翌朝。私はさっさとご飯食べて部屋に戻る。
鏡とにらめっこしながらメイクして今日のために買ってもらったスーツ着た。
他のときにも使えるように黒のオーソドックスなやつ。スーツがシンプルな分、ボリュームあるフリルのブラウスと一個だけ持ってるネックレスつけてちょっとでも華やかにって工夫したんだ。
このあたりは昨日までに決めてたから悩むこともない。とりあえずの支度済ませて部屋を出ると、いったん玄関行って姿見の前で何度も回ってみる。変じゃないよね?
「夢ちゃん、綺麗よ。そのリップ、春らしくていい色ねぇ。派手すぎないし、いい感じだわ」
ダイニングに顔を出した私に、ママが感心したみたいに告げて来た。
「友達とめちゃめちゃ悩んで買ったから。テスターでいっぱい試したけど、見れば見るほど迷っちゃってさぁ。メイク、他におかしいとこない?」
「ううん、ないわ。上手じゃない」
その言葉にホッとする。
家で練習はしてたものの、まだメイクして出掛けたことないんだもん。
「スーツもこれでいい? ネックレス、合ってるよね」
「大丈夫、決まってるわよ。じゃあマニキュアね」
頷いて、私はダイニングの椅子に座って隣に座るママに両手を差し出した。
以前ほど見るからに「少女趣味のお姫様風」じゃなくなったものの、たぶん年からすれば可愛い部類のネイルの容器。
私の手を取ったママが、まずは右の人差し指に刷毛を滑らせた。そこから順に、爪が色を纏って行くのを見守る。
「はい、完成。乾くまで何も触らないでね。……は〜、人に塗るのって気を使うわ。ママだってもうマニキュアなんて全然しないもの」
ママの気合だか緊張が伝わったせいか、私も無意識に息詰めてたよ。十本分。