大学入学と同時に入ったサークルで史也と出逢った。
明るくお調子者の顔が目立つ人気者。しかし彼は表面的な印象に反して頭の回転が速く、意外と神経細やかなところもあった。
無邪気な少年のようでいて、きちんと大人な面も併せ持つ魅力的なキャラクターだったのだ。
単に「友達・サークルの同輩」に向けた彼の優しさを、瑠璃は自分だけに与えられる特別なものだと捉えてしまった。勘違いしてしまった。
社交的で人当たりの良い彼にとっては、ごく当たり前の友情によるものに過ぎなかったのに。
気づいた時には、もうどうしようもないくらいに好きになっていた。密かに見つめているだけで満足だった。言葉を交わすだけで幸せになれた。
──そう思い込みたかっただけだと、今はわかっている。他人事として知らされたなら、「なにそれ? 気持ち悪い」と感じてしまうかもしれない独り善がりな片想い。
しかし瑠璃は、心のどこかで確かに期待していたのだ。彼が振り向いてくれる日が来ることを。恋に恋する中学生の少女のように。
二年生になる直前の三月だった。
やはりサークルの同学年の可愛い女の子と、史也はいつの間にか付き合うようになっていたらしい。
明るく染めて緩いウェーブを掛けたセミロングの髪が、少し幼い印象の顔立ちによく合っている小柄な彼女。
天然の茶色がかったストレートの長い髪。何より彼とは五センチも差がなく、ヒールを履いたらさして変わらない長身の部類の瑠璃とは、あまりにも違い過ぎた。
他のメンバーが二人を揶揄うシーンに居合わせた瞬間まで、その事実は瑠璃にとってはまさしく寝耳に水だったのだ。
別に彼らがコソコソ秘密裏に行動していたわけではない。ただ、瑠璃が見たくないものを見ない振りしていただけなのだろう。きっと。
もしかしたら。彼女より前に、瑠璃が積極的になっていたら。その先には違う未来があったのかもしれない。
性懲りもなくそんなことを考えていること自体が、現実逃避でしかない気がした。
──まず間違いなく瑠璃は、彼にとっての恋愛対象に入ってさえいなかったのだから。
失恋が辛くて、悲しくて。……しかしそれ以上に己の自惚れが恥ずかしくて、情けなくて堪らなかった。
本当の理由など告げられる筈もなく、瑠璃は慰留してくれる先輩や友人を振り切るようにしてサークルを辞めてしまった。