第二部 33話 騒ぐ血
ー/ー 小高い丘に建ったレイン子爵の屋敷。
まるで城のようにも見える、その本邸を味方の兵士が襲い掛かっていた。
黒い装備の兵士が迎え撃つ。戦いが始まって間もないが、戦況は五分に見えた。
ソフィア・ターナーは屋敷にまで付いて来ていた。
周りは拠点で待つように強く言ったが譲らなかった。
「お嬢様。離れないで下さい」
ここまでソフィアに付いて来たユイが呟いた。
十分に安全を確認しながらソフィア達は屋敷へと入っていく。
出口は既に押さえている。レイン子爵は上階の寝室にいるはずだ。
屋敷の中には乱戦の後があった。
主戦場は寝室と裏口へと移ったのだろう。
これから自分達は寝室へと向かう。
そう考えて、ソフィアは腰に提げた小剣を抜いた。
護身用という前提だが、他にもナイフを数本持ってきている。
案内に従って、階段を上る。
レイン子爵はさらに上だろう。
「二階までは制圧しています。ですが、上はまだ危険です」
案内してくれた兵士はそう言って護衛と一緒に三階を覗き込んだ。
その瞬間。どん、という音がした。
味方の兵士達の中央に、吹き抜けから大柄な男が落ちて来た。
手にした大きな斧を男が振るうと、味方の兵士が吹き飛んだ。
恐らくは強化系のスキルも使用しているのだろう。
男は次にユイへと狙いを定めた。
ごく自然に『計算』して、ソフィアは一歩踏み出した。
――させないわ。
反応出来ないユイをソフィアは横から押して斧の一撃を避けさせる。
尻餅を付くユイには目もくれず、ソフィアは男の懐へと踏み込んだ。
「!」
気付いた男は腕を伸ばすが、ソフィアは姿勢を低く下げてやりすごした。
そのまま足元をすり抜ける。すれ違いざまにブーツにナイフを突き立てた。
男が顔色一つ変えずに振り返る。
大斧を握り直すとソフィアへと振りかぶる。
さらに、ナイフを錬金した。
バチ、という音と光が走る。
男が斧を叩きつけようとする――が、バランスを崩してしまった。男の驚いた顔。
刺さったナイフはまるで足枷のように姿を変えて、男の足を縫い付けていた。
ソフィアは半歩下がって不完全な一撃を避ける。
さらに床に叩きつけられた斧へと手を伸ばした。
バチバチという錬金の音と光。
一息の間に斧は男の拘束具へと姿を変えてゆく。
――とん、とソフィアが男を押す。
――後には両手両足を金属で固められた男が転がっていた。
「ユイ、大丈夫?」
床に座ったままのユイにソフィアが声を掛ける。
ユイは驚いた顔で状況を見て、次にソフィアを見た。
そこでさらに驚きを深くする。
「お嬢様。どうして」
呆然とした声がやけに響いた。
その表情を見て、やっとソフィアも気が付いた。
思わず自分の顔を触る。
「これは……」
確かに自分は笑みを浮かべていた。
何を答えるべきかも分からないでいると――
「なんだよ、これ」
――上の階から情けない声が聞こえた。
「!」
それは確かに聞き覚えのある声だった。
両親の寝室で聞いた声、レイン子爵。
「お嬢様!?」
まるで逃げ出すかのように、ソフィアは仇を追い始めた。
まるで城のようにも見える、その本邸を味方の兵士が襲い掛かっていた。
黒い装備の兵士が迎え撃つ。戦いが始まって間もないが、戦況は五分に見えた。
ソフィア・ターナーは屋敷にまで付いて来ていた。
周りは拠点で待つように強く言ったが譲らなかった。
「お嬢様。離れないで下さい」
ここまでソフィアに付いて来たユイが呟いた。
十分に安全を確認しながらソフィア達は屋敷へと入っていく。
出口は既に押さえている。レイン子爵は上階の寝室にいるはずだ。
屋敷の中には乱戦の後があった。
主戦場は寝室と裏口へと移ったのだろう。
これから自分達は寝室へと向かう。
そう考えて、ソフィアは腰に提げた小剣を抜いた。
護身用という前提だが、他にもナイフを数本持ってきている。
案内に従って、階段を上る。
レイン子爵はさらに上だろう。
「二階までは制圧しています。ですが、上はまだ危険です」
案内してくれた兵士はそう言って護衛と一緒に三階を覗き込んだ。
その瞬間。どん、という音がした。
味方の兵士達の中央に、吹き抜けから大柄な男が落ちて来た。
手にした大きな斧を男が振るうと、味方の兵士が吹き飛んだ。
恐らくは強化系のスキルも使用しているのだろう。
男は次にユイへと狙いを定めた。
ごく自然に『計算』して、ソフィアは一歩踏み出した。
――させないわ。
反応出来ないユイをソフィアは横から押して斧の一撃を避けさせる。
尻餅を付くユイには目もくれず、ソフィアは男の懐へと踏み込んだ。
「!」
気付いた男は腕を伸ばすが、ソフィアは姿勢を低く下げてやりすごした。
そのまま足元をすり抜ける。すれ違いざまにブーツにナイフを突き立てた。
男が顔色一つ変えずに振り返る。
大斧を握り直すとソフィアへと振りかぶる。
さらに、ナイフを錬金した。
バチ、という音と光が走る。
男が斧を叩きつけようとする――が、バランスを崩してしまった。男の驚いた顔。
刺さったナイフはまるで足枷のように姿を変えて、男の足を縫い付けていた。
ソフィアは半歩下がって不完全な一撃を避ける。
さらに床に叩きつけられた斧へと手を伸ばした。
バチバチという錬金の音と光。
一息の間に斧は男の拘束具へと姿を変えてゆく。
――とん、とソフィアが男を押す。
――後には両手両足を金属で固められた男が転がっていた。
「ユイ、大丈夫?」
床に座ったままのユイにソフィアが声を掛ける。
ユイは驚いた顔で状況を見て、次にソフィアを見た。
そこでさらに驚きを深くする。
「お嬢様。どうして」
呆然とした声がやけに響いた。
その表情を見て、やっとソフィアも気が付いた。
思わず自分の顔を触る。
「これは……」
確かに自分は笑みを浮かべていた。
何を答えるべきかも分からないでいると――
「なんだよ、これ」
――上の階から情けない声が聞こえた。
「!」
それは確かに聞き覚えのある声だった。
両親の寝室で聞いた声、レイン子爵。
「お嬢様!?」
まるで逃げ出すかのように、ソフィアは仇を追い始めた。
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