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#4

ー/ー



 鉄パイプにエレメントを宿し大槍を形成したカイル。
 そのまま敵ビヨンド目掛けて猛スピードで突っ込んで行った。

「ふんっ!」

 すかさず自身のエレメントを形成し盾のように防ぐ敵ビヨンドだがあまりの威力に思い切り吹き飛ばされてしまう。
 そのまま背後の壁に叩き付けられ吐血した。

「ごはっ……クソッ、もっと念入りに仕留めとくんだった……!」

 トドメを刺さなかった事、確認しなかった事を後悔するがもう遅い。

「だったらもう一度……っ!」

 全身にエネルギーを溜めて先程バンを破壊した時のような凄まじい一撃をもう一度放とうとする。
 これで仕留められなければ再度ガス欠が起こり今度こそ負けが確定するだろう。

「死ねこらぁぁぁぁっ!」

 覚悟を決めて全力を出し突撃する。
 思い切り飛び上がり、上から攻撃を叩き付ける姿勢に入った。

「……」

 しかしカイルは冷静である。
 静かに槍を構えエネルギーを先端に収束させる。

「はぁっ!」

 そして思い切り突きを繰り出した。
 その一撃は敵ビヨンドのエレメントを貫くどころか弾き飛ばすように破壊し、体にも絶大な衝撃を伝えた。

「ぐはぁぁっ……⁈」

 そのまま意識を失ってしまう敵ビヨンド。
 マイクはカイルの圧倒的な強さを見て衝撃を受けていた。

「す、すげぇ……!」

 そのまま当たり前のようにエレメントを解き普通の鉄パイプに戻したカイルは意識を失くした敵ビヨンドの体を担ぐ。

「……相性が良かっただけだ」

 そして謙遜とも受け取れる言葉を口にした。

「確かに小さい攻撃ラッシュの相手は重たい一撃ズドンのカイルの得意分野だよね〜」

 テレサもそう言うがマイクは更に驚いた。
 今の敵が小さい攻撃ラッシュだとは。
 マイクにとっては大きな脅威に感じたから。

「行くぞ、加勢に」

 休む間もなくサムエル達の所へ向かう事を決めたのだ。





 一方でサムエルとラミナは巨漢のビヨンドと戦闘を繰り広げていた。
 更に周囲には人間の構成員もおり拳銃を使い加勢してくる。

「ラミナ、大丈夫かっ⁈」

 拳銃による攻撃はラミナのエレメントで生成したエネルギーの盾で防いでいる。
 しかしそちらに意識が持って行かれ戦いに集中できない。

「アンタの援護さえなければ大丈夫なんだけどねっ」

 細い触手を伸ばし戦うサムエルにとって巨漢のビヨンドは天敵だった。
 先程カイルが言っていた相性が悪いのである。
 なのでラミナの援護は必須だった。

『ごめん、僕が戦えれば……』

 ジークからの無線が入るが彼は他にやる事がある。

「謝罪は良いからっ、アンタはやる事あるでしょ!」

『わかってるよ……!』

 ジークの仕事はその場から逃げた依頼主を探知し逃さない事だ。
 未だに相手の居場所は補足している。

『ヤバい、車乗り込むよっ!』

 しかし車に乗られてしまえばお終いだ。
 ジークは早く加勢に来てもらう事を望んだ。

「今は行けないぞ!」
 
 焦る一同だった、そこへ。

「っ⁈」

 なんと突然現れたカイルが鉄パイプで拳銃を撃つ人間を薙ぎ倒して行くのだ。

「カイルっ、無事だったか!」

「だがガス欠間近だ、最低限の力しか出せない」

 それでも人間たちの相手をしてくれるだけマシだった。
 サムエルとラミナは巨漢ビヨンドに集中できるから。

「十分だよっ!」

 そう言ったサムエルは触手を伸ばし巨漢ビヨンドに巻き付け動きを封じた。

「今だラミナ!」

 そしてラミナは右腕に砲台を造り出しエネルギーを溜める。

「指図するな!」

 そして一気に放ち巨漢ビヨンドは吹き飛んだ。
 彼らも勝利したのだ。

「よし、後は依頼主を……!」

 サムエルは慌てて依頼主の所へ向かおうとするがそこでジークから無線が入る。

『その必要はないよ、だって……』

 その無線と同時に彼らの所にマイクとテレサが。
 マイクの肩には気絶した依頼主が抱えられている。

「はいよ、捕まえといたぜ」

 そしてマイクは依頼主を差し出した。
 床には倒れている依頼主と数名の構成員、そして血まみれの巨漢ビヨンドだった。

「よし、じゃあ早速……あった」

 そして依頼主のポケットを探り彼の仕事で使うIDを入手するサムエル。
 しかしそこである動きがあった事にマイクだけ気付いていた。

「……っ!」

 なんとサムエルの背後で巨漢ビヨンドが立ち上がろうとしていたのである。
 その動きにラミナ達も気付いた。

「サムエルッ!」

 しかしエレメントを繰り出している余裕はない。
 既に巨漢ビヨンドはサムエルに襲いかかっている。

「っ……!」

 しかし次の瞬間、一発の銃声が響く。
 そして巨漢ビヨンドは腹部から出血しながら悶えていた。

「フンッ!」

 その隙を突いてサムエルが触手を振り首を跳ね飛ばす。
 捕える事は不可能となってしまったが何とか助かった。

「はぁ、はぁ……ナイスだマイク」

 なんと拳銃を撃ったのはマイクだった。
 急いで下に落ちていた構成員が使っていたものを拾い撃ったのだ。

「俺が撃ったのか……」

 呆然としているマイクだったがその余裕はない。
 サムエルがマイクの肩に手を置いて言った。

「帰るぞ、音を聞き付けて誰か来るかも知れない」

 そのまま彼らは依頼主のIDとパソコン、そして念のため他の構成員たちのIDも弄り持ち帰るのだった。
 その際一人だけ、気絶した敵ビヨンドだけはカイルが担いでいた。
 カオス・レクスとの関係を探るためである。
 




