ユーステッド、楽観す

ー/ー



夜も更けて……僕は寝室で横になっている。そして、夕方から代わる代わる訪問(ほうもん)してくる人たちに……怒られたのだ。

「なにやってんすか!そんなところまでかっこつけなくていいんすよ?!抜け出したらさすがの自分もおこるっすよ?!」
「あ、あはは……もう怒ってるって……ごめんって……」

って、お姫様抱っこされた僕はジュリーにベッドに放り投げられ、

「ユーステッド様!!なんですぐおっしゃらなかったんですか!!」
「いや……みんなの楽しみに水を差すわけには……だっ!?ご、ごめんよ……」
絶対安静(ぜったいあんせい)です!薬ではないですけどこちらもお飲みになってくださいね?まったく……どうなっても知りませんからね……」

リリーに手厚(てあつ)く手当され、

「はぁ……ユー……、これは怒られても仕方ないですよ?」
「……はい。」

カイに呆れられた。

数時間前、ブドウの圧搾(あっさく)(けん)収穫祭(しゅうかくさい)』の踊り(ダンス)()えた僕は、足についた果汁やブドウの皮を落とすため(おけ)に張られた水の中に足を(しずめ)めていた。

「ったた。はぁ……気持ちいい……」

全身を使って(おど)ったせいもあって体は火照(ほて)っている……足の方はそれ以上に(ねつ)を持っていて……始まる前より()れが悪化(あっか)しているのがわかった。

「お疲れ様ですユース。」
「か、カイ?!び、びっくりした……楽しめたかな?」
「いつもと違った(おど)りで楽しかったですよ!女性の可憐(かれん)さも大事ですし魅力的(みりょくてき)ですが男性の力強(ちからづよ)さがあるとまた違った見え方ができて素晴(すば)らしかったです。」

感想は大人びた内容ではあったけど、笑顔は無邪気(むじゃき)な少年で……なんだか可愛くなって頭を()でようと少し前のめりになって……無意識(むいし)()れている足に力を入れてしまっていた。

「いっ……!!」
「ユース……?あ?!」

と、声を上げてしまいカイにバレてしまった。即座(そくざ)にジュリーを呼ばれて屋敷まで運ばれた。広場から去っていく時に見えたティアの顔は――。

「心配かけないでくださいね?ボクはもういきますけど……後は自分でどうにかしてください。」
「気を付ける……あ、ねぇ、後ってな……」

バタンッ!と少し強めに扉を閉められて、ひとりになる。
僕の判断(はんだん)は間違っていたのだろうか……?結果的(けっかてき)に心配をかけてしまったけれど、(ほね)異常(いじょう)はなくて、打ち身で()んでいるらしいから数日で治るみたいだしそこま――……あぁ……そうだ……うっかりしていた。広場を()る時に見たティアのあの顔と……怪我(けが)に対して過剰(かじょう)に反応してしまうロベリアの姿(すがた)を思い出す。

「……やちゃったかもしれない。」

両手で顔を(おお)って僕は自分のしたことの重大さに気付いて苦悩(くのう)する。
小さい針が刺さっただけで……今にも死んでしまうんじゃないかというくらい心配してしまう。なら……それ以上の怪我(けが)なんてしたらどうなる?

コンコンッというノックの音にビクッとする。

「ど、どうぞ……」
「失礼いたします。」

ロベリアが薬箱(くすりばこ)を持って部屋に入ってきた。ベッドで横になっている僕を見つめながら近づいてくる……ベッド(わき)椅子(いす)を寄せて座り……沈黙(ちんもく)

