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第二部 48話 白い鬼

ー/ー



 俺は『白鬼』が目撃された場所までやって来た。
 すぐ隣ではピノが油断なく周囲を警戒している。

 俺も辺りを見回した。
 市場は盛況で、人ごみで溢れていた。姿は見当たらない。

「ぴっ!」
 ピノが大きく鳴いた。

 示す方向へと目を向けると、人ごみに不釣り合いなほどに白い後ろ姿が見えた。『白鬼』は一度こちらを振り向いたが、気にした風もなく歩き続けた。

「リック。いつも以上に警戒してくれ」
 頷く気配。俺は罠を覚悟した上で、リックを構えて人ごみへと足を踏み入れた。

 しかし、数分も経たずに何事もなく人ごみを抜けた。
 拍子抜けしたような気がして首を傾げてしまう。

「逃がした、か」
 俺とピノの姿を見たかったのか?

 諦めて今の拠点へと戻ろうとする。
 しかし、予想外の声が掛かった。

「アッシュ!」
 見れば、王国軍に参加しているはずのラルフが歩いてくる。

「ラルフさん? どうしたんです?」
「いや、想定外の事態が起こった。『白鬼』が現れた」
「そちらでも? 俺達の方でもついさっき確認しました」
「そうか。情報の共有が必要だと思って、急いで来たんだが……不要だったかな?」
 いや、確かに共有すべき情報だろうな。警戒するべきだ。

「分かりました。とりあえず場所を変えましょう」
「そうだね。ここだと人目に付くかも知れない」
 俺は一度引き返そうと背中を向けた。

「待て、アッシュ!? あれはなんだ?」
「?」
 ラルフが後ろから俺の肩を叩いた。ラルフ示す方を見る。

 高速でこちらへと走る人影があった。
 あれは……? ラル、フ?

 痺れるような怖気が全身を走り回る。
 同時にすう、と。叩かれた肩から何かを吸い取られたような気がした。

 一瞬で意識が遠のいた。立っていられない。
 体が傾いてゆく。それでもすぐ隣のラルフを見遣った。

『白鬼』が本来の姿に戻る。
 白い体に鋭い角。不気味なほどに特徴のない中肉中背。

「そうか、やられた。姿を変えるスキル……」

『白鬼』が懐から短剣を抜き取った。
 倒れてゆく俺に突き立てようとする。

「ぴ!」

 そこにピノが割って入った。
 魔法陣を起動。障壁を展開して一撃を防ぐ。

 しかし『白鬼』はピノをがしっと掴んだ。
 それでもピノは負けじと間髪置かずに電撃を放つ。

『白鬼』が大きく下がった。
 朦朧とする意識で、大した小鳥だと思わずにはいられない。

「ぴ……?」
 しかし、ここまでだった。

 ピノがふらふらと落ちてゆく。
 やがて俺と一緒に地面で転がった。

『白鬼』は一歩踏み出して止めを刺そうとする。
 しかし高速で迫る本物のラルフを見ると、逆に一歩退いた。

「十分です。主戦力は剥がした。
 情報源も潰せたのは幸運ですね」

 呟きながら消えてゆく『白鬼』を見ながら、俺は意識を失った。
 残して来たナタリー達が気になった。

 敵の言う通り、この状況ではピノが落ちたのが大きい。



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 俺は『白鬼』が目撃された場所までやって来た。
 すぐ隣ではピノが油断なく周囲を警戒している。
 俺も辺りを見回した。
 市場は盛況で、人ごみで溢れていた。姿は見当たらない。
「ぴっ!」
 ピノが大きく鳴いた。
 示す方向へと目を向けると、人ごみに不釣り合いなほどに白い後ろ姿が見えた。『白鬼』は一度こちらを振り向いたが、気にした風もなく歩き続けた。
「リック。いつも以上に警戒してくれ」
 頷く気配。俺は罠を覚悟した上で、リックを構えて人ごみへと足を踏み入れた。
 しかし、数分も経たずに何事もなく人ごみを抜けた。
 拍子抜けしたような気がして首を傾げてしまう。
「逃がした、か」
 俺とピノの姿を見たかったのか?
 諦めて今の拠点へと戻ろうとする。
 しかし、予想外の声が掛かった。
「アッシュ!」
 見れば、王国軍に参加しているはずのラルフが歩いてくる。
「ラルフさん? どうしたんです?」
「いや、想定外の事態が起こった。『白鬼』が現れた」
「そちらでも? 俺達の方でもついさっき確認しました」
「そうか。情報の共有が必要だと思って、急いで来たんだが……不要だったかな?」
 いや、確かに共有すべき情報だろうな。警戒するべきだ。
「分かりました。とりあえず場所を変えましょう」
「そうだね。ここだと人目に付くかも知れない」
 俺は一度引き返そうと背中を向けた。
「待て、アッシュ!? あれはなんだ?」
「?」
 ラルフが後ろから俺の肩を叩いた。ラルフ示す方を見る。
 高速でこちらへと走る人影があった。
 あれは……? ラル、フ?
 痺れるような怖気が全身を走り回る。
 同時にすう、と。叩かれた肩から何かを吸い取られたような気がした。
 一瞬で意識が遠のいた。立っていられない。
 体が傾いてゆく。それでもすぐ隣のラルフを見遣った。
『白鬼』が本来の姿に戻る。
 白い体に鋭い角。不気味なほどに特徴のない中肉中背。
「そうか、やられた。姿を変えるスキル……」
『白鬼』が懐から短剣を抜き取った。
 倒れてゆく俺に突き立てようとする。
「ぴ!」
 そこにピノが割って入った。
 魔法陣を起動。障壁を展開して一撃を防ぐ。
 しかし『白鬼』はピノをがしっと掴んだ。
 それでもピノは負けじと間髪置かずに電撃を放つ。
『白鬼』が大きく下がった。
 朦朧とする意識で、大した小鳥だと思わずにはいられない。
「ぴ……?」
 しかし、ここまでだった。
 ピノがふらふらと落ちてゆく。
 やがて俺と一緒に地面で転がった。
『白鬼』は一歩踏み出して止めを刺そうとする。
 しかし高速で迫る本物のラルフを見ると、逆に一歩退いた。
「十分です。主戦力は剥がした。
 情報源も潰せたのは幸運ですね」
 呟きながら消えてゆく『白鬼』を見ながら、俺は意識を失った。
 残して来たナタリー達が気になった。
 敵の言う通り、この状況ではピノが落ちたのが大きい。