 外はすっかり暗くなっていた。
 エリア5に帰投した一同は敵ビヨンドを倉庫の椅子に縛り付け目覚めるまでの間にIDやパソコンから情報を得ようとしていた。

「良いのかアイツ、目ぇ覚めたらエレメント出すかも知れない」

 敵ビヨンドをただ縄やチェーンで縛り付けるだけで良いのか疑問を抱いたマイクはたまたま隣にいたカイルに尋ねてみる。

「抑制剤だ」

「抑制剤?」

「目覚めてもしばらくエレメントは出せない」

「そーゆーのがあるのか……」

 敵ビヨンドへの心配は必要ないと学んでいる所でサムエルがマイクに声を掛ける。
 隣に座り少しテンションを上げて話していた。

「さっきはありがとな、助かった」

 マイクが他人のために無理する事を嫌ったサムエルも感謝してくれた。
 その事実に少し胸が温かくなる。

「いや良いんだよ」

 そしてサムエルは少し試すように語り出す。

「お前さっきまで人が死ぬの怖がってたろ、何で急に行動できた?」

 その質問に対しマイクは少し考える。
 あの時とっさに動けた気持ちを整理して語った。

「死が当たり前だってなら阻止したいよ。目の前でそれが起ころうとしてた、怖いからこそ動けたんだ」

「まぁ俺は助かったけど敵は死んだぞ……?」

「それについても帰りながら考えたよ、やっぱ自分にとって優先すべき者はあるんだな」

 そこでマイクは父親が死んだ時、深く知った人物が死んだ事で起こった悲しみを語り出す。

「……あんな気持ちが当たり前なんて辛すぎだろ、出来れば近しい人ほどその想いはして欲しくない」

 その瞳には母親の姿が映っていた。
 たった数時間でここまで考えられるようになったマイクを見たサムエルは関心していた。

「はは、成長早すぎだろ」

しかしサムエルはすぐに真面目な表情を浮かべマイクに問う。

「でもお前に出来るか? それってつまり自分の周りを守る戦いって事だろ」

「あぁ、きっと敵も同じ想いだ。手強いのには違いない」

 そしてマイクは覚悟を決めて空を見上げた。

「だから俺は強くなる。エレメントだって使えるようになって戦力になるんだ、もう弟みたいな想いはさせないから」

 月明かりに照らされたマイクの決意に満ちた表情を横から見ていたサムエルは思わず彼の肩に手を回していた。
 するとそこへテレサも現れる。

「良いこと言うじゃんマイク、良かったね」

「何が?」

 "良かった"と言うテレサの意図が分からない。
 しかしその後すぐに彼女は答えを提示したのだ。

「頑張りを受け入れてくれる環境に来れて」

 その言葉で目を見開いてしまうマイク。
 少し涙が溢れそうだった。
 今まで母親は自分を認めてくれなかった、しかし今ここにいる人達は認めてくれている。

「ふふ、これで私たち家族の仲間入りだ!」

 優しく微笑みながら言ってくれるテレサにマイクはまた感動してしまう。
 "家族"という言葉で認めてくれた事に感謝を覚えた。

「家族か、確かにいいな」
 
 そのタイミングで石垣に座りパソコンで情報詮索をしていたジークが皆を呼んだ。

「何か怪しい情報来たよ〜」

 一斉にジークのパソコン画面を覗き込む一同。
 そこに書かれていたのはチャットのやり取りだった。

「相手は誰?」

「それを今からチェックするんだよ」

 ラミナは急かすがジークは冷静に内容をチェックしていく。

「チャット上では"Mr."と名乗ってるね、それに依頼主の口調から目上の人物と伺える……」

 そして決定的な内容を見つけてしまった。

「マジかぁ」

 そこにはテレサを攫う話、そしてピュリファインとの関わり等を記したやり取りが残されていた。

 
『この調子でピュリファインの動向を教えてくれ、くれぐれも正体を悟られぬようにな』

『もちろんですミスター。この調子ならばヤツらより先にテレサを手に入れられるでしょう』


 そのやり取りから察するに依頼主はMr.の指示でピュリファインにスパイとして潜入しており動向を伺っている。
 更にテレサを狙っているのはヤツらだけでなくピュリファインも同様だという事。

「何でピュリファインもテレサを……?」

 ラミナがそのような事を口にする。
 そこでマイクはずっと疑問に思っていた事を口にした。

「元人間だと何かあるのか? もしかしたら俺も……」

 するとラミナが少し呆れたように言う。

「元人間ね、それもあるだろうけど治癒能力も怪しいよね」

「治癒だって……?」

 そこでマイクは自身の胸に手を当ててみる。
 確かに自分は二度も死ぬような大怪我を負ったのにテレサに助けられた。

「アンタが死ななかったのもそのお陰。でもその原理は分かってない、エレメントとも違ったとんでもない力だと思われてる」

「だからそれを解明するために……?」

「もしくは既に分かってて利用しようとしてるか……」

 考えても結局は分からず仕舞いだ。
 だからこそジークが纏めるように呟く。

「にしてもとんでもない闇を覗いた気が……」

 丁度そのタイミング。
 なんと突然パソコンに異常が発生した。

「えっ、何だコレ⁈」

 突然エラーが発生しパソコン画面が赤く点滅を始めたのだ。

「まさかバレた⁈」

「そんなっ、ハッキング対策してたのか!」

 一同は慌てて身構える。
 するとエリア5の奥の方から何やら音が聞こえて来た。
 これは車が数台走って来る音か。

「何が来てる? 行こう……!」

 一同は慌てて音がする方へ向かって行く。
 焦りを覚えた彼らはとにかく走った。



 

