第二部 34話 振り下ろされたナイフ
ー/ー 姿勢を低く。まるで床を滑るように階段を駆け上がってゆく。
三階に上がると、すぐに逃げてゆくレイン子爵の背中が見えた。
「ひっ……」
情けない声を上げながらバタバタと逃げてゆく。
その背中を隠すように兵士が廊下を塞いだ。
足は止めずに追いかける。
足止めの兵士は三人しか残っていない。
先ほどの大男以上の強敵もいないようだ。
寝室がある上階は味方が制圧しているはずだ。
五分だと考えていたが、こちらの方が優勢らしい。
想定外の何かがあったのかもしれない。
「止まれ!」
足を止めないソフィアに兵士が叫ぶ。
「ふ――」
ソフィアはそれでも足を止めない。
両手のナイフを逆手に握りなおす。
右の兵士が叫び終えるより早く、右腿にナイフを刺して錬金。
ナイフの刃を伸ばして左の腿を貫通させた。
さらに伸ばして壁に刃を縫い付ける。
左の兵士が長剣を払ったので、左のナイフでその手首を切り取った。
その場でしゃがむと左のナイフを相手の右足の甲に突き立てる。
立ち上がりながら、落ちる長剣を空いた左手で掴んだ。
動けない二人の脇を抜ける。
待ち構えていた三人目が長剣を振り下ろした。
ソフィアは左の長剣で受け流す。
バチ、という錬金光。
ソフィアの長剣が兵士の長剣と混ざり合う。
もう一度、バチバチと錬金光。
兵士が握っていたはずの長剣は手枷に錬金されて右手首に嵌っていた。
手枷の先には鎖。さらに鎖の先にはソフィアが握っていた剣があった。
その剣は床に突き立てられ、錬金で溶接されている。
「何が……?」
長剣を振り下ろしただけで、兵士は武器と自由を失っていた。
理解できていない三人目を置いてソフィアは先を急ぐ。
心置きなくソフィアはレイン子爵の後を追う。
がむしゃらに走るレイン子爵には無駄も多く、ソフィアはすぐに追いついた。
「え?」
まずはその足を払う。
バランスを崩して位置が低くなった瞬間、その頭を掴んだ。
転ぶ勢いも利用して、床に頭を叩きつける。鈍い音が響く。
狙い通りにレイン子爵は意識を失っていた。
うつ伏せに倒れた体を仰向けに起こす。そのまま馬乗りになった。
「……」
目の前にある仇の顔を冷めた表情で眺める。
ソフィアは新しいナイフを抜くと、逆手に握って振り上げた。
「ソフィアお嬢様!」
聞き覚えのある声がした。
ソフィアが振り返る。思わず目を疑ってしまう。
彼女の教育係であるアッシュが立っていた。
随分と懐かしく感じる。
ここまで来てくれたことは素直に嬉しかった。
――?
その顔を眺めていると、何かを思い出しそうな感覚があった。
あれは一体何だったか。いつだったか。何と言われたのだったか。
「ごめんなさい」
未練を断ち切るように、ソフィアがアッシュから視線を切った。
振り上げたナイフを喉元目掛けて振り下ろす。
――思い出した。
三階に上がると、すぐに逃げてゆくレイン子爵の背中が見えた。
「ひっ……」
情けない声を上げながらバタバタと逃げてゆく。
その背中を隠すように兵士が廊下を塞いだ。
足は止めずに追いかける。
足止めの兵士は三人しか残っていない。
先ほどの大男以上の強敵もいないようだ。
寝室がある上階は味方が制圧しているはずだ。
五分だと考えていたが、こちらの方が優勢らしい。
想定外の何かがあったのかもしれない。
「止まれ!」
足を止めないソフィアに兵士が叫ぶ。
「ふ――」
ソフィアはそれでも足を止めない。
両手のナイフを逆手に握りなおす。
右の兵士が叫び終えるより早く、右腿にナイフを刺して錬金。
ナイフの刃を伸ばして左の腿を貫通させた。
さらに伸ばして壁に刃を縫い付ける。
左の兵士が長剣を払ったので、左のナイフでその手首を切り取った。
その場でしゃがむと左のナイフを相手の右足の甲に突き立てる。
立ち上がりながら、落ちる長剣を空いた左手で掴んだ。
動けない二人の脇を抜ける。
待ち構えていた三人目が長剣を振り下ろした。
ソフィアは左の長剣で受け流す。
バチ、という錬金光。
ソフィアの長剣が兵士の長剣と混ざり合う。
もう一度、バチバチと錬金光。
兵士が握っていたはずの長剣は手枷に錬金されて右手首に嵌っていた。
手枷の先には鎖。さらに鎖の先にはソフィアが握っていた剣があった。
その剣は床に突き立てられ、錬金で溶接されている。
「何が……?」
長剣を振り下ろしただけで、兵士は武器と自由を失っていた。
理解できていない三人目を置いてソフィアは先を急ぐ。
心置きなくソフィアはレイン子爵の後を追う。
がむしゃらに走るレイン子爵には無駄も多く、ソフィアはすぐに追いついた。
「え?」
まずはその足を払う。
バランスを崩して位置が低くなった瞬間、その頭を掴んだ。
転ぶ勢いも利用して、床に頭を叩きつける。鈍い音が響く。
狙い通りにレイン子爵は意識を失っていた。
うつ伏せに倒れた体を仰向けに起こす。そのまま馬乗りになった。
「……」
目の前にある仇の顔を冷めた表情で眺める。
ソフィアは新しいナイフを抜くと、逆手に握って振り上げた。
「ソフィアお嬢様!」
聞き覚えのある声がした。
ソフィアが振り返る。思わず目を疑ってしまう。
彼女の教育係であるアッシュが立っていた。
随分と懐かしく感じる。
ここまで来てくれたことは素直に嬉しかった。
――?
その顔を眺めていると、何かを思い出しそうな感覚があった。
あれは一体何だったか。いつだったか。何と言われたのだったか。
「ごめんなさい」
未練を断ち切るように、ソフィアがアッシュから視線を切った。
振り上げたナイフを喉元目掛けて振り下ろす。
――思い出した。
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