そりゃそうだよね……わかってる。でも表情(ひょうじょう)が読めない……怒ってるのか心配してるのかなんなのか……

「薬をもらってまいりました。包帯(ほうたい)を取り替えてもよろしいですか?」
「あ、はい……お願いします……。」

どうしたらいいかわからないままだったせいか、なぜか敬語(けいご)になってしまった。
おそるおそるロベリアの顔を見る。「早く乗せなさい」と言っているようで……少し首をかしげながらトントンと(ひざ)を手で優しく叩き催促(さいそく)している。少し戸惑(とまど)ったけど……そっと……ロベリアの(ひざ)の上に足をのせる。

柔らかいロベリアの手が優しく僕のふくらはぎを包む。

「あっ……つっ……」
「す、みません……」
「だ、大丈夫……続けて?」

不意(ふい)()れた部分に当たってしまって声を出してしまったけど……触り方が優しすぎて少しくすぐったかったんだ。本当に、(おそ)(おそ)るという感じで薬を|塗()ってくれる。

「ふふっ……つめた……」
「……。」
「ロベリア……?」

冷たさとくすぐったさで思わず笑ってしまったら、ロベリアの手が止まった。どうしたんだろうと(うつむ)いているロベリアの顔を(のぞ)き込むと……(くちびる)()()めて(つら)そうな……思いつめたような……表情をしていた。

「なぜ……笑ってるのですか?」
「え……いや……くすぐったくて……」
「こんな怪我をして……それを隠して……悪化して……歩けなくなって……そのまま……もし……もしそんなことになっていたら……どうするつもりだったんですか?」
「いや……歩けていたし……大丈夫かなって思って……」

ロベリアであって、ロベリアじゃない。不安と心配のせいか、ティアに戻ってしまっているようだ。こういう時にどう声を掛けたらいいのかわからない。普通の男女の関係だったら、どうにでもなるかもしれないけど、ロベリアと、ティアと、僕という複雑(ふざく)な関係だ。

沈黙(ちんもく)()えれなくなった僕は……

「えっと……あぁそうだ!ロベリア。いつもよくしてくれてるから……これを……」
「………。」

露店で購入(こうにゅう)したもう一つの贈り物(ぷれぜんと)。ロベリアのために(えら)んだ髪飾(かみかざ)り。

当然(とうぜん)……本来ならこんなタイミングで(わた)すようなものじゃない。手だって塗り薬で汚れている。受け取れるはずもなく(だま)ったまま動かない。だから僕は、袋から取り出してロベリアの髪に飾りをつけた。

「む……(むずか)しいな……こ、こうかな?」
「ユーステッド様……私にこのようなものは必要(ひつよう)ありません……それに……私の質問(しつもん)に答えてもらっていません。」

髪飾(かみかざ)りなんてつけてあげたことなんて無いから、(なな)めになって今にも落ちそうになってしまった、ことよりも……ロベリアの怒った視線が僕に突き刺さる。

「め、めずらしいねロベリアがそんなに怒るのは……」
「ふざけてないで答えてください。」

誤魔化(ごまか)しきれないみたいだ。ロベリアが……ティアが望むような答えを伝えられるかわからないけど……

怪我(けが)をしていたのを(だま)っていたのは(あやま)らないといけないね。申し訳ない」
「……。」
「その……初めての体験(たいけん)をして……どうしてもあの時はあのまま楽しい時間を終わらせたくなかったんだ。けど……心配をかけて不安にさせてしまった……でもね?僕はティアを残していなくなったりしないよ」

そっとロベリアの(ほほ)に手を()え、しっかりとその(ひとみ)を見つめて(とら)える。

「こう見えて僕は結構タフなんだよ?ひとりでデルフィヌスにだって来れたし……まぁさすがにジュリーやベン……カーター程ではないけど……」
「ユーステッド様……」
「もう一度言うね?僕は……ティアを残していなくなったりしない。約束する……だから……」

