 ……『セシル・ルイス』?

「セシル・ルイス!?」
 俺が大声で叫び声を上げる。

 セシリーの妹じゃねえか!?
 田舎の村って、俺とナタリーがいた村かよ。

「……ひょっとして、お姉さんとかいる?」
 周囲からの視線を気にして声を落として訊き直す。

 セシルが小さく頷いた。やっぱりセシリーの妹だ。
 顔立ちがセシリーに似ているし、そもそも昔会っている。

「ああ、やっぱり有名人だからなぁ」
「有名人?」
「? だってそうだろ? 魔術師団副団長『セシリー・ルイス』の妹だ」
「副団長!?」
 俺がもう一度叫んだ。

 あいつ、そんなに出世してたのか。
 シェリーさんは引退……まあ、年齢を考えれば順当だな。

「……お前、一体何に驚いてるんだ?」
「?」
「いや、気にしないでくれ」
 首を傾げるグレイとセシルの視線から逃げるように目を逸らす。

 目を向けた先ではソフィアが大勢の生徒に囲まれていた。
 チームを組んで欲しいと頼まれているのだろう。

 これから戦うことを考えると憂鬱な気分になった。



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「……ふう」
 必死に自分の情報を頭に叩き込んだ翌日。
 いくつかの授業をどうにか無事にこなした。
 ……いや、無事かどうかは分からない。
 授業の内容も分からなかったからだ。
 とりあえず、表面上は問題なかった。
 問題は次の授業。予定は『実技演習』とある。
 授業が始まると、担任のユーリ先生が入って来て説明を始めた。
 要約するとこんな感じだ。
 三人一組のチームで戦闘を想定して演習を行う。
 チームごとの総当たりを予定している。
「じゃ、自由に三人組でチームを作って」
 最後にユーリ先生は軽い調子で言った。
 困った俺はとりあえず周囲を見回した。
 学院に来る前からの知り合いはすでにチームを組んでいる。
 俺は知り合いがいないからそうはいかない。
 いや、違う。知り合いがいるかどうかも分からない。
「ははは! 分かりやすく困ってる奴がいる!」
 挙動不審な俺を笑う奴がいた。
 慌てて声の方へと向き直る。
 大きくてがっしりとした体つき。
 あまり背は高く見えない。
 だが、ハーフドワーフにしては高い方だろう。
「なんだよ」
「悪い悪い。俺達も困ってたんだ」
 俺が文句を言うと、ハーフドワーフの少年は言い訳をするように笑って見せる。愛嬌のある笑い方だった。
「? 俺達?」
 俺が後ろを見ると、女の子が少年の後ろに立っていた。
「……」
 女の子は眠そうな目でぺこりと頭を下げる。
 銀髪碧眼のハーフエルフ。
 結構な美少女だが、なんだか見覚えがある気がする?
「俺達は田舎の村出身でな。知り合いがいないから組める相手を探してるんだ。
 どうだ、相手がいないなら組まないか?」
「ああ、そういうことか。助かった。ぜひ組ませてくれ」
 すぐさま飛びついた。
「改めて。俺はキース・クロス」
「ああ、俺はグレイ・ウッドだ」
「……セシル・ルイス」
 三人がそれぞれ自己紹介を済ませる。
 良かった。何とかチームを組めた。
 ……『セシル・ルイス』?
「セシル・ルイス!?」
 俺が大声で叫び声を上げる。
 セシリーの妹じゃねえか!?
 田舎の村って、俺とナタリーがいた村かよ。
「……ひょっとして、お姉さんとかいる?」
 周囲からの視線を気にして声を落として訊き直す。
 セシルが小さく頷いた。やっぱりセシリーの妹だ。
 顔立ちがセシリーに似ているし、そもそも昔会っている。
「ああ、やっぱり有名人だからなぁ」
「有名人?」
「? だってそうだろ? 魔術師団副団長『セシリー・ルイス』の妹だ」
「副団長!?」
 俺がもう一度叫んだ。
 あいつ、そんなに出世してたのか。
 シェリーさんは引退……まあ、年齢を考えれば順当だな。
「……お前、一体何に驚いてるんだ?」
「?」
「いや、気にしないでくれ」
 首を傾げるグレイとセシルの視線から逃げるように目を逸らす。
 目を向けた先ではソフィアが大勢の生徒に囲まれていた。
 チームを組んで欲しいと頼まれているのだろう。
 これから戦うことを考えると憂鬱な気分になった。