第二部 64話 約束とお願い
ー/ー「先生」
ソフィアが俺の隣にしゃがみ込む。
傷口を見ようとして、目を逸らす。
知ってはいたが、この様子では余程酷いらしい。
「ごめんなさい。私が無茶をしたから……」
「いえ、相手は周到に準備していました。避けられなかったでしょう」
掠れた声で返す。本気でそう思っていた。
ソフィアが何とも気まずそうな表情を浮かべる。
思わず苦笑してしまう。
「大丈夫ですよ。お嬢様が、悲しめないのは知っています」
「……そう。なら遠慮なく。先生が死んでも悲しくないわ」
いつも通りの俺の軽口に口を尖らせた。
その様子に思わず笑みを浮かべてしまう。
こんな時まで強がらなくても良いだろうに。
「でも、もう会えないのは寂しいわ」
「……お嬢様。お願いが二つあります」
未練を振り切るように、俺は声を上げた。
俺は自分の懐をごそごそと漁ると、動かない相棒を取り出した。
震える腕でソフィアに手渡す。
「俺の友達を預けます。『正しく』使ってくださいね?」
はい、とお行儀よく頷いた。俺が言いたいことは良く分かっているだろう。
使い魔に最後の挨拶ができないことは残念だった。
「もう一つ。お嬢様に頼むことじゃないのですが。
俺の妹を、ナタリーを守ってやって下さい。約束なんです」
「約束? ナタリーを守ることが?」
ソフィアの言葉に頷く。オリジナルとの約束だ。
「本当の俺は、何もなかったんです」
「――!」
いよいよ目が霞んで来た。あまり長くは持たないだろう。
「家族は兄さんしかいなくて。
なのに最期は、その兄さんに殺される有様で」
段々と意識が曖昧になってくる。
自分が何を呟いているのかも良く分からなくなってきた。
「兄さんが人を殺すことも止められなくて、気付けなくて」
ソフィアが悔しそうな顔をしているのが見えた。
そんな顔をさせるつもりじゃなかったんだけどなぁ。
「妹を守り切る約束で、全部もらったんですよ」
もう指一本も動かせないみたいだ。
「ああ――合わせる顔がないなぁ」
いつの間にか目の前に扉があった。
そこは真っ白い空間で、俺は扉に手を掛けた状態で止まっていた。
ソフィアが俺の隣にしゃがみ込む。
傷口を見ようとして、目を逸らす。
知ってはいたが、この様子では余程酷いらしい。
「ごめんなさい。私が無茶をしたから……」
「いえ、相手は周到に準備していました。避けられなかったでしょう」
掠れた声で返す。本気でそう思っていた。
ソフィアが何とも気まずそうな表情を浮かべる。
思わず苦笑してしまう。
「大丈夫ですよ。お嬢様が、悲しめないのは知っています」
「……そう。なら遠慮なく。先生が死んでも悲しくないわ」
いつも通りの俺の軽口に口を尖らせた。
その様子に思わず笑みを浮かべてしまう。
こんな時まで強がらなくても良いだろうに。
「でも、もう会えないのは寂しいわ」
「……お嬢様。お願いが二つあります」
未練を振り切るように、俺は声を上げた。
俺は自分の懐をごそごそと漁ると、動かない相棒を取り出した。
震える腕でソフィアに手渡す。
「俺の友達を預けます。『正しく』使ってくださいね?」
はい、とお行儀よく頷いた。俺が言いたいことは良く分かっているだろう。
使い魔に最後の挨拶ができないことは残念だった。
「もう一つ。お嬢様に頼むことじゃないのですが。
俺の妹を、ナタリーを守ってやって下さい。約束なんです」
「約束? ナタリーを守ることが?」
ソフィアの言葉に頷く。オリジナルとの約束だ。
「本当の俺は、何もなかったんです」
「――!」
いよいよ目が霞んで来た。あまり長くは持たないだろう。
「家族は兄さんしかいなくて。
なのに最期は、その兄さんに殺される有様で」
段々と意識が曖昧になってくる。
自分が何を呟いているのかも良く分からなくなってきた。
「兄さんが人を殺すことも止められなくて、気付けなくて」
ソフィアが悔しそうな顔をしているのが見えた。
そんな顔をさせるつもりじゃなかったんだけどなぁ。
「妹を守り切る約束で、全部もらったんですよ」
もう指一本も動かせないみたいだ。
「ああ――合わせる顔がないなぁ」
いつの間にか目の前に扉があった。
そこは真っ白い空間で、俺は扉に手を掛けた状態で止まっていた。
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