眠くなるまで
ー/ー「真っ暗だな……」
真夜中に目が覚め、再び眠くなるまで星を眺めることにした。
寒さから身を守る為に服を着込み、ゆっくりとした足取りでベランダへと移動する。
その間電気は点けず、暗い階段を1段また1段と確実に登っていった。
最後の軋みを聞いて、ホッとすると同時に、左手はしっかり鍵の方へ伸ばしている。
“カチャリ”と下ろした鍵の音を合図に引戸を引いた。
“キィ―”という嫌な音がして、思わず耳を塞ぎたくなったが、周りが起きたら厄介なので、我慢をして外へ足を踏み出す。
「あれ?」
足の裏にベランダの固くて冷たい感覚が無いことに気付いた。
おかしいと思いつつ、そんな馬鹿なと自分に言い聞かせ、もう一歩足を踏み出してみた。
その刹那、体がふわりと浮き、直ぐ様猛スピードで落ちていく。
だが、不思議と恐怖はなかった。
“何故?”と考え始めたところで、目が覚める。
「何だ……夢か……」
布団の中でガックリと肩を落とした数秒後、音もなく近づいてきた兄が、何もなかった表情で覗き込んだ。
「おう、無事に帰って来たようだな!」
「?」
「駄目だぞ、勝手に遊んじゃあ」
「遊……えっ?」
「あの縦型滑り台はまだ完成していないのだから、下手をすると生きて帰れなくなる」
「滑り台……ああ!」
漸く事態を把握して、今まで出したことのない声を、兄の台詞に重ねるようにして発する。
その声に一瞬驚いた兄だったが、直ぐに真顔になり
「幾ら早く地上の人間達と触れ合いたいからといっても、お手付きは怪我をするから止めておけ」
と、注意して早足でその場を去った。
「……それなら、完成するまでしっかり封鎖しておいてよ」
板がないベランダを心に描き睨み付け、擦り傷だらけの右手を見つめながら、痛々しそうに呟いた。
お仕舞い
令和4(2022)年1月3日6:00~6:56作成
※pixivの小説書き始め企画だったような気がします。
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