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【3】

ー/ー



「彬くん、ホントにいい人だよ! いくらなんでも、傷心の大事な友達にどうでもいい男なんか絶対引き合わせないから!」
 話し続けていた薫乃の声が強くなって、いつしか過去に飛んでいた意識が引き戻される。
 どうして他人の、──親しい友人とはいえ他人には変わりない瑠璃のために、こんなに必死になれるのだろう。
 内容よりも、そちらの方に瑠璃の興味は逸れてしまった。
 もともと薫乃に対しては、世話焼きの印象を持ったこともない。ましてや相手の意向を無視するかのような強引な押し付けなど、瑠璃が知る限りしそうにもない子だと感じていた。
 台詞通り、彼女はあの「彬くん」が瑠璃にとってプラスになる存在だと自信を持っているらしい。
 嬉しいとは、たとえ口先だけでも言えなかった。それでも、迷惑だと無条件に拒絶することもまた、できない。したくない。
 薫乃が、心底瑠璃の幸せを願ってくれているのだけは伝わるから。

 ──感謝すべき、なのかな。こんな友達がいることは、間違いなく財産だよね、私の。

「ねぇ、薫乃。城野、くんに私の事どれくらい話したの?」
 文句をつける気はなくとも、一応それだけは確認しておかなければ。
 薫乃は本当にデリケートな個人情報を、本人に無断で拡散するような真似はしないと信じてはいるけれども。
「どれくらい、って言ってもそんな詳しいことは何も。瑠璃の名前と顔は、彬くんもともと知ってたし」
「知ってた、ってなんで!? 私は彼のこと全然知らないのに」
 何気ない彼女の言葉に引っ掛かってしまい、瑠璃は思わず声を上げていた。
「そりゃ瑠璃はあたしとよく一緒にいるから、見掛けることもあったんでしょ。彬くんは駿ちゃんと仲良いから、自然とあたしとも絡み増えてたし。友達の名前くらい話の中でフツーに出るよ」
 そこでなぜか唐突に言葉を切った薫乃は、しばしの逡巡のあとで思い切ったようにまた口を開く。
「うーん、まあ、──実は彬くんが瑠璃のこと気にしてる風だったんだよね。いや、直接は何も言われてないんだけど!」
 やはり話すべきではなかったとでも思ったのか、薫乃は焦ったように早口になった。
「これはあくまでも、あたしと駿ちゃんが勝手にしたことだから。あたしたちに怒るのはいいけど、彬くんのこと悪く思わないで欲しいの」
「別に怒ってなんかないよ。薫乃が私のこと心配してくれてるのはちゃんとわかるもん」
 単なる社交辞令ではないのは通じたらしく、彼女は安心したように小さく息を吐いた。
「あ、瑠璃が不安なのってたぶんあのサークルの……、だと思うけど。そっち関連は一切何も触れてないから。今は彼氏いなくてフリーみたいだよ、ってだけ。そこは信用してほしいな」
 思った以上に、彼に流れたデータは少ないらしい。「失恋した」ことくらいは当然話題に上がっているものだと思っていたのに。
「どうしてもそんな気になれないって言うんならそれでいいんだ。でももし何かの切っ掛けになるんならいいなって。──瑠璃さえ嫌じゃなかったら、今度四人で遊びに行かない?」
「……もうちょっと、考えてからでいい?」
 結論を先送りする瑠璃の答えに、薫乃は笑顔で親指を立てて見せた。 


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「彬くん、ホントにいい人だよ! いくらなんでも、傷心の大事な友達にどうでもいい男なんか絶対引き合わせないから!」
 話し続けていた薫乃の声が強くなって、いつしか過去に飛んでいた意識が引き戻される。
 どうして他人の、──親しい友人とはいえ他人には変わりない瑠璃のために、こんなに必死になれるのだろう。
 内容よりも、そちらの方に瑠璃の興味は逸れてしまった。
 もともと薫乃に対しては、世話焼きの印象を持ったこともない。ましてや相手の意向を無視するかのような強引な押し付けなど、瑠璃が知る限りしそうにもない子だと感じていた。
 台詞通り、彼女はあの「彬くん」が瑠璃にとってプラスになる存在だと自信を持っているらしい。
 嬉しいとは、たとえ口先だけでも言えなかった。それでも、迷惑だと無条件に拒絶することもまた、できない。したくない。
 薫乃が、心底瑠璃の幸せを願ってくれているのだけは伝わるから。
 ──感謝すべき、なのかな。こんな友達がいることは、間違いなく財産だよね、私の。
「ねぇ、薫乃。城野、くんに私の事どれくらい話したの?」
 文句をつける気はなくとも、一応それだけは確認しておかなければ。
 薫乃は本当にデリケートな個人情報を、本人に無断で拡散するような真似はしないと信じてはいるけれども。
「どれくらい、って言ってもそんな詳しいことは何も。瑠璃の名前と顔は、彬くんもともと知ってたし」
「知ってた、ってなんで!? 私は彼のこと全然知らないのに」
 何気ない彼女の言葉に引っ掛かってしまい、瑠璃は思わず声を上げていた。
「そりゃ瑠璃はあたしとよく一緒にいるから、見掛けることもあったんでしょ。彬くんは駿ちゃんと仲良いから、自然とあたしとも絡み増えてたし。友達の名前くらい話の中でフツーに出るよ」
 そこでなぜか唐突に言葉を切った薫乃は、しばしの逡巡のあとで思い切ったようにまた口を開く。
「うーん、まあ、──実は彬くんが瑠璃のこと気にしてる風だったんだよね。いや、直接は何も言われてないんだけど!」
 やはり話すべきではなかったとでも思ったのか、薫乃は焦ったように早口になった。
「これはあくまでも、あたしと駿ちゃんが勝手にしたことだから。あたしたちに怒るのはいいけど、彬くんのこと悪く思わないで欲しいの」
「別に怒ってなんかないよ。薫乃が私のこと心配してくれてるのはちゃんとわかるもん」
 単なる社交辞令ではないのは通じたらしく、彼女は安心したように小さく息を吐いた。
「あ、瑠璃が不安なのってたぶんあのサークルの……、だと思うけど。そっち関連は一切何も触れてないから。今は彼氏いなくてフリーみたいだよ、ってだけ。そこは信用してほしいな」
 思った以上に、彼に流れたデータは少ないらしい。「失恋した」ことくらいは当然話題に上がっているものだと思っていたのに。
「どうしてもそんな気になれないって言うんならそれでいいんだ。でももし何かの切っ掛けになるんならいいなって。──瑠璃さえ嫌じゃなかったら、今度四人で遊びに行かない?」
「……もうちょっと、考えてからでいい?」
 結論を先送りする瑠璃の答えに、薫乃は笑顔で親指を立てて見せた。