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第二部 37話 合流

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 組合長との約束である以上、レイン子爵は逃がした。
 自然に逃げるように芝居を打ったらしい。

 そのまま都市『スーレ』で数日を過ごすと、騎士団がやって来た。
 シェリーはヒルダ団長に伝えてくれたようだ。

「お久しぶりですね、ニナさん?」
「……アッシュ。事情は分かりますが、独断が多くないですか?」

 制圧したレイン子爵の屋敷で、俺達は再会した。
 上司に笑い掛けるものの、小言を返されて俺は目を逸らした。

 本来、一番隊は防衛、二番隊は遠征、三番隊は遊撃、と役割が分かれている。
 二番隊と三番隊が出払っていたため、一番隊がこちらに出向いたらしい。

 一番隊の隊長は騎士団長も兼ねるので、王都を離れられない。
 副隊長のニナが指揮官だった。割とよくある流れなのだが。

「まあ、良いです。
 事情は一通り聞きました。結果は悪くない」
 溜息を吐きながらも、ニナは許してくれたようだった。

「あの、それよりも……」
 次は俺の番だった。ニナさんの後ろを示す。

「あ! ソフィアちゃんだ!」
 俺が示した張本人。ナタリー・クレフが飛び出した。

「? ナタリーさん?」
 俺の後ろでソフィアが不思議そうな声を出す。
 すでに抱き着かれていた。

「……それよりも、どうして皆がいるんですか?」
 仕切り直して、俺はニナへと訊いた。

 ニナと一緒に、ナタリーアリスとブラウン団長がやって来ていた。
 ニナは答えられず、代わりにブラウン団長が前に出た。

「私とアリスが来た理由は分かるだろう?」
「――!」
 ブラウン団長が俺を見る。

 ソフィアの件を聞いて、ブラウン団長とアリス――厳密には加奈だが――は心配して来てくれたのか。確かに相談に乗ってもらえることはありがたい。

「……」
 そしてアリスが来るとなれば、ナタリーも来ようとする。
 断る理由は……思いつかないな。アリスは来るのだから。

「なるほ……ぐ、なるほど。納得しました」
「全然、納得したようには見えませんが?」
 頑張って「なるほど」と言う俺を見て、ニナが首を傾げている。

 実際、こうするしかない。
 ブラウン団長が王都を離れる以上、ナタリーが一人になる。
 一人で王都に残るよりはマシだろう。


「で、ニナさん。これからどう動きますか?」
 広い部屋へ移動して全員が席に着くと、俺は切り出した。

「はい。ここからが本題です。このまま伯爵の首を取りに行きます」
「! 伯爵領に攻め込むんですか?」
 戻る予定だった俺は思わず声を荒げてしまった。

「……なるほど。良い手だな。騎士団と仇討ちの私兵と傭兵。加えて組合。
 これだけの戦力があるなら活かさない手はない」
「当然、魔術師団長殿も戦力に数えてますよ」

 ブラウン団長の言葉にニナが軽く切り返す。
 王国の遠距離兵器とまで呼ばれている男は肩を竦めて惚けて見せた。

「アッシュにも来てもらいます。
 というか、勝手にここまで来たのに簡単に帰れると思わないで下さい」
「……はい」
 許されてなかったらしい。俺は言い返す言葉もなく項垂れた。

「それと、ソフィア様にも来てもらいます」
「ニナさん、それは」
 俺の言葉を遮って、ニナさんはさらに続ける。

「いいえ。今回の大義名分はレイン子爵の身柄です。
 ソフィア様が退いたら、仇討ちの兵も退いてしまう」
「……そうだな。伯爵領へと攻め込む理由も弱くなるだろう。
 もっとも、ソフィア様の安全が保障されている前提だが」

