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第三部 1話 二回目

ー/ー



 目を開く。
 初めて見る天井だった。

「? ここは……」
 周囲を見回す。どうやら俺はベッドで寝ていたらしい。

 数秒間だけ、生まれ変わった事実を受け入れるために時間を使った。
 未だ『青鬼』の傷が残っている気さえする。

 やばい。自分が誰だか分からない。
 このままだと、また記憶喪失のふりをすることになる。

「誰かに会う前に少しでも情報を集めておかないと」
 自分の姿を見下ろす。十五歳程度か? 男。

 耳は……普通。髪は黒。
 印象としては人間のような気がする。

 部屋の中も探索してみた。
 見た限り、かなり裕福そうだ。

 クローゼットの中に普段着があったので、着替えておく。
 普段着ではない可能性を考えてはいけない。

 大きな机と大量の本があった。
 学生なのかもしれない。

 俺が必死に情報を集めていると、コンコンと扉がノックされた。
 びく、と体を震わせてから、恐る恐る答える。

「はい」
 ぼろを出さないように、返事は最小限だ。

 扉がそっと開かれる。
 隙間からちょこんと顔を出したのは女の子。

「兄さん」
 どうやら兄妹らしいと記憶する。

 しかし、髪の色は白。種族もハーフエルフだった。
 十二歳くらいに見えるが、良く分からない。

「……兄さん?」
「あ、ああ。どうした?」
 探り探り答える。

 女の子は不思議そうに首を傾げて微笑んだ。
 大人しい印象を受ける。今回の妹は良い子のようだ。

「お客さんが来たみたい。兄さんに会いたいって」
「……分かった」
 さて困った。どうしたものか。

 俺は一度部屋の外へと出る。
 そして、玄関に向かおうとして、立ち止まる。

 左右に廊下が続いていた。
 さて、我が家の玄関はどっちだったか?

「?」
「えーと……」
 困った俺は咄嗟に名も知らぬ妹らしき女の子を見る。

「ほ、ほら、そのお客さんに会いに行かないと」
「う、うん」
 半ば強引に先を促すと、後を追って玄関へと向かう。左だった。

 そうして、玄関まで来ると俺は相手を見て立ち尽くした。

「そういうことか、こんちくしょう」
 小さな声で毒づいた。

「兄を連れてきました」
「あー、わざわざすみませんねぇ」
 見覚えのある悪人面。そのくせ愛想の良い表情。

「お兄さん、少しお時間もらっても良いですか?」

 自称『神様で良いや』の使い。
 いつも都合よくやってくる行商人が、そこにいた。



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 目を開く。
 初めて見る天井だった。
「? ここは……」
 周囲を見回す。どうやら俺はベッドで寝ていたらしい。
 数秒間だけ、生まれ変わった事実を受け入れるために時間を使った。
 未だ『青鬼』の傷が残っている気さえする。
 やばい。自分が誰だか分からない。
 このままだと、また記憶喪失のふりをすることになる。
「誰かに会う前に少しでも情報を集めておかないと」
 自分の姿を見下ろす。十五歳程度か? 男。
 耳は……普通。髪は黒。
 印象としては人間のような気がする。
 部屋の中も探索してみた。
 見た限り、かなり裕福そうだ。
 クローゼットの中に普段着があったので、着替えておく。
 普段着ではない可能性を考えてはいけない。
 大きな机と大量の本があった。
 学生なのかもしれない。
 俺が必死に情報を集めていると、コンコンと扉がノックされた。
 びく、と体を震わせてから、恐る恐る答える。
「はい」
 ぼろを出さないように、返事は最小限だ。
 扉がそっと開かれる。
 隙間からちょこんと顔を出したのは女の子。
「兄さん」
 どうやら兄妹らしいと記憶する。
 しかし、髪の色は白。種族もハーフエルフだった。
 十二歳くらいに見えるが、良く分からない。
「……兄さん?」
「あ、ああ。どうした?」
 探り探り答える。
 女の子は不思議そうに首を傾げて微笑んだ。
 大人しい印象を受ける。今回の妹は良い子のようだ。
「お客さんが来たみたい。兄さんに会いたいって」
「……分かった」
 さて困った。どうしたものか。
 俺は一度部屋の外へと出る。
 そして、玄関に向かおうとして、立ち止まる。
 左右に廊下が続いていた。
 さて、我が家の玄関はどっちだったか?
「?」
「えーと……」
 困った俺は咄嗟に名も知らぬ妹らしき女の子を見る。
「ほ、ほら、そのお客さんに会いに行かないと」
「う、うん」
 半ば強引に先を促すと、後を追って玄関へと向かう。左だった。
 そうして、玄関まで来ると俺は相手を見て立ち尽くした。
「そういうことか、こんちくしょう」
 小さな声で毒づいた。
「兄を連れてきました」
「あー、わざわざすみませんねぇ」
 見覚えのある悪人面。そのくせ愛想の良い表情。
「お兄さん、少しお時間もらっても良いですか?」
 自称『神様で良いや』の使い。
 いつも都合よくやってくる行商人が、そこにいた。