 音のする方へやって来た一同。
 すると戦えないビヨンド達が大勢集まる居住地に見慣れた車が数台来ていた。

「まさかピュリファイン⁈」

「そんな!」

 ピュリファインの戦士と思わしき女性が部下を引き連れて住人たちに質問をしている。

「あ、噂をすれば来ましたね」

 小柄で可愛らしい茶髪の女性戦士だが高い戦闘能力を持っているオーラを感じられた。
 サムエル達の顔を確認して端末のデータと照らし合わせる。

「貴方たちですね、さっきサテライトエリアで騒動を起こしたのは。逮捕させて頂きます」

 ジークは信じられないと言った表情だ。

「何でバレたんだ……? 顔はまだしも居場所までそんな……!」

「ちゃんとマスクしてたろ⁈」

 サムエルも何故バレたのか分かっていない。
 しかし現に自分らを逮捕しに来たピュリファインがいる。

「こちらとしても戦いは避けたいので大人しく捕まってくれると有り難いのですが……」

 胸に装備したエネルギーを解放するような素振りを見せる女性ピュリファイン。
 背後の部下たちは機関銃を構えていた。
 つまり他の人々が人質に取られているような感覚なのである。

「みんな……っ!」

 そんな民衆の中でマイクは自分が助けたケビン少年の顔を見つける。
 ここは大人しくした方が良さそうだ。

「クソッ……!」

 サムエルもそれを察し先ほど戦った一同は大人しくお縄を頂戴する事にした。
 跪いて後ろで組んだ腕に手錠をはめられる。
 そしてそこから更に液体のようなものを注射された。

