雑然とした雰囲気の、大学の学生食堂でのランチタイム。
一番仲の良い友人の
薫乃と並んでぽつぽつと話しながら、
瑠璃が日替わり定食を口に運んでいた時だった。
「あ!
駿ちゃん、こっちこっち!」
突然食事の手を止めた彼女が、軽く片手を上げて小声で呼び掛ける。
つられて顔を上げた瑠璃の視線の先に居たのは、薫乃の彼氏の
駿太だ。名を聞いてすぐに思い当たった通りの人物。何より瑠璃も彼とは同じ学部で親しいので、突然同席されることにも抵抗はない。
……問題は、駿太が一人ではなかったことだった。
「ここどうぞ~。あ、瑠璃。この人、理学部の
城野 彬くん。駿ちゃんと同じ高校なの」
「は、はじめまして。城野です」
二人が座る向かいの席を勧めてからの薫乃の言葉に、緊張が隠せない様子で挨拶する男子学生。細身で背が高く穏やかそうな雰囲気を漂わせていて、眼鏡がよく似合っている。
「で、この子が
遠山 瑠璃ちゃん」
次いで朗らかに、薫乃は瑠璃を彼に紹介した。
これではまるでお見合いではないか。
──ああ、や・ら・れ・た。
「瑠璃、騙し討ちみたいにしたのは悪かったよ。それはホントごめん!」
表面上は和やかだった顔合わせを終えて、学食で男子二人と別れて講義室へ向かう途中。
両手を合わせて詫びる薫乃に、瑠璃はなんとも返しようがなく黙って曖昧に頷いた。
「でもさ、恋の傷を癒すのは新しい恋だけだってよく聞くじゃん? あたしもそんな経験ないから、偉そうに言うなって話なんだけど。……も少し他に目を向けてみてもいいんじゃないかなぁって」
──新しい、恋。そんなもの。
何気ないありふれた単語が、まるで未知の言語のように心を上滑りして行った。
薫乃が瑠璃を心配して、思いやってくれての行動だというのは理解している。シンプルに「騙された」という怒りもまた、なかった。
それでも、素直に礼を言う気には到底なれなかったのだ。
恋を失くして、まだ一か月しか経たない。
──開く前に、片想いのまま萎れてしまった瑠璃の恋の花の蕾。