自然に、お互いの顔が近づいていく……そして――。


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夜も更けて……僕は寝室で横になっている。そして、夕方から代わる代わる|訪問《ほうもん》してくる人たちに……怒られたのだ。
「なにやってんすか!そんなところまでかっこつけなくていいんすよ?!抜け出したらさすがの自分もおこるっすよ?!」
「あ、あはは……もう怒ってるって……ごめんって……」
って、お姫様抱っこされた僕はジュリーにベッドに放り投げられ、
「ユーステッド様!!なんですぐおっしゃらなかったんですか!!」
「いや……みんなの楽しみに水を差すわけには……だっ!?ご、ごめんよ……」
「|絶対安静《ぜったいあんせい》です!薬ではないですけどこちらもお飲みになってくださいね?まったく……どうなっても知りませんからね……」
リリーに|手厚《てあつ》く手当され、
「はぁ……ユー……、これは怒られても仕方ないですよ?」
「……はい。」
カイに呆れられた。
数時間前、ブドウの|圧搾《あっさく》|兼《けん》『|収穫祭《しゅうかくさい》』の|踊り《ダンス》を|終《お》えた僕は、足についた果汁やブドウの皮を落とすため|桶《おけ》に張られた水の中に足を|沈《しずめ》めていた。
「ったた。はぁ……気持ちいい……」
全身を使って|踊《おど》ったせいもあって体は|火照《ほて》っている……足の方はそれ以上に|熱《ねつ》を持っていて……始まる前より|腫《は》れが|悪化《あっか》しているのがわかった。
「お疲れ様ですユース。」
「か、カイ?!び、びっくりした……楽しめたかな?」
「いつもと違った|踊《おど》りで楽しかったですよ!女性の|可憐《かれん》さも大事ですし|魅力的《みりょくてき》ですが男性の|力強《ちからづよ》さがあるとまた違った見え方ができて|素晴《すば》らしかったです。」
感想は大人びた内容ではあったけど、笑顔は|無邪気《むじゃき》な少年で……なんだか可愛くなって頭を|撫《な》でようと少し前のめりになって……|無意識《むいし》に|腫《は》れている足に力を入れてしまっていた。
「いっ……!!」
「ユース……?あ?!」
と、声を上げてしまいカイにバレてしまった。|即座《そくざ》にジュリーを呼ばれて屋敷まで運ばれた。広場から去っていく時に見えたティアの顔は――。
「心配かけないでくださいね?ボクはもういきますけど……後は自分でどうにかしてください。」
「気を付ける……あ、ねぇ、後ってな……」
バタンッ!と少し強めに扉を閉められて、ひとりになる。
僕の|判断《はんだん》は間違っていたのだろうか……?|結果的《けっかてき》に心配をかけてしまったけれど、|骨《ほね》に|異常《いじょう》はなくて、打ち身で|済《す》んでいるらしいから数日で治るみたいだしそこま――……あぁ……そうだ……うっかりしていた。広場を|去《さ》る時に見たティアのあの顔と……|怪我《けが》に対して|過剰《かじょう》に反応してしまうロベリアの|姿《すがた》を思い出す。
「……やちゃったかもしれない。」
両手で顔を|覆《おお》って僕は自分のしたことの重大さに気付いて|苦悩《くのう》する。
小さい針が刺さっただけで……今にも死んでしまうんじゃないかというくらい心配してしまう。なら……それ以上の|怪我《けが》なんてしたらどうなる?
コンコンッというノックの音にビクッとする。
「ど、どうぞ……」
「失礼いたします。」
ロベリアが|薬箱《くすりばこ》を持って部屋に入ってきた。ベッドで横になっている僕を見つめながら近づいてくる……ベッド|脇《わき》に|椅子《いす》を寄せて座り……|沈黙《ちんもく》。
そりゃそうだよね……わかってる。でも|表情《ひょうじょう》が読めない……怒ってるのか心配してるのかなんなのか……
「薬をもらってまいりました。|包帯《ほうたい》を取り替えてもよろしいですか?」