「いっ……⁈」

 全身の力が抜けて行くのを感じる、恐らくはこれが抑制剤だろう。

「まだいるかも知れない、捜索して!」

 女性ピュリファインは部下たちに指示を出しマイクら一行を頑丈な護送車に乗せた。
 その際にテレサと目が合ったマイクはある事を考える。

「(このままヤツらの本部まで行けばテレサを欲しがる理由が分かるかも知れない……!)」

 ただそれだけを希望に、まだ諦めるという選択肢はなかった。
 そのまま護送車に揺られ彼らはアストラルシティの中心に聳えるピュリファイン本部まで連行されたのだ。





TO BE CONTINUED……


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 そのまま敵ビヨンド目掛けて猛スピードで突っ込んで行った。
「ふんっ!」
 すかさず自身のエレメントを形成し盾のように防ぐ敵ビヨンドだがあまりの威力に思い切り吹き飛ばされてしまう。
 そのまま背後の壁に叩き付けられ吐血した。
「ごはっ……クソッ、もっと念入りに仕留めとくんだった……!」
 トドメを刺さなかった事、確認しなかった事を後悔するがもう遅い。
「だったらもう一度……っ!」
 全身にエネルギーを溜めて先程バンを破壊した時のような凄まじい一撃をもう一度放とうとする。
 これで仕留められなければ再度ガス欠が起こり今度こそ負けが確定するだろう。
「死ねこらぁぁぁぁっ!」
 覚悟を決めて全力を出し突撃する。
 思い切り飛び上がり、上から攻撃を叩き付ける姿勢に入った。
「……」
 しかしカイルは冷静である。
 静かに槍を構えエネルギーを先端に収束させる。
「はぁっ!」
 そして思い切り突きを繰り出した。
 その一撃は敵ビヨンドのエレメントを貫くどころか弾き飛ばすように破壊し、体にも絶大な衝撃を伝えた。
「ぐはぁぁっ……⁈」
 そのまま意識を失ってしまう敵ビヨンド。
 マイクはカイルの圧倒的な強さを見て衝撃を受けていた。
「す、すげぇ……!」
 そのまま当たり前のようにエレメントを解き普通の鉄パイプに戻したカイルは意識を失くした敵ビヨンドの体を担ぐ。
「……相性が良かっただけだ」
 そして謙遜とも受け取れる言葉を口にした。
「確かに小さい攻撃ラッシュの相手は重たい一撃ズドンのカイルの得意分野だよね〜」
 テレサもそう言うがマイクは更に驚いた。
 今の敵が小さい攻撃ラッシュだとは。
 マイクにとっては大きな脅威に感じたから。
「行くぞ、加勢に」
 休む間もなくサムエル達の所へ向かう事を決めたのだ。
 一方でサムエルとラミナは巨漢のビヨンドと戦闘を繰り広げていた。
 更に周囲には人間の構成員もおり拳銃を使い加勢してくる。
「ラミナ、大丈夫かっ⁈」
 拳銃による攻撃はラミナのエレメントで生成したエネルギーの盾で防いでいる。
 しかしそちらに意識が持って行かれ戦いに集中できない。
「アンタの援護さえなければ大丈夫なんだけどねっ」
 細い触手を伸ばし戦うサムエルにとって巨漢のビヨンドは天敵だった。
 先程カイルが言っていた相性が悪いのである。
 なのでラミナの援護は必須だった。
『ごめん、僕が戦えれば……』
 ジークからの無線が入るが彼は他にやる事がある。
「謝罪は良いからっ、アンタはやる事あるでしょ!」
『わかってるよ……!』
 ジークの仕事はその場から逃げた依頼主を探知し逃さない事だ。
