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第二部 42話 伯爵領

ー/ー



 次の日。
 出発の準備を整えると、関係者達が顔を合わせていた。

 ……何人か、昨日の騒ぎを引き摺っている人もいたが。

「では、最後に作戦の確認だけ」
 ニナが口を開いた。俺は頷く。

「アッシュ、魔術師団長殿、ナタリー、アリス。
 このメンバーを正式な斥候とします。十人の騎士団員を補佐に付けます」
「はい」
「本隊との連絡はナタリーの使い魔『ピノ』を使用します。
 緊急時はもちろん、定期連絡も忘れないように」
「はい」

 改めて頷き合って、俺達は馬車に乗り込む。
 伯爵領に入るまでは馬車を使う計画だった。

 改めて最後の挨拶だけ済ませると、俺達は伯爵領へと出発した。

 子爵領は広くない。伯爵領にはその日の内にたどり着いた。
 すぐに入るのではなく、一度近くの森に立ち寄った。

 馬車はここで乗り捨てる予定だ。
 馬車には物資を多く積んで来た。

 ブラウン団長の提案で、いざという時はここに集合することになった。
 ここまでは驚くほどに順調だった。

「ナイフくらいは持っておくか……?」
 リックはいるが、持ち物を使い魔だけにする必要もないだろう。

 俺は馬車の中を物色し始める。馬車に乗ったメンバーは全員が御者台にいたので、何が積まれているのかは把握していなかった。
 
「ナイフ……ナイフ……」
 俺がごそごそと、積み荷からナイフを探す。

「一番後ろの箱よ」
「ん? これ?」
 声に従って、積み荷を開ける。

「おお、あったあった。ありがとう」
 ナイフを手に取る。

「いいえ。気にしなくて大丈夫よ。あ、でも、そのナイフは良くないわ。
 もう少し奥のナイフの方が取り回しが良いのよ?」
「へえ」
 言われた通りにナイフを持ち直す。確かに手に馴染んだ。
 
「確かにしっくりきますね。ありがとうございます、お嬢様」
「ええ、どういたしまして」
 一通りの会話を終えて、気が付いた。

「お嬢様!? なんでいるんですか!」

 話を聞くと、どうやらソフィアはスーレで影武者を見つけていたらしい。
 ユイにだけ書き置きを残して馬車に忍び込んだとのこと。

 確かに、これなら表面上は問題ないけどさぁ。

「……ソフィア様」
 ブラウン団長は可哀想だった。今更帰すわけにもいかないのだから。



「飽きたー!」

 隣の馬から叫び声が聞こえる。何度目だろうか。
 ナタリーがバタバタと暴れながら馬を器用に操っていた。

 俺達は馬で数日間進んでいた。
 ナタリーが飽きるのも無理はない。伯爵領は単調な風景が続くばかりだ。
 
「見えたわ」
 しかし、すぐ後ろからソフィアの声がした。

 目を凝らせば、交易大都市『ベックリン』が見えていた。

 中心にあるのが『ベックリン』だが、都市の近くへ群がるように多くの町が出来上がっている。
 都市は高い税を取っているため、言い逃れのために別の町ができるのだ。

 俺達はこの町を移動しながら『ベックリン』の情報を集めていく予定だ。



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 次の日。
 出発の準備を整えると、関係者達が顔を合わせていた。
 ……何人か、昨日の騒ぎを引き摺っている人もいたが。
「では、最後に作戦の確認だけ」
 ニナが口を開いた。俺は頷く。
「アッシュ、魔術師団長殿、ナタリー、アリス。
 このメンバーを正式な斥候とします。十人の騎士団員を補佐に付けます」
「はい」
「本隊との連絡はナタリーの使い魔『ピノ』を使用します。
 緊急時はもちろん、定期連絡も忘れないように」
「はい」
 改めて頷き合って、俺達は馬車に乗り込む。
 伯爵領に入るまでは馬車を使う計画だった。
 改めて最後の挨拶だけ済ませると、俺達は伯爵領へと出発した。
 子爵領は広くない。伯爵領にはその日の内にたどり着いた。
 すぐに入るのではなく、一度近くの森に立ち寄った。
 馬車はここで乗り捨てる予定だ。
 馬車には物資を多く積んで来た。
 ブラウン団長の提案で、いざという時はここに集合することになった。
 ここまでは驚くほどに順調だった。
「ナイフくらいは持っておくか……?」
 リックはいるが、持ち物を使い魔だけにする必要もないだろう。
 俺は馬車の中を物色し始める。馬車に乗ったメンバーは全員が御者台にいたので、何が積まれているのかは把握していなかった。
「ナイフ……ナイフ……」
 俺がごそごそと、積み荷からナイフを探す。
「一番後ろの箱よ」
「ん? これ?」
 声に従って、積み荷を開ける。
「おお、あったあった。ありがとう」
 ナイフを手に取る。
「いいえ。気にしなくて大丈夫よ。あ、でも、そのナイフは良くないわ。
 もう少し奥のナイフの方が取り回しが良いのよ?」
「へえ」
 言われた通りにナイフを持ち直す。確かに手に馴染んだ。
「確かにしっくりきますね。ありがとうございます、お嬢様」
「ええ、どういたしまして」
 一通りの会話を終えて、気が付いた。
「お嬢様!? なんでいるんですか!」
 話を聞くと、どうやらソフィアはスーレで影武者を見つけていたらしい。
 ユイにだけ書き置きを残して馬車に忍び込んだとのこと。
 確かに、これなら表面上は問題ないけどさぁ。
「……ソフィア様」
 ブラウン団長は可哀想だった。今更帰すわけにもいかないのだから。
「飽きたー!」
 隣の馬から叫び声が聞こえる。何度目だろうか。
 ナタリーがバタバタと暴れながら馬を器用に操っていた。
 俺達は馬で数日間進んでいた。
 ナタリーが飽きるのも無理はない。伯爵領は単調な風景が続くばかりだ。
「見えたわ」
 しかし、すぐ後ろからソフィアの声がした。
 目を凝らせば、交易大都市『ベックリン』が見えていた。
 中心にあるのが『ベックリン』だが、都市の近くへ群がるように多くの町が出来上がっている。
 都市は高い税を取っているため、言い逃れのために別の町ができるのだ。
 俺達はこの町を移動しながら『ベックリン』の情報を集めていく予定だ。