「それ落として。除光液持ってる?」
「なにそれ?」
じょこー、えーと何? ってくらい意味不明だったもんね。
「……マニキュアは専用の落とすものがいるのよ。買って来るわ」
その足で出掛けたママがドラッグストアで買って来た除光液で、私の十本の指先が拭われて桜貝みたいなネイルが消える。
「え、……あれ? なんか爪がヘン。ママ、これなんで!?」
僅かに白っぽくなった爪。
なんか指先もザラつく気がする。どうして?
「これ、普通のマニキュアでしょ? 子どもには刺激強すぎるのよ。除光液自体もかなりきついの。──ママは肌弱いから、あなたも似たのかもしれないわね」
ママが説明してくれるのも、その時はよく理解できてなかった。
「奈々さん何も言ってなかったよ?」
「ああ、奈々ちゃんにもらったの? 彼女はもう大学生だもの。それに奈々ちゃんだって、小中学生の時は何もしてなかったんじゃない?」
言われてみれば確かにそうだわ。
高校生になってから急に目覚めたっていうよりは、それまで我慢してたのかな。
そういえば、奈々さんが高校入った頃たまたま会って「やっといろいろできる!」って話してた覚えある。
だから私にくれたのかも。自分がしてみたかったこと、お裾分けしたくて?
私に似合いそうな可愛い色だからっていうのが本当だとしても、単に誰かに譲るだけならお友達でもいいものね。
とにかく私には、というか子どもだからかな? ネイルの成分が合わなかったみたい。
しばらく爪と指先の皮が妙な感じで気持ち悪かったな。
「夢ちゃん、ごめんね! あのネイル、使った?」
翌日学校から帰ったところを、奈々さんがマンションの前で待ち構えてた。
「あ、……はい。昨日塗りました。でも──」
「大丈夫だった? ホントごめん。あたし何も考えてなくて。お母さんについ言っちゃったらすごい怒られたのよ」
奈々さんが申し訳なさそうに謝ってくれる。
「
奈々が小学生の時、お化粧とか爪の色とか絶対ダメって言ったのは意地悪じゃないの! 子どもには害があるからよ! それをよそ様のお嬢さんに!」
おばさんにそう怒られたんだって。
「あー、こんななっちゃって……。痛くない? すぐ元に戻るといいんだけど」
私の手を取って爪と指先を確かめた奈々さんは、泣きそうな顔になってた。
「大丈夫です。全然痛くないし、マ、お母さんのハンドクリームつけてもらったから」
笑った私に、奈々さんはそれでも複雑そうな表情してた。
優しくて大好きなお姉さん。
私もこんな風になりたい、って思える素敵な人だったわ。