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第二部 44話 定期連絡

ー/ー



 レイン子爵領。
 都市『スーレ』で、ニナ達は作戦会議を開いていた。

 公爵が内乱鎮圧に使う予定だった兵が到着したからだ。
 あの時点では連合の軍が王都に侵入するような事態はなかったから単純だった。

 ニナは心労を押し殺して会議を進めようとして――

「ぴ」

 ――口先で窓を軽くつつく小鳥に気が付いた。



「これ、は……」
 ピノが渡した資料を見て、ニナは言葉が出なかった。

 予想を遥かに上回る情報量と価値があった。

『交易大都市』および『衛星都市』全体を上空から描いた俯瞰図。

 兵数はもちろん、兵力の配置。
 伯爵軍と連合軍でしっかりと分けてある。

 検問の位置。それぞれの検査の厳格さ。
 都市巡回の経路とその頻度。

 案として考えられる都市までの経路。
 各経路で接敵が想定される位置。その際の戦闘規模と詳細な地形情報。

 知りたかった連合の介入の度合い。連合はいつでも逃げられるようにしていて、現時点では総力戦にはならないと予想されるということだった。

 これからはさらに詳しい情報が送られてくることだろう。

「……おい、どうした?」
 組合長が不機嫌そうにニナを睨む。

「見れば分かります」
 ニナは動揺を隠せずに資料を組合長に手渡した。

 組合長はじっと資料を眺めている。
 何度も何度も見直しているようだった。

 ピノは遊ぶように部屋の中を飛び回っている。
 目で追い切れないほどの速度で移動を繰り返していた。

「く……」
 やがて組合長は口元を歪めると、大声で笑い始めた。

 ニナの気持ちは見れば分かったということだろう。
 すでに不機嫌さは消えたようだ。

「勝った」

 組合長ははっきりと断言した。
 ニナも反論はしなかった。

 組合長はさらに続ける。
「おい、ラルフ! 最重要命令だ」
「はい?」
 隣に座るラルフが惚けた声を上げた。

「この『ナタリー・クレフ』が王立学院を卒業したら必ず組合に入れろ。
 そのためのコストは何でも払え!」

 ニナが溜息を零す。
 こうなると思ったのだ。

「では、騎士団と取り合いになりますね?」
「はは、それは仕方ない」

 会議はすぐに進んでいった。
 現在の相手戦力であれば、スーレに到着した兵数で十分だった。

 本来なら警戒しながら伯爵領を進むことになるが、今回はピノの情報に対して最低限の裏だけ取りながら進む。

 連合が兵力を増強する前に攻め落とす算段だ。
 もっとも、増えたらこちらも増やせば良いという状況だが。
 勝算は十分以上だった。

 ニナはもう一度、ピノを見る。同時に姿が消えた。
 いつの間にかニナの頭の上で丸まっている。

 赤毛を物珍しそうに眺めていた。

 ただ一人。
 公爵令嬢の世話係であるユイは冷や汗を流していた。

 ソフィアがいなくなったことを言い出せずにいる。
 消えた本人も口止めしているのだから質が悪かった。



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 レイン子爵領。
 都市『スーレ』で、ニナ達は作戦会議を開いていた。
 公爵が内乱鎮圧に使う予定だった兵が到着したからだ。
 あの時点では連合の軍が王都に侵入するような事態はなかったから単純だった。
 ニナは心労を押し殺して会議を進めようとして――
「ぴ」
 ――口先で窓を軽くつつく小鳥に気が付いた。
「これ、は……」
 ピノが渡した資料を見て、ニナは言葉が出なかった。
 予想を遥かに上回る情報量と価値があった。
『交易大都市』および『衛星都市』全体を上空から描いた俯瞰図。
 兵数はもちろん、兵力の配置。
 伯爵軍と連合軍でしっかりと分けてある。
 検問の位置。それぞれの検査の厳格さ。
 都市巡回の経路とその頻度。
 案として考えられる都市までの経路。
 各経路で接敵が想定される位置。その際の戦闘規模と詳細な地形情報。
 知りたかった連合の介入の度合い。連合はいつでも逃げられるようにしていて、現時点では総力戦にはならないと予想されるということだった。
 これからはさらに詳しい情報が送られてくることだろう。
「……おい、どうした?」
 組合長が不機嫌そうにニナを睨む。
「見れば分かります」
 ニナは動揺を隠せずに資料を組合長に手渡した。
 組合長はじっと資料を眺めている。
 何度も何度も見直しているようだった。
 ピノは遊ぶように部屋の中を飛び回っている。
 目で追い切れないほどの速度で移動を繰り返していた。
「く……」
 やがて組合長は口元を歪めると、大声で笑い始めた。
 ニナの気持ちは見れば分かったということだろう。
 すでに不機嫌さは消えたようだ。
「勝った」
 組合長ははっきりと断言した。
 ニナも反論はしなかった。
 組合長はさらに続ける。
「おい、ラルフ! 最重要命令だ」
「はい?」
 隣に座るラルフが惚けた声を上げた。
「この『ナタリー・クレフ』が王立学院を卒業したら必ず組合に入れろ。
 そのためのコストは何でも払え!」
 ニナが溜息を零す。
 こうなると思ったのだ。
「では、騎士団と取り合いになりますね?」
「はは、それは仕方ない」
 会議はすぐに進んでいった。
 現在の相手戦力であれば、スーレに到着した兵数で十分だった。
 本来なら警戒しながら伯爵領を進むことになるが、今回はピノの情報に対して最低限の裏だけ取りながら進む。
 連合が兵力を増強する前に攻め落とす算段だ。
 もっとも、増えたらこちらも増やせば良いという状況だが。
 勝算は十分以上だった。
 ニナはもう一度、ピノを見る。同時に姿が消えた。
 いつの間にかニナの頭の上で丸まっている。
 赤毛を物珍しそうに眺めていた。
 ただ一人。
 公爵令嬢の世話係であるユイは冷や汗を流していた。
 ソフィアがいなくなったことを言い出せずにいる。
 消えた本人も口止めしているのだから質が悪かった。