 未だに相手の居場所は補足している。
『ヤバい、車乗り込むよっ!』
 しかし車に乗られてしまえばお終いだ。
 ジークは早く加勢に来てもらう事を望んだ。
「今は行けないぞ!」
 焦る一同だった、そこへ。
「っ⁈」
 なんと突然現れたカイルが鉄パイプで拳銃を撃つ人間を薙ぎ倒して行くのだ。
「カイルっ、無事だったか!」
「だがガス欠間近だ、最低限の力しか出せない」
 それでも人間たちの相手をしてくれるだけマシだった。
 サムエルとラミナは巨漢ビヨンドに集中できるから。
「十分だよっ!」
 そう言ったサムエルは触手を伸ばし巨漢ビヨンドに巻き付け動きを封じた。
「今だラミナ!」
 そしてラミナは右腕に砲台を造り出しエネルギーを溜める。
「指図するな!」
 そして一気に放ち巨漢ビヨンドは吹き飛んだ。
 彼らも勝利したのだ。
「よし、後は依頼主を……!」
 サムエルは慌てて依頼主の所へ向かおうとするがそこでジークから無線が入る。
『その必要はないよ、だって……』
 その無線と同時に彼らの所にマイクとテレサが。
 マイクの肩には気絶した依頼主が抱えられている。
「はいよ、捕まえといたぜ」
 そしてマイクは依頼主を差し出した。
 床には倒れている依頼主と数名の構成員、そして血まみれの巨漢ビヨンドだった。
「よし、じゃあ早速……あった」
 そして依頼主のポケットを探り彼の仕事で使うIDを入手するサムエル。
 しかしそこである動きがあった事にマイクだけ気付いていた。
「……っ!」
 なんとサムエルの背後で巨漢ビヨンドが立ち上がろうとしていたのである。
 その動きにラミナ達も気付いた。
「サムエルッ!」
 しかしエレメントを繰り出している余裕はない。
 既に巨漢ビヨンドはサムエルに襲いかかっている。
「っ……!」
 しかし次の瞬間、一発の銃声が響く。
 そして巨漢ビヨンドは腹部から出血しながら悶えていた。
「フンッ!」
 その隙を突いてサムエルが触手を振り首を跳ね飛ばす。
 捕える事は不可能となってしまったが何とか助かった。
「はぁ、はぁ……ナイスだマイク」
 なんと拳銃を撃ったのはマイクだった。
 急いで下に落ちていた構成員が使っていたものを拾い撃ったのだ。
「俺が撃ったのか……」
 呆然としているマイクだったがその余裕はない。
 サムエルがマイクの肩に手を置いて言った。
「帰るぞ、音を聞き付けて誰か来るかも知れない」
 そのまま彼らは依頼主のIDとパソコン、そして念のため他の構成員たちのIDも弄り持ち帰るのだった。
 その際一人だけ、気絶した敵ビヨンドだけはカイルが担いでいた。
 カオス・レクスとの関係を探るためである。
 外はすっかり暗くなっていた。
 エリア5に帰投した一同は敵ビヨンドを倉庫の椅子に縛り付け目覚めるまでの間にIDやパソコンから情報を得ようとしていた。
「良いのかアイツ、目ぇ覚めたらエレメント出すかも知れない」
 敵ビヨンドをただ縄やチェーンで縛り付けるだけで良いのか疑問を抱いたマイクはたまたま隣にいたカイルに尋ねてみる。
「抑制剤だ」
「抑制剤?」
「目覚めてもしばらくエレメントは出せない」
「そーゆーのがあるのか……」
 敵ビヨンドへの心配は必要ないと学んでいる所でサムエルがマイクに声を掛ける。
 隣に座り少しテンションを上げて話していた。
「さっきはありがとな、助かった」
