「夢ちゃん、これあげる」
小学校卒業する少し前だった。大学生になってた奈々さんが、桜色のネイルくれたんだ。
「パケ買いしたんだけど、あたしこの色合わなくて。だからって捨てるのもったいないし、ずっと置いといたら固まっちゃうのよ。うんと淡くて可愛い色だから、夢ちゃんみたいな若い子にならちょうどいいんじゃないかな」
「えー! ありがとう、奈々さん!」
私の手でも握れちゃうくらい小っちゃいのに、細工が凝っててとても可愛いパッケージ。それこそママが好きそうなデザインだったな。
初めてのネイル、自分の部屋でこっそり塗ってみた。左手はともかく右手がすごくやりにくくて、刷毛持った手が震えちゃったよ。
あと、結構匂いきついなって。初めてだからわかんないけど、こういうもの?
オシャレって色々我慢必要なんだね。
まあ乾いたら匂いは気にならなくなったけど。
「
夢佳! その爪なに?」
なるべく隠してたつもりだったけど、目ざといママに見つかってしまった。色は奈々さんの言葉通りホントに薄いから、私の不自然な態度で気づかれたのかもしれない。
……まあ、ずっと隠し通すなんて無理な話だよね。やっぱ子どもは考えが甘いって言われても仕方がないな。
「そういうコソコソするのってママ嫌いだわ」
ママは
娘のすることなすこと何もかも管理しなきゃ気がすまない、ってタイプじゃなかった。
どっちかというと自由にさせてくれる方だと感じてる。周りの友達の話とか聞いてると。
だけど、約束守るのとかは厳しかったのよ。私もそれは当たり前だと思うから別に不満ないわ。
だってさぁ、いい加減な子って学校にもいるけど結構周りが迷惑だから。
お化粧とかピアスとか茶髪とか、少なくとも高校卒業するまではダメって注意されてたし、私も納得してたの。
大学入ったら、もちろん費用は自分持ちだけどそのへんは好きにすればいいっていうのとセットだったしね。
だから私が悪いのはちゃんとわかってた。
叱られて当然だし、逆らう気はなかったんだ。