 ブラウン団長がニナの考えを補足する。
 ニナも異論はないらしく「もちろんです」と頷いた。
 ここまで話を詰められてしまうと、俺は何も言えずに黙るしかない。

「いいわ。一緒に行く」
 ソフィアは迷いなく答えた。



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 組合長との約束である以上、レイン子爵は逃がした。
 自然に逃げるように芝居を打ったらしい。
 そのまま都市『スーレ』で数日を過ごすと、騎士団がやって来た。
 シェリーはヒルダ団長に伝えてくれたようだ。
「お久しぶりですね、ニナさん?」
「……アッシュ。事情は分かりますが、独断が多くないですか?」
 制圧したレイン子爵の屋敷で、俺達は再会した。
 上司に笑い掛けるものの、小言を返されて俺は目を逸らした。
 本来、一番隊は防衛、二番隊は遠征、三番隊は遊撃、と役割が分かれている。
 二番隊と三番隊が出払っていたため、一番隊がこちらに出向いたらしい。
 一番隊の隊長は騎士団長も兼ねるので、王都を離れられない。
 副隊長のニナが指揮官だった。割とよくある流れなのだが。
「まあ、良いです。
 事情は一通り聞きました。結果は悪くない」
 溜息を吐きながらも、ニナは許してくれたようだった。
「あの、それよりも……」
 次は俺の番だった。ニナさんの後ろを示す。
「あ! ソフィアちゃんだ!」
 俺が示した張本人。ナタリー・クレフが飛び出した。
「? ナタリーさん?」
 俺の後ろでソフィアが不思議そうな声を出す。
 すでに抱き着かれていた。
「……それよりも、どうして皆がいるんですか?」
 仕切り直して、俺はニナへと訊いた。
 ニナと一緒に、ナタリーアリスとブラウン団長がやって来ていた。
 ニナは答えられず、代わりにブラウン団長が前に出た。
「私とアリスが来た理由は分かるだろう?」
「――!」
 ブラウン団長が俺を見る。
 ソフィアの件を聞いて、ブラウン団長とアリス――厳密には加奈だが――は心配して来てくれたのか。確かに相談に乗ってもらえることはありがたい。
「……」
 そしてアリスが来るとなれば、ナタリーも来ようとする。
 断る理由は……思いつかないな。アリスは来るのだから。
「なるほ……ぐ、なるほど。納得しました」
「全然、納得したようには見えませんが?」
 頑張って「なるほど」と言う俺を見て、ニナが首を傾げている。
 実際、こうするしかない。
 ブラウン団長が王都を離れる以上、ナタリーが一人になる。
 一人で王都に残るよりはマシだろう。
「で、ニナさん。これからどう動きますか?」
 広い部屋へ移動して全員が席に着くと、俺は切り出した。
「はい。ここからが本題です。このまま伯爵の首を取りに行きます」
「! 伯爵領に攻め込むんですか?」
 戻る予定だった俺は思わず声を荒げてしまった。
「……なるほど。良い手だな。騎士団と仇討ちの私兵と傭兵。加えて組合。
 これだけの戦力があるなら活かさない手はない」
「当然、魔術師団長殿も戦力に数えてますよ」
 ブラウン団長の言葉にニナが軽く切り返す。
 王国の遠距離兵器とまで呼ばれている男は肩を竦めて惚けて見せた。
「アッシュにも来てもらいます。
 というか、勝手にここまで来たのに簡単に帰れると思わないで下さい」
「……はい」
 許されてなかったらしい。俺は言い返す言葉もなく項垂れた。
「それと、ソフィア様にも来てもらいます」
「ニナさん、それは」
 俺の言葉を遮って、ニナさんはさらに続ける。
「いいえ。今回の大義名分はレイン子爵の身柄です。
 ソフィア様が退いたら、仇討ちの兵も退いてしまう」
「……そうだな。伯爵領へと攻め込む理由も弱くなるだろう。
 もっとも、ソフィア様の安全が保障されている前提だが」
 ブラウン団長がニナの考えを補足する。
 ニナも異論はないらしく「もちろんです」と頷いた。
 ここまで話を詰められてしまうと、俺は何も言えずに黙るしかない。
「いいわ。一緒に行く」
 ソフィアは迷いなく答えた。