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第二部 53話 流通の要

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 何度か補給を繰り返して進むこと数日。
 馬車に乗り直して、俺達は都市『スーレ』まで戻って来た。

 ニナはまだ前線で指揮を取っているものの、組合長やユイはまだ滞在しているはずだった。

「ある程度の貢献はしたんだろうけど、休んで良いのか?」
「良いでしょうね。多分、ナタリーさんの貢献は先生が思うより大きいわ」
 ソフィアが溜息混じりに言う。
 
「スーレでは、念のため周囲に気を付けるようにしよう。
 レイン子爵を追い出したのだから、住民の恨みは買っているかも知れない」
 ブラウン団長の言葉に頷きながら、都市『スーレ』に入る。

 その光景は予想とは異なっていた。
 都市『スーレ』は王国軍への商売で滅茶苦茶に賑わっていたのだ。

 都市全体が好景気で大騒ぎ、と言った様子だ。
 あまりの浮かれ具合に、ソフィアが「こうはなりたくない」と呟いた。

「なんか……もう少しくらいしょんぼりしている印象だったんだけど……」
 ナタリーが首を傾げる。領主が襲撃されたことを言っているのだろう。

 馬車をゆっくりと走らせながら、街の様子を眺める。
 活気があり、先日の事件など覚えていないようだった。

 のんびりと進む馬車に、とん、と小さな影が飛び乗った。
 一際小柄なハーフドワーフ。
 
「ははは、この街の奴らがそんなタマかよ。
 商売のことしか考えてねえだろうよ」
 
「組合長!?」
「ふむ。随分な言われようだな」

 驚く俺を他所に、ブラウン団長が軽く返した。
 一応は擁護しておこう、程度の考えに見えるが。

「いやいや、事実だ。
 多分、レイン子爵の名前すら知らねえぞ?」

 言いながら皮肉げに微笑んだ。ある程度の根拠があるのだろう。
 最後に「残党はいるかも知れないけどな?」と物騒なことを呟く。

「どうしてわざわざ……」
 俺は気になったことを口にする。

 組合長は意味もなく馬車に乗り込む人物ではないと思っている。
 その考えを肯定するように、組合長が嫌な笑みを浮かべた。

「いや。良く働いてくれたから出迎えさ」
「忠告だ。単刀直入の方が彼の評価は上だ」
 組合長の言葉をブラウン団長がぴしゃりと跳ね除けた。

「ち。分かったよ。俺は『ナタリー・クレフ』を組合に入れたい。
 できれば兄の承認もあると嬉しくてな」

 俺は数秒間、目を大きく見開く。
 しかしすぐに笑ってしまった。

「はっはっは! ナタリー! 組合長からスカウトだ!
 就職先が決まって良かったじゃないか?」
「お兄ちゃん、田舎者っぽくて恥ずかしいよ……」
 冗談なのか過大評価なのかは不明だが、貰ってくれるならありがたい。

「どーも。話はそれだけだ。
 今回はご苦労さん。多分戦いは勝つ」
 そう言って、組合長はとん、と馬車を降りた。



「ラルフ。今の言葉は人材獲得の上で有利か?」
「見た目より価値があるでしょうね」
 馬車から降りた組合長の後を続きながら、ラルフが答えた。

「ちなみに俺への労いなどは?」
「お前は『白鬼』にやられてんじゃねえ」



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 何度か補給を繰り返して進むこと数日。
 馬車に乗り直して、俺達は都市『スーレ』まで戻って来た。
 ニナはまだ前線で指揮を取っているものの、組合長やユイはまだ滞在しているはずだった。
「ある程度の貢献はしたんだろうけど、休んで良いのか?」
「良いでしょうね。多分、ナタリーさんの貢献は先生が思うより大きいわ」
 ソフィアが溜息混じりに言う。
「スーレでは、念のため周囲に気を付けるようにしよう。
 レイン子爵を追い出したのだから、住民の恨みは買っているかも知れない」
 ブラウン団長の言葉に頷きながら、都市『スーレ』に入る。
 その光景は予想とは異なっていた。
 都市『スーレ』は王国軍への商売で滅茶苦茶に賑わっていたのだ。
 都市全体が好景気で大騒ぎ、と言った様子だ。
 あまりの浮かれ具合に、ソフィアが「こうはなりたくない」と呟いた。
「なんか……もう少しくらいしょんぼりしている印象だったんだけど……」
 ナタリーが首を傾げる。領主が襲撃されたことを言っているのだろう。
 馬車をゆっくりと走らせながら、街の様子を眺める。
 活気があり、先日の事件など覚えていないようだった。
 のんびりと進む馬車に、とん、と小さな影が飛び乗った。
 一際小柄なハーフドワーフ。
「ははは、この街の奴らがそんなタマかよ。
 商売のことしか考えてねえだろうよ」
「組合長!?」
「ふむ。随分な言われようだな」
 驚く俺を他所に、ブラウン団長が軽く返した。
 一応は擁護しておこう、程度の考えに見えるが。
「いやいや、事実だ。
 多分、レイン子爵の名前すら知らねえぞ?」
 言いながら皮肉げに微笑んだ。ある程度の根拠があるのだろう。
 最後に「残党はいるかも知れないけどな?」と物騒なことを呟く。
「どうしてわざわざ……」
 俺は気になったことを口にする。
 組合長は意味もなく馬車に乗り込む人物ではないと思っている。
 その考えを肯定するように、組合長が嫌な笑みを浮かべた。
「いや。良く働いてくれたから出迎えさ」
「忠告だ。単刀直入の方が彼の評価は上だ」
 組合長の言葉をブラウン団長がぴしゃりと跳ね除けた。
「ち。分かったよ。俺は『ナタリー・クレフ』を組合に入れたい。
 できれば兄の承認もあると嬉しくてな」
 俺は数秒間、目を大きく見開く。
 しかしすぐに笑ってしまった。
「はっはっは! ナタリー! 組合長からスカウトだ!
 就職先が決まって良かったじゃないか?」
「お兄ちゃん、田舎者っぽくて恥ずかしいよ……」
 冗談なのか過大評価なのかは不明だが、貰ってくれるならありがたい。
「どーも。話はそれだけだ。
 今回はご苦労さん。多分戦いは勝つ」
 そう言って、組合長はとん、と馬車を降りた。
「ラルフ。今の言葉は人材獲得の上で有利か?」
「見た目より価値があるでしょうね」
 馬車から降りた組合長の後を続きながら、ラルフが答えた。
「ちなみに俺への労いなどは?」
「お前は『白鬼』にやられてんじゃねえ」