 マイクが他人のために無理する事を嫌ったサムエルも感謝してくれた。
 その事実に少し胸が温かくなる。
「いや良いんだよ」
 そしてサムエルは少し試すように語り出す。
「お前さっきまで人が死ぬの怖がってたろ、何で急に行動できた?」
 その質問に対しマイクは少し考える。
 あの時とっさに動けた気持ちを整理して語った。
「死が当たり前だってなら阻止したいよ。目の前でそれが起ころうとしてた、怖いからこそ動けたんだ」
「まぁ俺は助かったけど敵は死んだぞ……?」
「それについても帰りながら考えたよ、やっぱ自分にとって優先すべき者はあるんだな」
 そこでマイクは父親が死んだ時、深く知った人物が死んだ事で起こった悲しみを語り出す。
「……あんな気持ちが当たり前なんて辛すぎだろ、出来れば近しい人ほどその想いはして欲しくない」
 その瞳には母親の姿が映っていた。
 たった数時間でここまで考えられるようになったマイクを見たサムエルは関心していた。
「はは、成長早すぎだろ」
しかしサムエルはすぐに真面目な表情を浮かべマイクに問う。
「でもお前に出来るか? それってつまり自分の周りを守る戦いって事だろ」
「あぁ、きっと敵も同じ想いだ。手強いのには違いない」
 そしてマイクは覚悟を決めて空を見上げた。
「だから俺は強くなる。エレメントだって使えるようになって戦力になるんだ、もう弟みたいな想いはさせないから」
 月明かりに照らされたマイクの決意に満ちた表情を横から見ていたサムエルは思わず彼の肩に手を回していた。
 するとそこへテレサも現れる。
「良いこと言うじゃんマイク、良かったね」
「何が?」
 "良かった"と言うテレサの意図が分からない。
 しかしその後すぐに彼女は答えを提示したのだ。
「頑張りを受け入れてくれる環境に来れて」
 その言葉で目を見開いてしまうマイク。
 少し涙が溢れそうだった。
 今まで母親は自分を認めてくれなかった、しかし今ここにいる人達は認めてくれている。
「ふふ、これで私たち家族の仲間入りだ!」
 優しく微笑みながら言ってくれるテレサにマイクはまた感動してしまう。
 "家族"という言葉で認めてくれた事に感謝を覚えた。
「家族か、確かにいいな」
 そのタイミングで石垣に座りパソコンで情報詮索をしていたジークが皆を呼んだ。
「何か怪しい情報来たよ〜」
 一斉にジークのパソコン画面を覗き込む一同。
 そこに書かれていたのはチャットのやり取りだった。
「相手は誰?」
「それを今からチェックするんだよ」
 ラミナは急かすがジークは冷静に内容をチェックしていく。
「チャット上では"Mr."と名乗ってるね、それに依頼主の口調から目上の人物と伺える……」
 そして決定的な内容を見つけてしまった。
「マジかぁ」
 そこにはテレサを攫う話、そしてピュリファインとの関わり等を記したやり取りが残されていた。
『この調子でピュリファインの動向を教えてくれ、くれぐれも正体を悟られぬようにな』
『もちろんですミスター。この調子ならばヤツらより先にテレサを手に入れられるでしょう』
 そのやり取りから察するに依頼主はMr.の指示でピュリファインにスパイとして潜入しており動向を伺っている。
 更にテレサを狙っているのはヤツらだけでなくピュリファインも同様だという事。
「何でピュリファインもテレサを……?」
 ラミナがそのような事を口にする。
 そこでマイクはずっと疑問に思っていた事を口にした。
