「夢ちゃん。せっかく服もお化粧もバッチリなんだから、マニキュアもしてみたら?」
大学の入学式の前日。
明日着るもの揃えて翌朝のシミュレーションしてた私は、ママの言葉にちょっと迷った。
例の最初の経験が引っかかっててさ。
いろんな考え方あるけど、私は「オシャレのためなら身体傷めても!」とまでは思えないの。
だからピアスホールも多分開けない。髪染めるのさえどうしようか躊躇ってるほどなんだから。
私は中高時代に奈々さんみたいな友達いなかったんだ。
そもそも奈々さんは、かなり自由な公立の共学高に通ってたからね。
メイクやヘアカラーは禁止だったらしいけど、髪型も制服以外の服装や持ち物もわりと何でもありなの。
私は中学から私立の女子校で、厳しいってほどじゃなくても靴や鞄、コートも決まってた。
だけど公立中行った友達が愚痴ってたような、髪の長さやスカート丈がどうのとか必死になる先生はいなかったよ。
生徒もあんまりそういうの気にしないからかも。
だって休みの日だけでもメイクする子なんて、私が知ってる限りはひとりもいないもん。
どっちかといえばみんな地味寄り。「飾るのなんか大学入ってからでいいでしょ」って雰囲気だった。進学校だしね。
そりゃ自由なとこがいいんなら、他にも学校なんて好きに選べるんだからわざわざ
母校来ないだろうしさ。
そもそも私の通ってた女子校は、それぞれ、あるいはグループで好き勝手な方を向いてても、「人は人」で他所のことには首突っ込まないって空気だった。なんか伝統的にそうらしい。
所謂カーストとかいうのはまったく無縁で、そんなのドラマの話じゃなくて現実であるの? ってくらいだったのよ。
団結力は弱いかもしれないけど、すっごい平和で楽しかったな。反目しあってバチバチなら疲れそうだけど、そんなんじゃないし。
「メイクもした方がいいんだよね? あ、服も買わなきゃ! 制服ないから着る服いちいち考えなきゃいけないんだ〜。そんなに私服持ってないよ!」
卒業式のあと、進路決まってた友達何人かと話したときもそんな感じだった。もうそういうレベルなわけ。