エピローグ
ー/ー 煌びやかな城内で夜会が行われている。
しかし、思った以上に招待客は訪れておらず、目に見えて閑散としているのがわかる。
「……チッ!」
「行儀が悪いぞアベル」
アリーズ王国の定例の夜会がこのありさまでは示しがつかないと、現王太子のアベル=フォン=アリーズは苛立ち、自然と、公の場でありながら態度を悪くしていしまっている。
元王太子であったユーステッドがアリーズ王国を去ってから、弟であるアベルが兄に代わり父である国王と共に公務や外交に付き添い、表に現れ始めてから半年。今日はアベルの婚約披露も含まれているの記念の夜会。
賢さでは兄に勝っていたものの、人付き合いは苦手なアベルの人望は薄く、結果として寂しい夜会となってしまっている。
「気にすることはないアベル。余はお前に期待している。この婚約も国と国との和平の為の契約だ。お前はそれに従っていればよい」
「はい父上……」
「まったく……訳の分からない手紙を隣国の王子に届けたと思えば今度は幸せです……だと。ユーステッドではなくお前が残ってくれていて本当に安心しておる……のう?アベルよ」
過度な期待を受けるアベルは徐々に顔色を曇らせる。
兄がそうなるように仕向けた自分を……恨むように。
「おーっほっほっほっほっほ!!!アベル様はどこにいらっしゃいますのー???」
勢いよく開いた扉から現れた令嬢は高らかな笑い声をあげアベルを探す。
「や、やぁ……モモ・サジタリウス王女……」
「あらあらあらぁ~?どうなさいましたの?お顔が優れなくてよ?」
高圧的な態度にアベルは引き気味になっているが……婚約者となる彼女に膝をついて手の甲にキスをする。
「うふふ……今日はとてもいい日ですわね?アベル殿下?」
「あ、あぁ……そうだね……」
「ねぇアベル殿下?わたくしが……あなたの婚約者になる事を承諾したのはなぜだと思います?」
突然の質問にアベルはうろたえる。
「それは……隣国同士の絆と和平の象徴として……」
「まさかそれだけだとお思いですの?賢いだの優秀だの……聞いてあきれますわねぇ……?」
冷たく返事をされ、刺さるような視線を向けられ、青ざめるアベルの耳元で囁き告げるモモ。
「貴方がユーステッドお兄様になにをしたのか知らないと思ってるの?この国にに居られなくなるようにそそのかしたことを……知らないとでも思ってるの?わたくしは……わたくしもホセお兄様も……絶対に許すつもりは無くってよ?」
「な、なんで……知って……」
「わたくしの想いが届くことはなかったけれど……この婚約はわたくしからユーステッドお兄様へのご祝儀ですの」
モモはにっこりと笑って、アベルの腕に絡みつき、嬉しそうに肩に頭を乗せる。
「モモ嬢……アベルと仲が良いようでなによりだ。これからもアベルをよろしく頼むぞ」
「もちろんですわ陛下。アベル殿下のことは任せてくださいまし!」
「ち、父上……ぼ、ぼくは……」
「ねぇ?これから末永く……幸せに……なりましょう?ねぇ?アベル殿下……?」
ユーステッドがデルフィヌスで幸せに暮らし始めたと同時に、弟のアベルにも幸せが訪れていた。
「おーっほっほっほっほっほ!!!」
「いやだ……こんな婚約は……いやだぁぁっ!!」
今夜の夜会は素晴らしいものになる事は、間違いないだろう。
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