「元人間だと何かあるのか? もしかしたら俺も……」
 するとラミナが少し呆れたように言う。
「元人間ね、それもあるだろうけど治癒能力も怪しいよね」
「治癒だって……?」
 そこでマイクは自身の胸に手を当ててみる。
 確かに自分は二度も死ぬような大怪我を負ったのにテレサに助けられた。
「アンタが死ななかったのもそのお陰。でもその原理は分かってない、エレメントとも違ったとんでもない力だと思われてる」
「だからそれを解明するために……?」
「もしくは既に分かってて利用しようとしてるか……」
 考えても結局は分からず仕舞いだ。
 だからこそジークが纏めるように呟く。
「にしてもとんでもない闇を覗いた気が……」
 丁度そのタイミング。
 なんと突然パソコンに異常が発生した。
「えっ、何だコレ⁈」
 突然エラーが発生しパソコン画面が赤く点滅を始めたのだ。
「まさかバレた⁈」
「そんなっ、ハッキング対策してたのか!」
 一同は慌てて身構える。
 するとエリア5の奥の方から何やら音が聞こえて来た。
 これは車が数台走って来る音か。
「何が来てる? 行こう……!」
 一同は慌てて音がする方へ向かって行く。
 焦りを覚えた彼らはとにかく走った。
 音のする方へやって来た一同。
 すると戦えないビヨンド達が大勢集まる居住地に見慣れた車が数台来ていた。
「まさかピュリファイン⁈」
「そんな!」
 ピュリファインの戦士と思わしき女性が部下を引き連れて住人たちに質問をしている。
「あ、噂をすれば来ましたね」
 小柄で可愛らしい茶髪の女性戦士だが高い戦闘能力を持っているオーラを感じられた。
 サムエル達の顔を確認して端末のデータと照らし合わせる。
「貴方たちですね、さっきサテライトエリアで騒動を起こしたのは。逮捕させて頂きます」
 ジークは信じられないと言った表情だ。
「何でバレたんだ……? 顔はまだしも居場所までそんな……!」
「ちゃんとマスクしてたろ⁈」
 サムエルも何故バレたのか分かっていない。
 しかし現に自分らを逮捕しに来たピュリファインがいる。
「こちらとしても戦いは避けたいので大人しく捕まってくれると有り難いのですが……」
 胸に装備したエネルギーを解放するような素振りを見せる女性ピュリファイン。
 背後の部下たちは機関銃を構えていた。
 つまり他の人々が人質に取られているような感覚なのである。
「みんな……っ!」
 そんな民衆の中でマイクは自分が助けたケビン少年の顔を見つける。
 ここは大人しくした方が良さそうだ。
「クソッ……!」
 サムエルもそれを察し先ほど戦った一同は大人しくお縄を頂戴する事にした。
 跪いて後ろで組んだ腕に手錠をはめられる。
 そしてそこから更に液体のようなものを注射された。
「いっ……⁈」
 全身の力が抜けて行くのを感じる、恐らくはこれが抑制剤だろう。
「まだいるかも知れない、捜索して!」
 女性ピュリファインは部下たちに指示を出しマイクら一行を頑丈な護送車に乗せた。
 その際にテレサと目が合ったマイクはある事を考える。
「(このままヤツらの本部まで行けばテレサを欲しがる理由が分かるかも知れない……!)」
 ただそれだけを希望に、まだ諦めるという選択肢はなかった。
 そのまま護送車に揺られ彼らはアストラルシティの中心に聳えるピュリファイン本部まで連行されたのだ。
TO BE CONTINUED……