「あ、はい……お願いします……。」
どうしたらいいかわからないままだったせいか、なぜか|敬語《けいご》になってしまった。
おそるおそるロベリアの顔を見る。「早く乗せなさい」と言っているようで……少し首をかしげながらトントンと|膝《ひざ》を手で優しく叩き|催促《さいそく》している。少し|戸惑《とまど》ったけど……そっと……ロベリアの|膝《ひざ》の上に足をのせる。
柔らかいロベリアの手が優しく僕のふくらはぎを包む。
「あっ……つっ……」
「す、みません……」
「だ、大丈夫……続けて?」
|不意《ふい》に|腫《は》れた部分に当たってしまって声を出してしまったけど……触り方が優しすぎて少しくすぐったかったんだ。本当に、|恐《おそ》る|恐《おそ》るという感じで|薬を|塗《ぬ》ってくれる。
「ふふっ……つめた……」
「……。」
「ロベリア……?」
冷たさとくすぐったさで思わず笑ってしまったら、ロベリアの手が止まった。どうしたんだろうと|俯《うつむ》いているロベリアの顔を|覗《のぞ》き込むと……|唇《くちびる》を|噛《か》み|締《し》めて|辛《つら》そうな……思いつめたような……表情をしていた。
「なぜ……笑ってるのですか?」
「え……いや……くすぐったくて……」
「こんな怪我をして……それを隠して……悪化して……歩けなくなって……そのまま……もし……もしそんなことになっていたら……どうするつもりだったんですか?」
「いや……歩けていたし……大丈夫かなって思って……」
ロベリアであって、ロベリアじゃない。不安と心配のせいか、ティアに戻ってしまっているようだ。こういう時にどう声を掛けたらいいのかわからない。普通の男女の関係だったら、どうにでもなるかもしれないけど、ロベリアと、ティアと、僕という|複雑《ふざく》な関係だ。
|沈黙《ちんもく》に|耐《た》えれなくなった僕は……
「えっと……あぁそうだ!ロベリア。いつもよくしてくれてるから……これを……」
「………。」
露店で|購入《こうにゅう》したもう一つの|贈り物《ぷれぜんと》。ロベリアのために|選《えら》んだ|髪飾《かみかざ》り。
|当然《とうぜん》……本来ならこんなタイミングで|渡《わた》すようなものじゃない。手だって塗り薬で汚れている。受け取れるはずもなく|黙《だま》ったまま動かない。だから僕は、袋から取り出してロベリアの髪に飾りをつけた。
「む……|難《むずか》しいな……こ、こうかな?」
「ユーステッド様……私にこのようなものは|必要《ひつよう》ありません……それに……私の|質問《しつもん》に答えてもらっていません。」
|髪飾《かみかざ》りなんてつけてあげたことなんて無いから、|斜《なな》めになって今にも落ちそうになってしまった、ことよりも……ロベリアの怒った視線が僕に突き刺さる。
「め、めずらしいねロベリアがそんなに怒るのは……」
「ふざけてないで答えてください。」
|誤魔化《ごまか》しきれないみたいだ。ロベリアが……ティアが望むような答えを伝えられるかわからないけど……
「|怪我《けが》をしていたのを|黙《だま》っていたのは|謝《あやま》らないといけないね。申し訳ない」
「……。」
「その……初めての|体験《たいけん》をして……どうしてもあの時はあのまま楽しい時間を終わらせたくなかったんだ。けど……心配をかけて不安にさせてしまった……でもね?僕はティアを残していなくなったりしないよ」
そっとロベリアの|頬《ほほ》に手を|添《そ》え、しっかりとその|瞳《ひとみ》を見つめて|捉《とら》える。
「こう見えて僕は結構タフなんだよ?ひとりでデルフィヌスにだって来れたし……まぁさすがにジュリーやベン……カーター程ではないけど……」
「ユーステッド様……」
「もう一度言うね?僕は……ティアを残していなくなったりしない。約束する……だから……」
自然に、お互いの顔が近づいていく……そして――。