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幕間2 1話 王様

ー/ー



 戴冠式の参列者は何故こうなったのか分からなかった。
 その王冠が彼の頭に載せられる様子を首を傾げて眺めている。

 かねてよりハーフエルフの国を建国しようという計画は上がっていた。
 ハーフエルフしか全容を把握できないほど広大な『エルフの森』を領土とした国だ。

 世界中に散らばったハーフエルフの寄る辺になろうという考えだった。
 長い時間を掛けて交渉を進め、ようやく漕ぎつけた建国である。

 当然、その玉座に座るのは由緒あるハーフエルフのはずだった。

 すなわち、大陸全土に散らばった『ハーフエルフの王族』である。
 だが『ハーフエルフの王族』はここ数年で有力者がほとんどいなくなってしまった。

 致命的だったのは王国のケルディアス家『アルバート王子』が殺された件である。
 あれで本来の候補は全て死んでしまった。

 その結果、急激に力を付けてきた彼がその座に付いた。
 
 彼らには知る由もない事だが本来は『ハーフエルフの王族』こそ『鍵』だった。
 数人が死ぬことはあっても、全員死ぬことは有り得ない運命だったのだ。

 しかし生き残った『アルバート王子』を運命に縛られない『レン・クーガー』が殺してしまった。

 その結果『ハーフエルフの新国』の玉座に彼は座っている。
 世界の端にある小さな新国の一人の王にすぎない。しかし、確かに運命とは違っていた。

 形式だけの儀式が終わる。
 彼は玉座から立ち上がると、王城のバルコニーへと顔を出す。

 建国を祝うハーフエルフ達が城下に集まっていた。
 万雷の拍手と歓声が彼を出迎える。

 彼はにこやかな笑みで手を振って見せた。



 戴冠式を終えると、彼は側近を連れて私室へ入っていった。
 私室にはすでに二つの人影があった。

「……茶番だなぁ」
 一つは椅子に深く腰掛けた『青鬼』だ。口元を軽く歪めている。

「いや! 俺は面白かったぞ」
 もう一つは部屋の中央で腕を組んだ『赤鬼』。こちらは随分と小柄になっていた。

「まあ、喜劇の類でしょうね」
 最後に側近へと化けていた『白鬼』が本来の姿に戻る。

 間違いなく『アッシュ・クレフ』を殺した鬼達だった。

「まったく。戻ったばかりなのにそんな事言いやがって。
 俺の晴れ舞台だぞ? もう少し祝ってくれよ」
『ハーフエルフの王』となった黒幕は心にもないことを口にしながら笑って見せた。



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 戴冠式の参列者は何故こうなったのか分からなかった。
 その王冠が彼の頭に載せられる様子を首を傾げて眺めている。
 かねてよりハーフエルフの国を建国しようという計画は上がっていた。
 ハーフエルフしか全容を把握できないほど広大な『エルフの森』を領土とした国だ。
 世界中に散らばったハーフエルフの寄る辺になろうという考えだった。
 長い時間を掛けて交渉を進め、ようやく漕ぎつけた建国である。
 当然、その玉座に座るのは由緒あるハーフエルフのはずだった。
 すなわち、大陸全土に散らばった『ハーフエルフの王族』である。
 だが『ハーフエルフの王族』はここ数年で有力者がほとんどいなくなってしまった。
 致命的だったのは王国のケルディアス家『アルバート王子』が殺された件である。
 あれで本来の候補は全て死んでしまった。
 その結果、急激に力を付けてきた彼がその座に付いた。
 彼らには知る由もない事だが本来は『ハーフエルフの王族』こそ『鍵』だった。
 数人が死ぬことはあっても、全員死ぬことは有り得ない運命だったのだ。
 しかし生き残った『アルバート王子』を運命に縛られない『レン・クーガー』が殺してしまった。
 その結果『ハーフエルフの新国』の玉座に彼は座っている。
 世界の端にある小さな新国の一人の王にすぎない。しかし、確かに運命とは違っていた。
 形式だけの儀式が終わる。
 彼は玉座から立ち上がると、王城のバルコニーへと顔を出す。
 建国を祝うハーフエルフ達が城下に集まっていた。
 万雷の拍手と歓声が彼を出迎える。
 彼はにこやかな笑みで手を振って見せた。
 戴冠式を終えると、彼は側近を連れて私室へ入っていった。
 私室にはすでに二つの人影があった。
「……茶番だなぁ」
 一つは椅子に深く腰掛けた『青鬼』だ。口元を軽く歪めている。
「いや! 俺は面白かったぞ」
 もう一つは部屋の中央で腕を組んだ『赤鬼』。こちらは随分と小柄になっていた。
「まあ、喜劇の類でしょうね」
 最後に側近へと化けていた『白鬼』が本来の姿に戻る。
 間違いなく『アッシュ・クレフ』を殺した鬼達だった。
「まったく。戻ったばかりなのにそんな事言いやがって。
 俺の晴れ舞台だぞ? もう少し祝ってくれよ」
『ハーフエルフの王』となった黒幕は心にもないことを口にしながら笑って見せた。